今、IT業界ではセキュリティエンジニアに対するニーズが日に日に高まっている。
2020年時点の予測値では、19万3000人が足りない——。
経済産業省が2016年に出した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、日本の情報セキュリティ人材の人口は、どんどん不足感が高まっているという。
企業が持つ顧客情報の漏洩や、クレジットカードなどの情報を不正に取得するフィッシング詐欺.......。様々な形で増え続けるサイバー攻撃に対抗するため、セキュリティエンジニアの市場価値は高まる一方だ。
にもかかわらず、担い手が足りない背景には、セキュリティエンジニアになるためのキャリアパスが分からない、仕事内容が分かりづらいという理由もあるだろう。
そこで現在、インターネット大手のヤフーでセキュリティエンジニアとして活躍している大角祐介さんに、キャリアの転機となった出来事を聞いた。
大学院を修了後、インフラエンジニアからスタートした大角さんは、どんな経緯でネットセキュリティの専門家になったのか。学びの足取りをたどっていこう。
そもそも大角さんがIT分野のエンジニアになったきっかけは、学生時代に行っていた“課外活動”にある。
大阪大学〜同大学院では物理学を専攻し、発光ダイオード関連の研究をしていたが、大学2〜3年の頃から学内の計算機センターに学生スタッフとして入り浸るようになっていた。
この時期から、ソフトウェアやネットワークについて独学するようになったという。
「最初は利用者の質問に答える仕事だったものの、次第にセンター内で使うソフトウェアも自作したくなり、プログラミングの勉強をするようになりました」
また、大角さんが学生だった2000年前後は、無線LANが普及し始めた時期で、センター内のネットワークを無線LANに変更するプロジェクトを手伝ったりもしていた。
「興味を持ったことは、とことん突き詰めたくなる性格なんです。だから、なかばサークル活動のような感じで、楽しんでやっていました」
就職では、「本来の研究」の延長線上としてメーカーの研究開発部門に行く選択肢もあった。
しかし、「ネット業界のほうが面白そうだし将来性があると思い」インターネットプロバイダー(ネット接続事業者。ISPと呼ばれる)を中心に応募。国内大手のニフティに就職する。
入社後の1年間は、いわゆる修業期間として、キャンペーンサイトの申し込みシステム開発やネットワーク・サーバ構築など、幅広い仕事を担当した。
そんな大角さんに、いきなり幸運が訪れる。
2年目のある日、視察と研修を兼ねた取り組みの一環で、世界的なセキュリティカンファレンスとして知られる『DEF CON(デフコン)』に参加するメンバーに選ばれたのだ。