【舞台裏】1年前から社員総会を仕込み エンジニアは熊野の山奥へ

【舞台裏】1年前から社員総会を仕込み エンジニアは熊野の山奥へ

「freeeの社員総会は、参加する人数も熱気もスゴイらしい」。クラウド会計ソフトの運営会社として知られる会社について、そんな評判を耳にしました。

ただ、そもそも社員総会って? 内情はあまり表には出てこず、受け身で話を聞くだけのようなお堅いイメージもあります。

社員総会をイチから学べるよう、JobPicksインターン生で就活中の中井舞乃さんをインタビュアーに立てて、freee社員に話をうかがいました。「準備は1年前から」「さらに社員の満足度は9割」と、驚きの熱量をリポートします。

目次

大学生が聞く! 社員総会ってどんなもの? 1200人が集まる、クラウド会計ソフト「freee」の社員総会

そもそも社員総会って何のためにやるの?

freeeの社員総会で運営に携わるCulture Developmentの久嶋渉さん、同じく佐藤創太郎さんから話を聞きました。

中井 就活で企業説明会にも足を運んできましたが、「社員総会」の話を聞く機会はありません。そもそも何を目的とした、どういった催しなんでしょうか?

久嶋 社員のモチベーションを高める場として、いろいろな企業が実施しているのではないでしょうか。

freeeでは「フリスピ(freee Spiritの略)」という名前で、年に1度、期の始まりにキックオフとして開催しています。全国から全社員1200人を集めて「今期はこんなことをやっていく」という目標を伝える場としています。

中井 1200人も! それだけ大規模なイベントだと、準備はどれくらい前から始めるのでしょう?

久嶋 「今年はどういう内容にしようか」という構想は、半年くらい前から練り始めます。一方、この規模のイベントになると会場を押さえるのは1年前です。終わった途端、来年度の会場を考える感じですね(笑)。

佐藤 会社がまだ小さいころは、いまほど大規模ではなく、社員の合宿を通じて、社内が一致団結していたと聞いています。

社員総会でも合宿でも、今期の方向性を理解してもらい、ワクワクしてもらうことで、一致団結して目標に向かえる状態を目指すことが目的です。さらに、その時々の組織的な課題に取り組むこともあります。こうした指針はずっと変わっていません。

大学生が聞く! 社員総会ってどんなもの? 1200人が集まる、クラウド会計ソフト「freee」の社員総会
1200人が一堂に会した(写真提供:freee)

職業体験でユーザーを知り、ここで報告

freeeは東京都新宿区の高田馬場で今年7月7日、社員総会を開いた。

中井 freee Spirit 2024で特に重視した方針は何ですか?

久嶋 ユーザーのことを徹底的に理解する、ということですね。freeeはクラウド会計ソフトを中心としたサービスを展開しており、さまざまな企業や個人に使っていただいています。

freeeは「マジ価値(本質的な価値)を届け切ること」を世の中に対するコミットメントとしています。そのためには、ユーザーを理解して解像度を高くしないと、必要なプロダクトや体験の提供ができません。

佐藤 これまでにも、ユーザーから「こういう開発をしてほしい」「こういうところが使いにくい」といった声を聞く場はありました。ユーザーとしてたとえば、ウェブデザインの会社の業務は、自分たちの仕事との共通点も多いのである程度想像できます。一方、有形商材の会社の理解などは深くなかったんです。

久嶋 今年のフリスピでは、「ユーザニア」と名付けて、社員がユーザーの職業体験に行き、社員総会でその様子を集まったfreee社員たちに伝える、という企画を行いました。

職業体験では、ユーザーとの接点が日頃からある営業担当者だけでなく、プロダクトマネージャーやエンジニアなど、さまざまな職種の社員に、現地に行ってもらいました。

大学生が聞く! 社員総会ってどんなもの? 1200人が集まる、クラウド会計ソフト「freee」の社員総会
ユーザニアの様子(写真提供:freee)

準備でエンジニアが熊野の山奥まで取材に?

佐藤 ユーザニアには僕も同行したのですが、株式会社渡辺教具製作所という、地球儀をつくる会社を訪問させていただきました。どんな機械を使っているのか、部品の管理はどうしているのか、手作業でどんなことを行っているのか......。そうしたオンラインではわからなかったことの解像度が、とても上がりました。

久嶋 もう一社、三重県熊野市で製材業を営む株式会社nojimokuも訪問させていただきました。山の中にいくつも拠点があって、険しい山道を毎日車で移動しています。

勤怠管理一つとっても、紙のタイムカードを全て回収して、修正の有無を全員に確認していたという大変さがありました。こうした実態は現場に行って初めてわかった気がします。

それが、サービス導入によって、各拠点でタブレット端末でポチッと押していただくだけになって、勤怠管理をラクにできた、といった変化も含めて実感することができました。

中井 一日の社員総会のために、事前準備をそこまでしているとは驚きです。会場の反応はいかがでしたか?

久嶋 フリスピ当日の会場では、取材させていただいた際の様子を写真で投影しながら、体験した社員とユーザーが登壇して話しました。

実際にfreeeのサービスを使って作業している様子を見て、「まだまだ改善の余地がある」と、職業体験した社員から声が上がっていましたね。

一方、サービス導入によって業務が効率化して、ユーザーの日常生活にも変化があった、という話などを聞いて涙ぐんでいる社員も会場にはいましたよ。

佐藤 参加社員へのアンケートでも、会社が掲げている「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを実感できた、という感想が多かったです。

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熊野の林業の現場まで足を運んだ(写真提供:freee)

時間もお金もかけるのは、あくまでも「社内のため」

中井 社風や会社として大事にしていることも、すごく伝わってきそうだなと思いました。就活中である大学生の目線だと、こういう情報やイベントをもっと社外にも出してほしいなぁと感じてしまいます。

佐藤 ありがとうございます。入社した人からは「こんなに力を入れてやってるんですね!」と、よく言われます。

でも、対外的に発信していくものかというと、そうでもなくて。そもそもの開催目的は社員のモチベーション向上やユーザーの理解なので、採用ブランディング等とは別の軸でやっているんです。

久嶋 社員総会では、会社のカルチャーのコアの部分を伝えていくので、どうしてもハイコンテクスト(共通の知識や文化、価値観がある状況)になってしまいがちです。そのため、社外の人に説明するのが、難しい部分もあるんです。働いている人だけに向けて開いているからこそ、伝わることもあるはずです。

中井 「こんなに面白いお話がたくさんあるのに、社外に出さないのはもったいない」とも思いますが、それだけ社内コミュニケーションを大事にしているということなんですね。

大学生が聞く! 社員総会ってどんなもの? 1200人が集まる、クラウド会計ソフト「freee」の社員総会
部署の垣根を越えた交流も活発に(写真提供:freee)

前のめりの参加社員。満足度が9割になる訳

久嶋 社員アンケートで、満足度が約9割と今回も非常に高い数値が出ていました。

中井 1200人もの規模で、それはよくあることなのでしょうか?

久嶋 他社ではそんなにはないと思います。freeeの社風も背景にあるでしょうね。私たちが扱っている商材が、バックオフィスを支えるということにも関連していて、社員の社風とか社内カルチャー、組織への感度がとても高いんです。

たとえば毎月実施しているオンラインの全社集会も、85%が見ています。私は今年1月に転職してきたばかりですが、社員がこれほど前のめりに参加することに驚いています。

佐藤 僕も転職で入りましたが、熱い人間が本当に多いなと感じています。従業員の先にある「顧客の体験」を高めることを考えると、この熱をキープしないといけないとも考えています。

久嶋 いま醸成されているカルチャーを自分たちが毀損してはいけないし、より良くし続けなければならないと思います。

freeeは「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げていますが、そもそも会社としてのカルチャーがなくなってしまうと、このミッションの到達スピードが落ちてしまいます。だからこそ、時間をかけてでもフリスピを実施していくことが重要だと感じています。

大学生が聞く! 社員総会ってどんなもの? 1200人が集まる、クラウド会計ソフト「freee」の社員総会
写真提供:freee

インタビューを終えて

社員総会はなじみのない言葉でしたが、会社説明会で一部の社員が「弊社はこんな雰囲気だよね」と話すよりも、社員総会の雰囲気や内容を見聞きする方が、会社の雰囲気がより分かりやすい気がしました。freeeの場合はあくまで目的は「社員のモチベーション向上やユーザーの理解」。就活でも、説明会だけでなく社員総会にも注目すると、新たな発見がありそうだと感じました。


(取材:中井舞乃、文:山本梨央、デザイン:高木菜々子、編集:野上英文)

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