【解説8冊】デザイナーが選ぶ、デザインの基本が学べるおすすめ本
2021年8月18日(水)
今ほどデザインの力が求められる時代は、過去にあっただろうか。
営業や決算説明でプレゼン資料を作成する、自らWebツールを駆使して採用情報を発信するなど、近年はプロダクト開発以外の仕事でもデザインの知識を求められるシーンが増えている。
ここにコロナ禍によるデジタルシフトが加わり、マーケティングやユーザーコミュニケーションの分野でもWebデザイン・UXデザインの良し悪しが成否を左右するようになった。
こうした流れもあって、NewsPicksでもデザインに関する記事は注目を集めるようになっている。例えば、下に紹介する2つの記事は、ともに6000Picksを超えるヒットとなった。
【完全解説】日本人だけが誤解する「デザイン」の正体【入門】非デザイナーのための「デザインのルール」では、ノン・デザイナーがフォントや余白の使い方、配色などデザインの良し悪しを判断できるようになるには、何をどう学べばいいのか。
独学でデザインを勉強し、人材企業の事務職からプロのデザイナーに転身したNONAME Produceの千﨑杏菜さんは、自身が未経験転職をする前にやっていた勉強法を次のように語っている。
デザイナーは「センスがモノをいうアーティスティックな職業」ではなく、むしろロジックに基づく緻密さこそが価値になる職業でした。そうした経験から、まずは社内のデザイナーにお薦めの書籍を聞き、およそ20冊ほど入門書を読み込みました。 —— 【大胆チェンジ】非・美大からデザイナーになる戦略的転職プラン
【大胆チェンジ】非・美大からデザイナーになる戦略的転職プラン
まずは「ロジック」を学ぶことが、デザインを知る第一歩となりそうだ。
そこで今回は、JobPicksに寄せられた
のロールモデルたちの経験談から、「未経験者へおすすめの本」を抜粋。推薦理由も交えながら、デザインの基本を勉強できる入門書を紹介しよう(注:ロールモデルの所属・肩書は、全て本人が投稿した時点の情報)。
最初に紹介するデザイン本は、資料作成やWebサイトなど制作物の確認時に、知っていると有利なフォントやレイアウトの基本を学べる本だ。
NewsPicksのグラフィックデザイナー國弘朋佳さんが「ずっと使っている」とおすすめするのが『フォント マッチングブック』。
フォント別に「見出し」「リード」「本文・キャプション」の3つのパートに分かれたハンドブックで、3つのパートそれぞれに適した文字の大きさで例文が書かれており、パラパラと眺めているだけでも楽しい一冊となっている。
日本語の書体を中心に、109ものフォントと組み合わせ例が紹介されており、実用性は抜群だ。
色や文字の組み合わせを整えるだけで、デザインの力が発揮されるから。フ
アドテクノロジーやDX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォーム事業を展開するユナイテッドで、UXデザイナーとして活躍する盛亜耶さんがイチオシなのが『なるほどデザイン』。
著者の筒井美希さんは、雑誌や書籍などの紙媒体からWebサイトまで、幅広くアートディレクションを手掛ける業界で名の知れたアートディレクターだ。
そんな筒井さんが、より良いデザインにするために頭の中で考えていることを、作例などのビジュアルとともに分かりやすく解説したデザイン本となっている。
盛さんは、デザインの未経験者にも『なるほどデザイン』をおすすめする理由を、次のようにコメントしている。
UXデザイナーというカテゴリで書かせていただいておりますが、UIも自
デザインファームのグッドパッチでUXデザイナーをしている栗田透さんは、「自身の中に眠っている『美意識』や『感性』が鮮やかに呼び覚まされる一冊」として本書を薦める。
著者は、日本デザインセンター代表で日本グラフィックデザイナー協会副会長も務めるデザイン界の大ベテラン原研哉さん。無印良品や松屋銀座のリニューアルなど、有名な仕事を数多く手掛けていることもあり、読んでいて「なるほど」と納得させられることが多い。
自身の中に眠っている「美意識」や「感性」が鮮やかに呼び覚まされる一冊
次に紹介するのは、各種のデザイン物やWeb・アプリレイアウトの良し悪しを判断する際に勉強になる、UIデザインのロジックを学べるデザイン本だ。
NewsPicksのグラフィックデザイナー松嶋こよみさんが推薦する『レイアウト基本の「き」』は、デザインの中でも、文字や図版の「レイアウト」だけを取り扱っているのが特徴の一冊だ。
理論的な説明と豊富な図案で解説してあり、タイトル通りレイアウトの基本の「き」を理解するにはもってこいの内容だという。
デザイン事務所に勤めた初日に「デザインに必要なことが全て書いてあるか
法人営業(フィールドセールス)からUIデザイナーに転身した経験を持つアトラエの新垣圭悟さんが推薦するのは、複数の現役UIデザイナーが「UIデザイナーを目指している人に渡せる最初の1冊を作りたい」という思いで執筆した一冊。
目次を見ても、「2章 UIの見える部分を学ぶ」「3章 UIの見えない部分を学ぶ」という情報設計の基本から、「4章 UIが機能する環境を学ぶ」ではスマホやWeb、タブレットでのUI設計まで、幅広く学べる内容になっている。
新垣さんも書いているように、プロのデザイナーにとっても「デザイン業務の教科書」となる本だ。
UIデザインの重要性、用語、デザインの歴史、デザイナーの役割、情報設計の仕方や具体的な開発プロセス・運用まで、デザイン業務の教科書のように利用できる本だと思います。具体的な内容なため、UIという概念を知るだけではなく、実際に手をうごかしながら学ぶ上でおすすめの書籍です。 2021年3月現在価格がkindleだと100円と破格で購入できるようになったので初学者にはとっつきやすいものだと思います。 他も個人的にはおすすめな書籍も紹介しておきます。 ・今日からはじめる情報設計 ・オブジェクト指向UIデザイン ・インタフェースデザインの心理学 ・行動を変えるデザイン ここ投稿の趣旨から少し逸れますが、本を読むことも重要ですが、UIデザイナーになる上ではアウトプットを出すことになれることも非常に重要だと思うので、cocoda!などのサービスを使ったり自分でサービスを作ってみるなどしてアウトプットをすることに慣れることにも挑戦してみてください。
>『はじめてのUIデザイン 改訂版』のKindle / EPUB紹介ページ
最後は、近年ビジネスの成否を分ける重要な要素となったUX(ユーザー体験)の設計理論を勉強する際に参考になりそうな本だ。
グッドパッチのUXデザイナー藤原彩さんがおすすめするのは、まさにテーマ通りのタイトルがついている本だ。
著者の安藤昌也さんは、人間中心設計、エスノグラフィックデザインアプローチなどの研究、教育に従事する千葉工業大学先進工学部知能メディア工学科の教授。UXデザインの基礎知識である人間中心設計(人間中心デザイン)や認知工学などをアカデミックに学ぶことができる。
優れたUXをデザインするための理論やプロセス、さらには歴史的な背景も体系的に解説されており、専門書ながら261のページ数(単行本)で比較的コンパクトにまとまっている。
多くの人が手にとったことのある書籍だと思います。UXデザインという領
藤原さんと同じくグッドパッチでUXデザイナーを務める山岸有馬さんが推薦するのは、元・任天堂の企画開発者である玉樹真一郎さんが執筆した、人の心を動かす仕組みと手法をまとめた一冊。
ゲームのUXは、長い歴史をかけて練り上げられた秀逸なものが多いといわれる。本書では、任天堂のタイトルの中でも世界的に愛される「スーパーマリオブラザーズ」や「ゼルダの伝説」などを題材に、人がついやってしまう仕組みが解説されているので、素人でも関心を持って読むことができるだろう。
価値やニーズについての本ではないので今自分がやっている仕事とは少し異なりますが、「体験ってなんだ?」という疑問に答える本としては最高だと思っています。 本でも解説していますが、この本を読んでいる時間自体が”体験”の理解に役立つと思うので、UXデザインに興味をもち始めた方には是非読んでいただきたいです! 興味を持ったら次に読んでほしいのは「ハマるしかけ」か「「欲しい」の本質~人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方~」です!
>『「ついやってしまう」体験のつくりかた』のAmazonページ
グッドパッチのUXデザイナーなかねみかさんは、タイトルからはUXデザインの勉強ができると想像できない一冊を推薦している。
本書は、「デジタル化する世界の本質」の解説を通じて、UXデザインの重要性について理解できる本だ。
共著者は、UXコンサルティングを手掛けるビービットで上海や台北支社の責任者を務める藤井保文さんと、複数のベストセラーを出しているIT批評家の尾原和啓さん。2人の持つ知見が融合され、先端ビジネスとUXの関係性が鮮やかに解き明かされている。
アフターデジタル(オフラインがオンラインに包含され「オフラインのみ」の状況がなくなる状態)では、「ユーザーが使い続けたくなるほど有益な存在」こそが求められるとし、そこで必要となるアプローチについて解説されている。
今後UXデザインがどのように大きく世界を動かして行けるのかがわかる本
ここまで取り上げた8冊のポイントを読んで、現在の仕事や目指すスキルアップの方向に合ったデザイン本を手に取ってみてほしい。
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文:小林将也、編集・デザイン:伊藤健吾、バナーフォーマット作成:國弘朋佳、バナー画像:iStock / illustration