クリエイティブディレクターは、誰も思いつかないようなアイデアを武器に仕事をする、広告業界の中でも人気の職種である。
そんなクリエイティブディレクターたちは、普段どのようなインプットで企画を作っているのだろうか。
クリエイティブカンパニーkakeruの代表で、業界で期待の若手として注目されている明円卓(みょうえん すぐる)さんは、「自分は企画をポンポン思いつくタイプではない」と語る。
それでも、プランニングやコピーライティングまで幅広い知見を生かして、新卒から約6年在籍した電通ではKDDI・auのテレビCM『意識高すぎ!高杉くん』『三太郎』などのヒットシリーズを手がけた。
20代のうちから広告業界で活躍する明円さんの、アイデアの源泉とは何か。お薦めの書籍に焦点を当てながら、活躍するクリエイティブディレクターの秘密をひも解いていく。
若手時代は「何でも学ぶ」
—— 明円さんは電通での6年間で、たくさんのヒットCMを手がけています。ベテランのクリエイティブディレクターも多い職場で、どうやって実績を残したのですか?
とにかく勉強しました。
大学時代は、サークル活動が楽しくて、就職活動には消極的でした。
そんな私を見かねて友達が連れて行ってくれた合同説明会で、初めて見た会社が電通だったんです。
そこで、総合広告代理店って、イベントからSNSキャンペーンの企画・運用まで、何でもやっていると知りまして。
私は特にやりたいこともない学生だったので、会社に入ってからやりたいことが探せる環境が魅力的で、この会社に強く入りたいと思うようになりました。
ところが、当時の私には履歴書に書ける強みがなくて。そこで、履歴書に書けるようなエピソードを作らねばと、あえて1年間休学することにしました。
クリエイティブ関連の本を読むのはもちろん、スタートアップ企業でインターンをしながら広告案を考えて、企業に自主提案するような活動もしていました。
その時の提案で、焼肉チェーンの牛角さんと一緒に広告を制作したこともありました。
肉を焼く網の上にQRコードをつけて、それを読み取ると肉が焼かれている映像が流れるという、スマホ黎明期の紙媒体とデジタルを組み合わせた広告企画です。
これが、ありがたいことにSNSで話題になり、就活の面接でもこのエピソードは楽しんで聞いていただけました。
—— アイデア豊富な学生だったのですね。
クリエイティブなことに興味があったのは確かです。それでも、プロとして仕事ができるとは思っていませんでした。
無事に入社した電通では、企画の作り方を教えてもらうため、とにかく先輩に話を聞きに行っていました。
広告制作に関することは、何でも学ぶ姿勢で知識を広げた結果、入社5年目にKDDIの『意識高すぎ!高杉くん』シリーズなども担当させてもらいました。
—— 独立してからも、変わらず話題となる企画を数多く作っています。
直近でお手伝いしたのは、Duolingoという会社のプロモーションです。
この会社は、海外では有名な外国語を学ぶアプリを運営しています。
同社が日本でフランス語コースを開講するにあたって、プロモーションとして「フランス語の注文しか受け付けない ふしぎなパン屋」という企画を実施しまして。おかげさまで、盛況のうちに終えることができました。

2021年6月、東京・恵比寿に2日間限定でオープンした「フランス語の注文しか受け付けない ふしぎなパン屋」(写真:本人提供)
—— 独創的なアイデアです。
ただ、私は企画をポンポン思いつくタイプではないので、他人の良いアウトプットを見て、インプットしながら、企画を考えることが多いです。
連休は1人で合宿したり、友達を呼んで勉強会をしたり。とにかく勉強することを大切にしています。
企画の「構造」を真似る