「面接官の目に留まるエントリーシートの書き方が分からない」「面接でうまく自分を表現できない」。就活生の多くが、人生で初めての就職活動に悩みを抱えています。
しかし、一体誰にアドバイスを求めたらいいのか、もらったアドバイスが適切なのかは、確かめようがありません。
ラジオやnoteで就活生へのアドバイスを発信する電通のコピーライター・阿部広太郎(あべ こうたろう)さんは、「自分の言葉で話せるなら、それはあなただけの強みであり、志望動機になる」と語ります。
『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』が大ヒットするなど、言葉のプロとして活躍する阿部さんが考える、「面接官の心をつかむ言葉術」とは。
JobPicks編集部インターンの平瀬今仁(ひらせ いまじん)が、就活生を代表して話を聞きました。
イマジン:JobPicks編集部でインターンをしている、平瀬今仁といいます。阿部さんの本やラジオの大ファンで、お話しできる日をとても楽しみにしていました。
阿部:よろしくお願いします。「イマジン」さん、とてもいいお名前ですね。
イマジン:ありがとうございます。今日は、「面接官の心をつかむ言葉」をテーマにお話を聞かせてください。
まずは、採用担当者にとって読みやすいES(エントリーシート)とは、どのようなものか教えてください。
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阿部:ESの読みやすさは、「見出しがついているか」で決まると思っています。
例えば新聞なら、見出しを見るだけで概要が分かりますよね。ESにも、同じことがいえます。
大前提として、採用担当者は1日に数十人から数百人のESに目を通します。しかも、仕事の合間を縫って。時間の都合上、全てを細かく読み込むことは難しい。
では、どうしているのか。
「言いたいことが伝わってくるか」を判断しながら読み進めています。
見出しがあれば、内容に入っていきやすい。自分の言いたいことを、ただ羅列してしまっているだけでは、読み手の負担になります。読み手の立場に寄り添って考えてみると、ESの整え方が見えてきますよ。
イマジン: 面接でも同じことがいえますね。「質問には、結論ファーストで回答しなさい」とよくいわれます。
阿部:その通りですね。
ただ、必ずしも「結論」を先に言う必要はないと思うんです。
一番おいしそうな、目印となる部分——。ショートケーキでいえば、イチゴにあたる部分を、回答の初めに持っていく。
ショートケーキは、イチゴが目印となって、それを見ることでそそられると思うんです。
面接も同じで、相手にとって「ちょっと気になるな」「続きを聞いてみたいな」という部分を、見出しに持っていくと良いと思うんです。
まずは自分にとってのイチゴだけでも伝える。それさえ言ってしまえば、緊張していても後から言葉はついてきます。
イマジン: 面接の冒頭に「1分間で自己紹介してください」というシーンがよくありますが、そこで目印を話すべきでしょうか。
阿部:冒頭で大きな勝負に出る必要はないと思ってます。所属と名前、部活やサークル活動などやってきたことの簡単な紹介と、「今日はよろしくお願いします」のあいさつだけで十分じゃないかなと。
サッカーでも、試合開始直後は小さなパスから始まりますよね。
面接も同じで、最初からゴールを決めようとする必要はありません。話の流れの中で、シュートを決めるチャンスが巡ってきますから。
そのときに、先ほどのイチゴを思い出してください。
もしかしたら奇抜な自己紹介を求める面接官もいるのかもしれません。いたとしてもごくまれだと思うんですよね。多くの面接官は会話のキャッチボールを望んでいるのではないかなと。
なのでこちらも力みすぎて、「無理をしているな」とか「就活本に書いてあることをうのみにしているな」とか、そんなふうに思われたら本末転倒ですし、もったいないですよね。
イマジン:思いきり、最初からゴールを決めようとしていました……。「自己紹介は印象に残るようなコピーをつくった方がいい」と、教わってきたのです。
阿部:印象に残るとは何だろう?って考えたいですよね。
話がチグハグな人や、この人は本心で話していないと感じられる人は、面接官に「ここには、合わないかな」と思われてしまいます。
大事なのは、その人なりの「納得できる動機」が見えるかどうかです。多少、つじつまを合わせるのは良くて、自分が納得できるなら、奇をてらった言葉である必要はありません。