完パクでOK! 売れる営業は“AIフル活用“をもう始めている

完パクでOK! 売れる営業は“AIフル活用“をもう始めている

    シン・若手AI人材

    さまざまなビジネスにおいてAI活用が叫ばれるようになった今。しかし実際の営業現場では、いまだに“足で稼ぐ”ことが良しとされるケースも少なくありません。「AIを使ったスマートな営業」が現場に浸透するのは、遠い未来の話なのでしょうか。

    そこで「AI×営業」の現状について、セレブリックス営業総合研究所の所長でセールスエバンジェリストの今井晶也さんに話を伺いました。すると返ってきたのは「営業は近々、⽣成AI活⽤を前提とした『インテリジェントセールス』がキーワードになる」という答え。

    インテリジェントセールスとは何なのか、現場の若手営業パーソンはどのようにAIを活用すればいいのか。日々の営業活動で活用できるAIの使い方と合わせて教えてもらいました。

    目次

    株式会社セレブリックス 執行役員 カンパニーCMO セレブリックス営業総合研究所所長 兼 セールスエバンジェリスト 今井晶也さんプロフィール

    営業×AI活用の時代はすぐにやってくる

    近年、営業現場へのIT活用は飛躍的に進みました。社会情勢や市況の変化を受けて、優秀な営業人材の採用難易度が上がり続けた結果、「今いる営業パーソンの1人あたりの営業生産性をどう高めるか」が注目されるようになったからです。

    つまり人を増やさずに成果を出す方法や、トップセールス頼みではなく誰がやってもある程度の成果が出せる組織づくりを目指して、ITツールを活用する企業が増えてきたのです。

    少し前までは「営業は“人”で売るもの」という認識が強かったのですが、各社がこぞって「営業は仕組みで売るもの」と考え方をシフトして、営業プロセスにデジタルをどう組み込むのかに注力するようになりました。

    しかしことAI活用においては、まだまだ普及は進んでいないと言っていいでしょう。

    実際に僕がX(旧Twitter)で「テキスト系の生成AIを仕事で使っていますか?」と521名の営業職に聞いたところ、日常的に使っていると答えた方はわずか10.9%、使ったことがある程度 / ほぼ使わないと答えた方が6割以上でした。

    今井晶也さんのX投稿
    (https://twitter.com/M_imai_CEREBRIX/status/1693644447224094817)

    大手企業が集まるイベントでも同じ質問をしたことがありますが、その時は「日常的にAIを使っている」人は5%もいませんでした。

    しかし望もうと望まなかろうと、AIの普及は営業の世界にもすぐにやってきます

    なぜなら日本は、今後確実に生産労働人口が減っていくから。労働人口が減っても売り上げ目標を下げたいという企業はいないでしょうから、営業職には生産性の向上が至上命題となるはずです。

    一昔前に営業のデジタルツールが普及したように、今後は生成AIを活用した生産性向上を目指す考え方が確実に広まってくるはずです。

    既存の営業プロセスにAIを組み込む「AIドリブンセールス」

    では実際に、AIはどのように営業に関わってくるのでしょうか。

    基本的には従来の営業プロセスに生成AIが組み込まれるようなイメージで、顧客体験を高めるために随所でAIをフル活用する営業スタイルに変化します。

    例えば、これまで手作業で行っていた営業先のリストアップを、AIに任せれば「一番成果が出るリスト」を作成できます。従来のように「とりあえず名刺交換した人に片っ端から連絡してみよう」とするよりも、よっぽど効率的ですよね。

    またAIにリストの詳細な情報を調べて要約してもらえば、お客様にテンプレートの営業文句を使うことなく「For You」なメッセージを伝えることもできるでしょう。その他にもAIと商談の練習をしたり、提案資料の骨子や構成を作ってもらったりすることも可能です。

    このような営業プロセスに、生成AIやデジタルを取り入れた、知的でスマートな営業活動を「インテリジェントセールスプロセス」と呼んでいます。

    AIドリブンセールスプロセス

    生成AIはまだまだ進化の過程ですから、100%のものを作るのは難しいケースもありますが、それでも土台が作られることでかなりの効率化が図れるはずです。

    インテリジェントセールスを従来の営業プロセスに組み込むことで、営業パーソンは商談などにより時間が掛けられるようになり、成果も上がりやすくなるでしょう。

    完パクOK、今すぐ使える営業×生成AI

    とはいえ「AIを導入していない自社には関係ない話だな」と感じる人も多いはずです。しかし実は、会社でわざわざ大掛かりなツールを入れなくても、個人レベルで使える無料サービスやアプリは多く存在します。ChatGPTなどが代表的ですね。

    もちろん情報管理や高いセキュリティーが求められるようなデータは、個人レベルでは扱えないと思いますが、企業調査や商談の準備段階、思考の壁打ち、情報整理などであれば簡単にAIに任せることが可能です。

    いくつかやり方を紹介しますので、ぜひ自分の営業プロセスに使えそうなものは取り入れてみてください。

    今すぐ使える営業×生成AI Before → After

    ●調査・商談準備

    特定のプラグイン、ブラウジング、プロンプトを駆使することで、商談先の情報やターゲット層のマクロ的な分析などが容易にできるようになります。

    例えばChatGPTに適切な質問を投げかけるだけで、ものの数秒で競合や市況を調査してまとめてくれるんですよ。具体的な進め方は下記のYouTubeでも紹介しています。

    また商談の準備段階では、例えば取引先の代表インタビューや製品の紹介記事などを、生成AIに読ませて要約してもらえば、その企業が大切にしているキーワードが見えてくるはずです。

    「この企業のWeb記事の要点をまとめて、ポイントを5つ挙げて」「この内容をベースに、商談の最初に展開するアイスブレイクトークを考えて」と指示を出せば、後は生成AIがまとめてくれるわけです。

    これが100点満点の台本にはなりませんが、従来のように企業のサイトやインタビューを自力でくまなく調べることなく、商談に向かっている電車の中でも短時間でキーワードを拾えるようになります

    <完パクOK! 商談準備の参考プロンプト>
    下記を生成AIに読み込ませると、商談準備に必要な回答が返ってきます。

    ◆その1
    ○○業界の収益構造と利益構造について教えてください。具体的には、以下の点について詳しく知りたいです。

    1. 主な収益源や料金体系

    2. それぞれの収益源や料金体系における構造

    3. 顧客や利用者がそれぞれの収益源や料金体系に対して感じるメリットやデメリット

    ◆追加プロンプト
    上記の企業に #取り扱い商品 に書かれている商品やサービスを提案する場合に、どのような想定ニーズや課題解決を実現できる可能性があるか答えてください。出力は #アウトプット条件 を参照ください。

    #取り扱い商品

    1. ここに商品機能を書く

    2. ここに商品のメリットや選ばれる理由を書く

    3. ここに便益や問題解決の実例を書く

    4. その他トピックスを書く

    #アウトプット条件

    1. 想定ニーズと解決策として、出力は問題点とそれに対する解決提案を5つにまとめて記載する

    2. お客様への質問リストを、5~10個だす

    3. 顕在課題がないお客様に示唆を与えるキラークエスチョンを3つ用意する



    ●相談

    生成AIはかなりの精度で会話ができるので、商談のロールプレイングの相手役としても最適です。商談相手の条件を伝えた上で、AIにロールプレイングをしてもらうと「とはいえ〇〇ですよね?」「これってどういうことですか?」など、まるで本物のお客様のように質問を返してくれるのです。

    逆にAIにトップセールスの役をしてもらうこともできるので、お客様側の気持ちも分かるようになり、営業としてかなり勉強になるかと思います。

    <完パクOK! ロールプレイングの参考プロンプト>
    下記を生成AIに読み込ませると、ロールプレイングに必要な回答が返ってきます。

    営業ロールプレイングの顧客となる人物像を設定してください。
    #目的
    営業ロープレに使用するペルソナ作成
    #前提条件
    営業ロープレを通じて、実際の営業活動での成果向上に取り組んでいます。
    #企業情報
    A社(自社):
    □□サービスを提供する○○企業
    B社(顧客):
    下記にて設定
    ※企業はどちらも日本企業です。
    #ロール
    あなたは、営業の専門家です。営業ロールプレイングを専門に20年のキャリアがあります。
    #制約条件
    下記フォーマットに沿って作成してください

    • 資本金

    • 事業内容

    • ビジョン

    • 商材情報

    #成果物


    ロールプレイングに関しては、ぜひ拙著「インテリジェントセールス」の書籍に解説やプロンプトがあるのでご確認ください。

    >>The Intelligent Sales AIを活用した最速・最良でクリエイティブな営業プロセス

    ●整理

    商談内容をまとめたり、資料を作成したりするのに多くの時間を割いてきた人は多いかと思います。しかしテキストの要約は、生成AIの得意分野。テキストを読み込ませて「要約して」「議事録を作って」と指示するだけで、すぐにデータが出来上がります。

    読み込ませるテキストも自分で打ち込む必要はなくて、例えば録音したデータを文字起こししたり、手書きメモをスマホでスキャンしたりできるアプリやツールもたくさんあります。

    iPhoneの標準機能 テキストスキャン
    「テキストスキャンはiPhoneの標準機能にも付いています」

    議事録を作成した後は、AIにネクストアクションの設定やメール⽂章等のコンテンツ作成を指⽰することも可能です。

    ちなみに僕は、最近では「キーボードで文字を打ち込む」ことをやめて、音声入力で生成AIに指示を出すようにしています。音声入力はGoogleで無料の拡張機能が使えますし、何より文字を打つ面倒がなくなるので、これによってAIを使う機会が格段に増えました。

    「AIが仕事を奪う」は正しくない

    今回紹介したいくつかの手法だけでも、AIが圧倒的に業務効率化につながることがお分かりいただけたかと思います。

    これらをうまく活用できれば、営業職は今後「インテリジェントセールスができる人」から成果を上げるようになってくるのは確実でしょう。ちまたでは「AIが仕事を奪う」なんてキーワードがよく挙がりますが、正しくは「AIを使える人に仕事が奪われていく」のです。

    ただ、AIはお客様の顧客体験や購買活動を便利にするものであって、営業を楽にするためのものではないということは常に意識しておかないと、薄っぺらい営業になってしまうのも事実です。

    正しい営業活動とスタンスを基本能力として身に付けつつ、その上でAIやデジタルを武器として活用していく。若手営業パーソンは、そういったバランス感のあるプレイヤーを目指してほしいですね。

    完パクOK! 売れる営業は“AIフル活用”スタイルに移行している
    (画像:John Schnobrich/Unsplash)

    とはいえ「うちの会社は、まだまだAIを取り入れていないからなぁ…」と感じるのだとしたら、まずは個人で、プライベートでAIのサービスを活用しながらスモールサクセスを重ねていくといいと思います。

    もちろん会社のルールやセキュリティー面などの配慮は必要ですが、個人でデジタルやAIサービスを活用しながら業務効率化に取り組んでいく。すると「あいつに頼むと仕事がとにかく早い」「どうやらこんなツールを使っているようだ」と周りから一つ頭の抜けた存在になるはずです。周りの反応が変わって、ゆくゆくは会社としてもDX化に向けてかじを取り始めるのではないでしょうか。

    DX化というとどうしてもトップダウンのイメージがありますが、現場の若手が使っているツールをきっかけに話が進むこともあります。「うちの会社じゃどうせできない」ではなく、まずは自分ができる方法を考えながら、新時代のAIドリブンセールスを目指してほしいと思います。

    後半の記事では、AI活用時代の「営業としての基本スペックの高め方」についてもお話しします。ぜひご一読ください。

    今井さんの新著:The Intelligent Sales AIを活用した最速・最良でクリエイティブな営業プロセス

    (文:於ありさ、デザイン:高木菜々子、編集:井上倫子)