トヨタ→TBS「異文化転社」で学んだ年収アップより大事なこと

トヨタ→TBS「異文化転社」で学んだ年収アップより大事なこと

    忙しい毎日で、会社と家の往復ばかり。もう少しインプットしたいけど、スマホを見るとついSNSやゲームでダラダラ時間を溶かしてしまう……。

    ビジネスパーソンのみなさんが「定時までに帰れること」をサポートすべく、業務効率化やキャリアアップに役立つ新刊ビジネス書の著者をお招きして、今日からお仕事にちょっと役立つノウハウやTipsをインタビュー。

    ポッドキャスト番組「定時までに帰れるラジオ」(#テイジラジオ)の一部をダイジェスト版でお送りします(2月1日配信)。

    目次

    トヨタから転職、TBSで感じた文化の違い

    野上:前回に続き、ゲストは『嫌な仕事の断り方』の著者、山本大平さんです。第3回は「若者よ、これからは転社活動をするとき」というテーマでお送りします。

    山本さんご自身も、トヨタ、TBS、アクセンチュアとメジャーな会社を転々とされていました。会社を変える転社活動によって、ご自身のキャリアがスキル的にもアップしたという実感はありましたか?

    F6 Design株式会社 代表取締役 山本大平

    山本:結果論なんですけれども、あります。特にトヨタからTBSに移った時は大変でした。もう脳から変な汗が毎日出ている状態で……(笑)。

    トヨタ自動車はお客さんの命を守る車を作っているので、仕事をする上でロジカルであることがとても大事な文化なんですね。一方、TBSはドラマが強いことで有名ですが、論拠がなくてもヒットするドラマとかって結構あるんです。

    そうすると、トヨタで学んだロジカルな思考って、TBSに行って使えるようであんまり使えなかったんです。ゼロ地点に戻った感じがあり、その経験は振り返ると非常に良かったなと思っています。

    発想力に関しては、やっぱりTBSってすごい人が集まっているんです。その人たちと仕事をさせていただくことで、教えてもらうのではなく、何か“伝染”させてもらった部分って感覚値なんですけど、学んでいったんです。

    トヨタでロジカルを、TBSでクリエイティブを学んだ―。現在、僕は戦略コンサルタントとして仕事をしていますが、意外とロジカルをベースで考えつつも、最終的なアウトプットは、クリエイティブの発想力を使うことが少なくありません。これは自分の差別化要因になっているのかなとは思いますね。

    転職しないと「大丈夫か?」と言われる時代に

    野上:書籍の中では、40歳頃までに転社転職をしたことがあるっていう人がかなりの数になったというのも引用されます。やはり現在は転社・転職をしないといけない時代なんでしょうか?

    トヨタ→TBS「異文化転社」で学んだ年収アップより大事なこと
    mixetto / GettyImages

    山本:統計的な話を言うと、昔は30年続く日本企業は多かったと思うんです。今はもう技術トレンドの移り変わりもありまして、企業の寿命は10年まで短くなったと言われています。

    そうすると、60歳定年説もなくなってきますよね。人生を80年って考えると、仮に20歳から80歳まで働くと、働く期間は60年。企業自体がなくなってしまえばい続けることはできないので、最低でも6社は移るっていう計算になってしまいます。よほど体力のある会社でない限り、一般的にはそうなるっていう考えなんですね。

    野上:私は数年前までアメリカに留学していたのですが、米国は雇用の流動性が激しい国です。そうなると、大学卒業後1社にずっと在籍し続けていること自体がすごく不思議がられるというか、「こいつ大丈夫か?」と思われてるようなやり取りを何度かしましたね。

    逆に言うと、転社や転職が当たり前になっていくと、「この人大丈夫か?」と思われるようになるのでしょうか?

    山本:転社経験値は大事になってきますよね。

    新しい文化に「馴染む」スキル

    山本:例えば、すごく仕事ができて、実績もある人を新規に採用したとします。ただ、その人が転社1社目だった場合「馴染めない」「バリューが出ない」、その結果「期待したけど採用コストが……」となる。そこで悩む企業さんからの相談はめちゃくちゃ多いんです。

    結局、「コミュ力」っていうのは横串で必要な社会人スキルだと思っています。野上さんがおっしゃった「大丈夫か?」という懸念は、そこのポイントと類似してると思いましたね。

    ――転社経験で得られるのは、主にはそのあたりの「コミュ力」なんでしょうか?

    さらに深堀りすると、「自分の中に新たな価値観を内在化できるか?」ってことだと思っていまして。例えば僕の場合、トヨタの価値観からTBSの価値観へ移動しました。これはもう、僕にとってはヨーロッパからブラジルのサッカーチームに行ったぐらいの転職でした(笑)。トヨタがヨーロッパだとしたら、TBSはもうブラジルみたいなところだったんです。

    サッカーで言ったら、トヨタはちゃんと組織立ってサッカーをしてるチーム。そこからブラジル型のTBSに行ったら、キーパーまでロナウジーニョで、みんなパスを出さずにゴールを狙っていくようなチームだったんです。

    トヨタ→TBS「異文化転社」で学んだ年収アップより大事なこと
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    でも、それはそれで一つの文化として成立しているので、新しい文化を自分の中に両方内在化できたのは大きかったです。

    これから転社が当たり前の時代になってくると、全然違う文化の会社にどんどん移っていくわけですよね。そこで「馴染めない」なんか言っていたら、それはもう「馴染むスキルがない」って話になってしまう。そうなると、転社経験をしてた方が取る方も安心ですよね。

    野上:私自身も、40代になって初めて転社したんですけれども、やはり最初に、馴染めないという経験があったんです。つい昨日ぐらいですよ、馴染み出せたのは(笑)。

    ですが、実際会社を変えるというときに、家族や親御さんから反対される方もいると思うんです。それは少し長い目で今後のキャリアを考えた方がいいということでしょうか?

    山本:そうですね。計算上もう考えなきゃいけない状態だと思うんです。先ほど言ったように、同じ会社にいたくても、い続けられない時代になってますので、仕方ないことだとは思います。

    野上:まずは、何から踏み出せばいいんですかね?

    (続く)

    フルバージョンは音声版で!

    このあとは、こんな話をしています。

    • 転職のマインドづくりに「仕事外の人との時間」を

    • 目指すは“さだまさし的”オールラウンダー

    • 転社は難しい、社内異動ではダメ?





    (文:鍬崎拓海 デザイン:高木菜々子 編集:山崎春奈)