職場の花見「なし」9割、不参加理由1位は「プライベート優先」

職場の花見「なし」9割、不参加理由1位は「プライベート優先」

    今年も間もなく花見シーズン。民間の気象会社「ウェザーマップ」が3月7日に発表した各地の開花予想によると、東京では3月18日と予想されています。

    今年は新型コロナウイルスの5類移行後初めての花見シーズンとなり、全体として花見客が増加することが予想されています。しかし、職場の花見の開催をめぐっては「開催なし」が88.7%、「あり」が11.3%り、コロナ禍だった2020年の同調査(「あり」13.6%)をさらに下回ったことが11日、「Job総研」の調査で分かりました。参加意欲についても「参加したいと思わない派」が6割超を占め、理由の上位には「プライベートを優先したい」「休日を使いたくない」などが並びました。

    かつて職場の花見といえば新人の仕事というイメージもありましたが、コロナ禍で社会人生活をスタートとした社会人にとっては縁遠いものとなっているようです。

    目次

    職場の花見、「開催なし」は88.7%に

    調査は「ライボ」の調査機関であるJob総研が2月下旬にインターネットで実施。コロナ禍前の2019年を含めた過去5年間の職場の花見の実施の推移や2024年の実施有無のほか、今後の参加意欲とその理由などについて尋ね、20〜50代の社会人606人から回答を得ました。

    過去に花見が開催された、と回答した221人にコロナ禍前後の職場の花見の実施有無を聞いたところ、コロナ禍前の2019年では49.3%でしたが、コロナ禍に入った2020年に13.6%まで減少。その後、2021年に13.1%、2022年に10.9%と微減が続き、2023年に入ると13.1%と回復しましたが、2024年の職場の花見の実施有無(未定を除く)では、「開催なし」が88.7%、「あり」が11.3%となりました。開催する割合はコロナ禍前に戻るどころか、コロナ禍1年目の2020年よりも下がる結果となりました。

    職場の過去の花見開催年と2024年の開催予定
    職場の過去の花見開催年と2024年の開催予定(Job総研より)

    今後も「参加したくない」6割超、理由1位は「プライベートを優先」

    花見に対するイメージでトップに立ったのは「立ち回りを気にする」の37.3%。次いで「新人が頑張る催し」の32.0%、「場所取りに全力を注ぐ」の31.2%が上位回答となりました。多くの社会人にとって職場の花見は純粋に花やお酒を楽しめるような機会でないことがうかがえます。

    今後職場の花見が開催される場合の参加意欲についても尋ねたところ、「参加したいと思わない派」が 60.7%で過半数を占めました。その内訳は「全く参加したいと思わない」23.4%、「参加したいと思わない」18.0%、「どちらかといえば参加したいと思わない」19.3%でした。

    参加したくないと回答した368人にその理由(複数回答可)を聞くと、「プライベートを優先したい」が 51.4%で最多となり、次いで「休日を使いたくない」が47.6%、3番目に「気を使うのが疲れる」が 40.5%が入りました。そのほかの理由としては「仕事以外で職場の人と関わりたくない」「仕事後の飲み会で十分」「外飲みが好きではない」などがありました。

    「職場の花見の今後の参加意欲」と「参加したくない理由」
    「職場の花見の今後の参加意欲」と「参加したくない理由」(Job総研より)

    社会人の6割が「職場の花見は仕事」

    では、職場の花見で気にすることは何でしょうか。回答者606人が選んだ1位は「場所取り」で41.7%でした。次いで「立ち回り」の35.6%、「周囲の人からの目」32.5%、「上司からの目」32.0%などとなりました。花見を成功させるために、準備や盛り上げに苦心する社会人の様子が浮かびます。

    職場の花見は仕事に入るかどうかを尋ねたところ、「仕事に入る派」は60.5%に上りました。内訳は「断然仕事」17.5%、「仕事」12.5%、「どちらかといえば仕事」30.5%でした。

    今後の花見のあり方については「なくなっていくと思う派」が85.8%で多数を占めました。別の設問では職場の花見は「昭和のイメージ」と回答する人が8割近くを占めるなど、最近の社会人にとって縁遠い存在となっている実態が浮かび上がりました。

    「職場の花見において気にすること」と、「職場の花見は仕事に入るか」
    「職場の花見において気にすること」と、「職場の花見は仕事に入るか」(Job総研より)

    そのほかの職場の花見に関するコメントはJob総研の「JobQ Town」で見られます。

    職場の花見は衰退…フラットな交流機会創出を

    調査では花見シーズンでの路上飲みの賛否についても尋ね、自由記述では次のような賛否のコメントが見られました。

    <賛成>

    • お酒を片手に外で見るからこそ、花見の良さが出ると思う。片付け等を徹底すれば路上飲みには賛成

    • 普段路上飲みには全く良い印象はないが、花見時期であれば日本の風情を楽しむのが目的なので賛成

    • ハロウィンのように騒ぐ路上飲みには反対だが、春の景色を楽しむためであればなら許されると思う

    <反対>

    • コロナ禍で問題になったのにもかかわらず、未だに日本社会が路上飲みに寛大すぎると思います

    • 世界では通常屋外でお酒を飲む行為は基本的に禁止。酔っ払いがフラフラしている国は恥ずかしい

    • 酔うと楽しくなって周囲への配慮が欠如すると思うので、花見時期でも路上飲みは迷惑になると思う

    • 花見時期でも反対。酔っ払った人がしっかりルールやゴミ処理をできるイメージがないためです

    調査結果を受け、Job総研室長の堀雅一氏は以下のようにコメントしています。

    Job総研
    堀雅一室長

    5類移行後も実施率及び参加意欲も低く、さらには今後も無くなっていくと考える社会人が多いことから、職場の花見文化は衰退傾向にあることがわかりました。花見ではルールを守ることが前提とされていますが、騒音や片付けだけでなく、場所取りの時間帯等のマナーに関する問題も未だ存在します。しかし、都内のハロウィンをはじめ、コロナ禍で社会問題になった路上飲みも、「花見」という目的がある場合は、一定社会的に寛容になる風潮が読み取れました。

    職場の花見文化は新年度の交流を目的として開催されることが一般的ですが、花見を通した職場での交流に”気疲れ”を感じている社会人が多いことを踏まえると、役割が強制されない、フラットな関係で参加できるような「花見以外」の機会を創出するなど、別の手段で交流を深めていける可能性が見える調査結果となりました。

    (文:竹本拓也、編集:比嘉太一、タイトルバナー:kuponjabah / GettyImages)