上司が部下に「気を遣う」場面増、多様性やハラスメント背景に

2024年2月19日(月)

上司の本音「トラブルやミスのときに気を遣う」

調査は就職や転職に関してリサーチをしている「Job総研」が実施。20〜50代の男女で、現在部下がいる162人、上司がいると回答した489人から回答を得ました。

上司の立場として、部下に気を遣った(忖度した)ことが「ある」と回答したビジネスパーソンが91.4%に上りました。部下として、上司に忖度した経験の有無を聞くと、71.8%が「ある」と回答する結果に。

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具体的な忖度した場面に関して、上司から部下へは「トラブルやミスが起きたとき」が60.1%、「業務の優先順位や量の変更があるとき」が45.9%、「チームの雰囲気が良くないとき」が39.9%、「フィードバックするとき」が37.2%と続きました。

部下に気を遣った経験及び具体的な場面(Job総研)

一方、部下から上司へ忖度することが多い場面としては、「気に入られるように同調しておく」が過半数の58.1%、「衝突しないように自分の意見を伝える」が48%、「自身の評価を下げないため批判的な意見は避ける」が45.8%と続きました。

理由として「部下が忖度するのは令和でも変わらない。関係性維持のためにも上司を立てるのは部下の役割」といった声が上がったほか、「上司から気に入られるため」「上司を気持ちよくするため」とのコメントが多数見られました。

上司に忖度した経験及び具体的な忖度の内容(Job総研)

令和の部下は「プライベート優先度」に変化

部下に求められることは昭和から令和にかけて変化したと感じているビジネスパーソン(上司・部下の両方の立場を集計)は、8割近くに上りました。

具体的に変化した内容として、「プライベートの優先度」が52.8%で最多に。次いで「コミュニケーション」が48.5%、「職場や仕事に対する考え方」が42.7%と続きました。

変化が起こった背景として、「労働環境の変化」「多様性の尊重」「ライフスタイルの多様化」などのフレーズを連想する人が多いことも判明。これらは日本全体で2019年にスタートした働き方改革や、それに伴うハラスメントに対するガイドラインの整備、2020年からの新型コロナ対策の一環で導入されたテレワークなどの影響が考えられます。

部下に求められることの昭和から令和での変化内容(Job総研)

上司も部下も互いに“壁”を構築 

上司と部下で理想像もそれぞれで異なる結果に。「現在部下がいる」と回答した162名に上司として部下の理想像を聞くと、「コミュニケーションを大切にする」が59.7%、「自身の考えや提案を積極的に伝える」50.0%など、対話の機会を多くとって意見を交換し合える人物を求める人が多いことが分かりました。

一方で、現在上司がいると回答した487人に、部下として上司との関わりで意識することを聞いてみると、「敬意を払う」が60.9%で最多に。「コミュニケーションを大切にする」は56.6%で、「上司の指示に従う」53.6%と続きました。

Job総研が運営している匿名相談サービス「JobQ」でも上司と部下の関係の変化に関して、次のようなコメントがありました。 

「令和の部下の方が話が通じない存在として語られやすいが、上司も部下もお互い壁を作っているだけな気がする」

「令和の部下は意見を主張できるが、昭和の部下は上司に従順だと思う。現在求められるのはスキルや成果。チームワークを乱さないことが求められると思う」

「部下に対して、上司によるパワハラ的な感情優先の詰めがなくなった」

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上司と部下の理想像にギャップ

Job総研室⻑の堀雅一さんは調査結果に関して、「双方が上司も部下に忖度する時代を前提としたコミュニケーションを」とコメントしています。

Job総研の堀雅一室長

昭和から令和で様々な社会背景を経て、部下に求められることが変化しているのは自然だと考えられます。

しかし、上司と部下の間で理想像と実際の意識にギャップが生じている結果から、互いに歩み寄りすぎると意思疎通だけでなく、期待値のズレが大きくなる可能性も考えられます。

回答結果からも一定数「部下が合わせる」という、昭和の風潮が続く傾向も見られているため、職場でのコミュニケーションエラーを防ぐためにも、今後は双方が“上司も部下に忖度する時代“を前提としたコミュニケーションを取っていく必要が考えられます。

(文:髙栁綾、編集:比嘉太一、竹本拓也、タイトルバナー:maroke / GettyImages)