迷ったら「居心地のわるい」方へ。居心地いい環境に真の成長なし

迷ったら「居心地のわるい」方へ。居心地いい環境に真の成長なし

    社会の第一線で活躍する人たちが、もしもう一度、キャリアのスタートラインに立ったなら? 就活生や働き出して間もない人たちへのメッセージを紹介します。

    第3回は、東京オリンピックで銀メダルを獲得し、今も現役選手として活躍しつつ、スポーツ選手マネジメント会社を経営している馬瓜エブリンさんです。

    目次


    馬瓜エブリン(まうり・えぶりん) 愛知県生まれ、愛知県育ちの女子バスケットボール選手。 2021年に東京オリンピックで銀メダルを獲得。 Wリーグやメディアでは「日本一親しみやすいバスケ選手」として活躍。 現役選手であるかたわら、次なる夢『ビジネスでもメダル』を目指す。


    私のキャリアは「最高に面白い!」

    「もしもう一度18歳からキャリアをやり直すとしたら?」

    誰もが一度は話したことがある内容だと思います!

    前回は、黒﨑美穂さんが「国内メーカー営業から出発した私がESGに携わって15年、もう一度就活するとしたら」という内容で投稿してくださいました。そのバトンを引き継いで、もし私がキャリアをもう一度初めから歩むなら、というテーマで書いてみたいと思います!

    一つ言えるのは、 私自身、これまでの人生で誤った判断は何度もしたし、今の自分ならしないであろう選択もいくつかしてきたということ。

    しかし、今のところ私のキャリアは最高に面白いです! と胸を張って言えるような自分でいられていると思います!

    その経験や思いを就活を頑張っている皆さんに届けたい! と思いこの記事を書いていますが、アツくなりすぎて長くなりましたのでご注意ください(笑)。

    多くの方々に、「好きなバスケットボールでオリンピックに出場して、ビジネスもして、そりゃ楽しいでしょ!」と端的に言われそうですが、私のキャリアには共通してある判断基準があります。

    これまでの人生でおそらく4度、「究極のキャリアの選択」がありました。

    もう一度、キャリアの出発点に立ったなら #3
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    4度あったキャリアの「究極の選択」

    ① 現在71回の全国優勝回数を誇る常勝軍団、桜花学園高校での3年間のプレーを終え、次の進路を考えていた際に、(バスケ女子日本リーグの)Wリーグのチームからオファーがありました。しかし当時の私は、なんとなく「アメリカの大学に行きたい」と考えていました。

    アメリカの大学に行って、バスケをしながら経営学と心理学を学んでみたいという漠然としたプランがありましたが、なかなか言い出せなかったです。なぜならチームもほとんど決まっているような状態で、卒業の2カ月前になって「すみません! 今からアメリカの大学行かせてください!」なんて、絶対に言えなかったから。

    しかし、気になってしまうと詳細を知りたくなってしまうのが人間の性で、調べてはイメージしての繰り返し。バスケットボール界には「スラムダンク奨学金」というアメリカに挑戦したい高校卒業生を支援するプロジェクトがあり、内緒で応募してしまいました。結果は、そもそも応募要項の最後に記載されていた「男子のみ」に気づいておらず、当然落選。

    「それならそれでいいや」と思いましたが、心のどこかで「海外にチャレンジしてみたかったな」とモヤモヤしていた日々が続きました。でも、いざWリーグに入ると、せわしない毎日の中でその思いは薄れていきました。

    今となっては、すぐにリーグに入ってよかったと思いますし、間違った判断ではなかったと思います。しかし、さまざまな理由があったとはいえ、枠に収まった感覚がどこかしっくり来ず、モヤモヤしていたのを覚えています。

    もう一度、キャリアの出発点に立ったなら #3
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    ② 2度目は移籍のタイミング。リーグに入って3年目の選手が移籍するなんて、当時はまだ異例でした。自分自身も勇気を持って移籍を伝えたのはいいものの、不安でいっぱいでしたし、「次のチームでプレーできるのか?」「できるわけないだろう」と言われてしまう状況でした。

    「ダメなら、アメリカでビジネスと心理学を学ぼう……」と高校生の時と同じように当時も考えていましたが、結果的には移籍して本当に人生が変わりました。

    ③ 3度目はオリンピックイヤーであった2020年、何をやってもうまくいかず、プレーするのも嫌になるシーズンでした。当時、代表合宿を行っている最中であまりにもひどかったため、ヘッドコーチに「残るか帰るか、練習が終わったら決めて」と言われてしまう始末でした。

    「この練習が終わったらこのまま帰ってしまおう」と本気で考え、ヘッドコーチに言いに行く寸前でしたが、キャプテンの高田選手からの「今は我慢、チャレンジせずにやめたら後で後悔するよ」という言葉で、なんとか踏みとどまりました。

    もしあの時やめていたら……オリンピックに出場することはありませんでした。もしそうなれば本当に悔やんでも悔やみきれなかったと思います。

    ④ そして4度目。オリンピックシーズンが終わった年に、思い切って“人生の夏休み”宣言をし、1年の休暇中、ビジネスの世界に飛び込みました。多くの起業家の皆さんや投資家さんに混じると、場違いでないか?と、とても恥ずかしくなる時もありますが、たくさんのことを勉強しながら進む環境が楽しくもあります。

    もう一度、キャリアの出発点に立ったなら #3
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    常に「居心地のわるい」環境にいる

    この4つの大きな決断から言えること。

    重大な選択肢で迷ったら「居心地のわるい」方へ、です。

    私は就活を経験していないので、具体的なキャリアの選択に関する戦略を言える立場ではありません。ただ、人生の選択に関する戦略で、今のところこれだけは言えるかなと思っています。

    常に「居心地のわるい」ところへ身を置くことで、あらがおうとする自分は間違いなく成長するし、たくさん失敗して、多くを経験します。

    もちろん、しんどくなった時に、心から相談できる心地よい関係の人は必要です。

    しかし、「No pain, no gain」「人生はネタ作り」などなど有名な言葉が表す意味は、どれも居心地のいいところでは本当の成長はないし、本当に見たい景色は見られないということです。

    「居心地のわるい」場所で得た強烈な経験は、一生忘れず、解決した時の幸福感はより大きく、同じ状況に対峙した時に、いい判断材料になり、変化に強くなります。

    そして何より人として優しくなれる、と私は信じています。

    2度目、3度目、4度目の決断では、環境を変えるのも嫌だったし、逃げたかったし、キャリア絶頂期の流れを手放すのは悩みましたが、常に「居心地がわるいところ」に居続けたからこそ、今のところ面白いキャリアを歩んでいます。

    「もし馬瓜エブリンのキャリアがリセットされたら?」

    結論、どんな職業についても同じ。私は常に「居心地のわるい」環境にいると思います!

    全ての就活生の皆さん! 自分の強み、そしてそこから少し離れた「居心地のわるい」領域はどこでしょうか!?

    充実したキャリアは自分からちょっとはみ出たところにあると思います!

    就活もきっとその一つ! 楽しんで!

    私が次にバトンを渡すのは、古田清悟さんです。ぜひそちらもお楽しみに!

    最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

    (文:馬瓜エブリン、編集:JobPicks編集部)

    このシリーズは、「NewsPicksトピックス」とのコラボ企画です。「もしもオリンピアンのキャリアが、リセットされたら?」(2023年3月1日配信)を編集しました。

    馬瓜エブリンさんはNewsPicksトピックスで「オリンピック選手の起業メモ」を連載しています。ぜひチェックしてみてください。