社会の第一線で活躍する人たちが、もしもう一度、キャリアのスタートラインに立ったなら? 就活生や働き出して間もない人たちへのメッセージを紹介します。第2回は、15年以上にわたり、気候変動とESG分野で分析調査をしている気候変動・ESGアナリストの黒﨑美穂さんです。
社会の第一線で活躍する人たちが、もしもう一度、キャリアのスタートラインに立ったなら? 就活生や働き出して間もない人たちへのメッセージを紹介します。第2回は、15年以上にわたり、気候変動とESG分野で分析調査をしている気候変動・ESGアナリストの黒﨑美穂さんです。
黒﨑美穂(くろさき・みほ) 過去15年間、気候変動とESG分野で分析調査に従事する。2007 年からロンドンの Trucost 社で環境リサーチアナリストを経験、2009年からブルームバーグのESG分析プラットフォームの立ち上げとESGを金融業界に広める活動を行う。 日本のエネルギー政策の分析も統括し、2020 年に環境省の検討会委員、2021年に首相官邸の気候変動推進のための有識者会議委員などを歴任。現在、クライメートテックのベンチャーキャピタル、Energy Impact Partnersに勤務。 慶應義塾大学経済学部卒。Imperial College London 環境ビジネス修士号。シンガポール在住。
今回、リレー投稿として「私がもう一度、キャリアを踏み出すスタートラインに立ったなら」というお題をもらい、書き進めたいと思います。前回は、マサトナカムラさんが「エンジニア人生一筋でアメリカ・ニューヨークに20年以上住んでいる私が、今の世の中を見渡して私自身が今就職活動をするとしたら?」という記事を書いてくださいました。
私は自分の就活で感じた「時間」と「好きなこと」「働き方の多様性・柔軟性」について書いてみたいと思います。
2000〜2001年に就職活動をした私はちょうど就職氷河期にぶち当たりました。といっても、氷河期とわかったのは後からで、その頃は必死でした。
何しろ、やりたいことは環境関連の仕事でしたが、当時求人はなかったですし、友人たちは大企業を目指していたため、自分も自然と「大企業に入らないといけない」という思いでいっぱいでした。
そうしているうちに、友人たちはどんどん内定をもらっていき、自分だけがもらえない→焦る→うまく面接で話せない→自分に向いていることは何なのか悩む、という悪循環にハマっていきました。
突発性難聴も経験し、自宅で休んでいた頃、就職先がやっと決まったのでした。
こんな私がもう一度今就活をするとしたら、ポイントは3つあります。
①「自分のやりたいことに集中する」
②「時間を気にしない、周りと比較をしない」(就職活動は締め切りがあるような気がしてしまいますが)
③「好きなことを見つける」
私の今の「好きなこと」は気候変動対策に関わることなので、最前線で活躍できるのであれば、気候変動を解決する技術やサービスを扱う企業やスタートアップに挑戦したいと思います。
気候変動問題の解決は2050年にカーボンニュートラルになれば良いのではなくて、一刻も早く大気中の温室効果ガスを減らすことが大事です。
今実用化されている技術を広げることと、これから必要となる技術を実用化に持っていくことの両方が必要です。
その新しい技術であるクライメートテック(CO2排出量の削減または地球温暖化の影響への対処に焦点を当てた技術)を世の中に出していく、広げていく仕事ができたらいいなと思います。
またグリーンビジネスは、世界でも脱炭素を目指す国が排出量の8割を超え、企業も同じように脱炭素を早期達成できるよう努力しているため、成長産業になると思います。
私は国内の大企業もアメリカの大企業も、イギリスのスタートアップも経験しています。
スタートアップも大企業もそれぞれ良いところと悪いところがあります。
私はスタートアップでは、努力をたくさんして、少しずつ結果もついてきたため、裁量が徐々に大きくなっていったことと、必ず自分の意見を聞いて参考にしてくれるところが気に入りました。人数も限られているので、他の社員との距離が非常に近いことも良かったです。
大企業も良いところがたくさんあります。研修や諸々の福利厚生など制度が整っていたことは特に良かったです。
私は出産も2回しており、「子育ても仕事も両立したい!」と思って働いていたので、アメリカ企業に勤めていた当時は、国内の企業よりも子育てサポートが手厚かったです。
例えば、子供が病気の時にナニーさん(家庭訪問型の保育サービス)に家に来てもらって面倒をみてもらい、私は仕事を続けることができました。今は国内企業でも導入が進んでいると聞いています。
スタートアップは良い意見を取り入れて成長していくと書きましたが、やはり意見の多様性が尊重される文化だと思います。経営陣にもよるかもしれませんね。恐らく大企業でも上司次第で実現可能だと思います。
また、女性である以上、今就職するとしたら、女性の管理職や役員がいる会社に就職したいと思います。私は2人目の子供を出産した後、管理職に就きました。「仕事さえきちんとこなしていれば、勤務時間は柔軟で良い」というチーム文化を作ることを一つの目標にしていました。
もちろん、みんなで集まる時間帯を設けることでチーム全体の雰囲気をチェックしたり、チームの目標や方向性を決めたりすることもやっていました。
今後は、共働き世帯が増えることを想定すると、夫と妻と両方に働き方の柔軟性が求められると思います。その方が夫婦関係がうまくいくと思います。
人種や性別の多様性も重要ですが、数合わせということでなく、それを取り入れることで組織に多様な意見を持った人が集まるようになります。そんな企業に就職したいなと思います。
最後に、これから就職活動を行う学生の皆さんは不安でいっぱいだと思います。
私も、もしいま飛び出すとしたら不安になると思います。もし入りたい会社がいくつかあるようでしたら、ぜひ社員の方に会ってみてください。
私だったら、「仕事を通して何が一番楽しいですか?」「達成感を感じる時は何をした時ですか?」という実用的な質問もすると思いますが、一番は、「この人と一緒に働きたいか?」というフィーリングが大事です(転職活動でも同じです!)。自分の感覚を大事にしてください。
私は社会人経験22年ですが、やりたくないと思ってやっていた仕事も、今となっては人生の糧です。
無駄はないな、と思うことがたくさんあり、今の自分の仕事に生きていると思っています。なので、不安だと思いますが、「こんなにたくさんの会社のオフィスに入ったりするのは、あまりない経験なので、楽しんでやろう!」という意気込みで(私はそうでした)、好きな仕事を見つけたり、一緒に働いたら楽しそうだなと思える社員の方に出会えることを祈っています。
私が次にバトンを渡すのは、馬瓜エブリンさんです。ぜひそちらもお楽しみに!
(文:黒﨑美穂、編集:JobPicks編集部)
このシリーズは、「NewsPicksトピックス」とのコラボ企画です。「国内メーカー営業から出発した私がESGに携わって15年、もう一度就活するとしたら」(2023年2月28日配信)を編集しました。
黒崎さんはNewsPickstトピックスで「世界を相手に経営する人のための新教養:気候変動」を連載しています。ぜひチェックしてみてください。