「タイパ就活」、企業は肯定的? 否定的? 就活生の本音は二分

2023年6月8日(木)

タイパ就活とは?

「タイパ」とは「タイムパフォーマンス」の略で時間対効果を意味する言葉です。

言い換えると「コストパフォーマンス」の時間版。かけた時間に対する満足度を表す言葉として、Z世代を中心に使われています。

Z世代を中心にSNS上で広まったこの言葉ですが、タイパ重視の思考がここ数年、就活にも使われています。

タイパ就活の実例としては、オンラインセミナーや企業説明会の動画を2倍速で視聴したり、電車などでの移動時間を使って視聴したりすることなどがあげられます。

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他にも、手書きではなくWEBでのES(エントリーシート)提出ができる企業だけに絞って採用試験を受ける学生もいるようです。

7割の企業が良しあし判断できず

就職サイトなどを運営する「マイナビ」が実施したタイパ就活に関する調査によると、タイパ就活に関して7割の企業が「良い部分も良くない部分もあると思う」と回答しました。

「どちらかというと良いことだと思う」という企業は24.5%に上っており、一部の企業では一定の理解を示しています。

出典:マイナビ  「2024年卒 企業新卒採用予定調査」

タイパ就活を肯定的だと捉えている企業の回答は次の通りです(マイナビ「2024年卒 企業新卒採用予定調査」「2024年卒 インターンシップ・就職活動準備実態調査」から)

一方で懸念する声もあります。

などといったものもあります。

タイパ就活への本音 学生は…

学生はタイパ就活をどのように感じているのでしょうか。

タイパ就活について肯定的な学生からは「より多くの情報を得ることができる」「社会人になって役に立つ」といった意見があがります。

肯定的な理由

学生1: 多くの企業を調べる必要があるため、1社に時間をかけていられないです。夏や冬のインターンシップを体験しましたが、何十社とインターンシップに参加している学生はタイパ をすごく重視しているように思えました。私はタイパを考えたことがなかったので、そのような学生を見習って、タイパを意識していこうと思いました。

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学生2: どう効率的に動けばよいかについては社会に出た後も問われ、実業務における再現性の観点からも役に立つと考えるため。ただし効率化そのものが目的になることはよろしくないと思います。

学生3:就活は情報量が多い方が選択肢が広がり、時間効率を高めた方が多くの情報を得られるから。また、無駄な労力を省けるため、精神的・肉体的な疲労もたまりにくいと考えます。

学生4:タイパの定義があやふやだが、自分は単位時間あたりにどれだけ自分にとって相性の良い企業を見つけ、内定を得るかだと考えているので、タイパが高くかつ時間も長くすることができれば、必ず納得のいく就活になると考えています。

否定的な理由

一方、否定的な学生たちからは「時間を短縮したために企業とのミスマッチが起こる」「人生に関わる就職活動は丁寧にすべきだ」との声があります。

学生5:昨今の部門ごと職種ごとに細分化された就活市場とタイパは相性が悪いように思います。説明会の数が膨大になっているので、一つ一つじっくり悩み考えることができないのはよくわかりますが、タイパしか意識しない就活では、それこそ自分のスキルやマインドとのミスマッチを起こす原因になると考えます。

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学生6:タイムパフォーマンスを意識して低クオリティーになったら意味がない。わざわざ意識する必要はないです。

学生7:(タイパを意識しない方が)自分が興味のなかったものに興味が湧いたり、自分とは違った考えを持つ人の話を聞けたりするので、考え方が広がると思います。

学生8:人生を左右する就職活動は時間をかけて丁寧に行いたいです。

「タイパ」と「深掘り」の二刀流

タイパ就活の評価は人によってさまざま。

就活サイト、SNS、YouTubeなど就活情報があふれている世の中だからこそ「タイムパフォーマンス」を意識した就活が生まれてきたのでしょう。

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「短期決戦」とも言われている就活で、情報収集の効率を高めていく必要がある一方、時間の効率を気にするあまり、就活の質が落ちてしまう可能性もあります。

このほど就活を終えたばかりの筆者(2024年卒)の個人的な意見ですが、視野を広げるための情報収集はタイパを意識し、関心のある業界や企業研究などは深掘りするためにタイパを意識しないようにするのが良いと思いました。

(文:鍬崎 拓海、編集:比嘉太一、中村信義)