少なくとも、世界をよくしたいと思っている。でも、自分で事業を立ち上げるほどの勇気はない——。
そんな若者に、経営者としての舞台を提供する会社がある。実業家で投資家の穐田誉輝(あきた よしてる)さんが率いる「くふうカンパニー」だ。
同社が行う「未来の経営者」採用の特徴は、熱意ある経営未経験者を採用し、グループ会社の経営人材として育成するというもの。20〜40代の中途採用のみならず、新卒採用でもこの姿勢を貫いている。
〈くふうカンパニーの「経営人材」例〉
▶︎くふう住まい代表・長井健尚さん
住友商事→ボストン コンサルティング グループ→アマゾンジャパン(メディア、家電など複数事業の事業部長)→2019年にくふうカンパニー入社。
▶︎Zaim執行役員・志賀恭子さん
みずほ銀行(スタートアップを中心とした法人取引など)→国土交通省(出向)→2018年にくふうカンパニー入社。
▶︎Da Vinci Studio代表・吉川崇倫さん
サイバーエージェント(エンジニア)→クックパッド(開発基盤担当)→オウチーノ(CTO)→2018年にくふうカンパニー(CTO)。
※2023年度入社予定の新卒社員も数名決定
なぜ、経営経験の豊富なプロ人材ではなく、いわば素人を採用するのだろうか。
カカクコムやクックパッドなど複数の企業を上場に導いてきた穐田さんと、「未来の経営人材」として採用された立石美帆(たていし みほ)さんとの対談を通じて、経験にとらわれずに結果を残す若手人材の特徴を探っていく。
—— 経営経験のない人材をグループ会社の代表候補として採用するスタイルは、どのようにして誕生したのですか?
穐田 私の生きがいは、素晴らしいサービスを世に送り出すこと、そして優れた人材を輩出することにあります。
素晴らしいサービスが増え、優れた人材が活躍するようになると、社会は昨日より良くなっていきますから。初めて起業した1999年から、この思いは変わっていません。
また、自分とかかわったことで社会に大きな影響を与える人材が増えれば、それだけで毎日が楽しくなるじゃないですか。
「穐田さんには世話になったので、飯でもご馳走しますよ」という人が365人いれば、毎日おいしいご飯が食べられる(笑)。
社会にとって良いこと、そして、自分にとってうれしいことの2つを同時に満たしてくれます。
—— では、365人の経営人材を輩出することが、現在の目標に?
穐田 最初はそう思っていましたが、目標は100人に修正しました。毎日外食はきついですから(笑)。でも、100人だったら、3日にいっぺんくらいおいしいものが食べられる。
「友だち100人できるかな」じゃないですが、年の離れた経営者の友だちがたくさんいて、みんなで世界をどんどん良くしていって、毎日を楽しく一緒に過ごせる……そんな世界を実現させたい。
あえて経営経験のない人材を育てているのは、「優秀だけれど、経営に関与しない人」が多いと感じているからです。
日本には、経営者になり、社会を良くしていく能力を持っているけれど、それを発揮する機会を持たない人がたくさんいます。
経営者というと、特定の領域に大きな熱量を持つ人の仕事のように受け取られてしまう向きもありますが、それに限りません。
「社会の役に立ちたいと考えていて、その手段として経営をするだけの能力はあるが、手掛けたいテーマがないために経営していない」人だって、実は会社経営に向いているかもしれない。
そういった人たちに経営という手段を提供したいし、それこそが使命の1つだとも思っています。だから、新しく採用した人材にもグループ会社の経営を任せるようにしているのです。