来年春に卒業する大学生らの就職活動が3月から本格化(就活解禁)しました。
ミニ加湿器、モバイルバッテリー、スマホスタンド......。合同企業説明会に足を運ぶと、参加企業が「手土産」をあれこれ用意して就活生たちを呼び込んでいます。
これら就活応援グッズ、実は奥深い。コロナ禍を経た「2023年の就活」で、いまの学生たちの実像から企業の戦略、さらには心づかいまで垣間見えるのです。
損保大手の東京海上日動が配ったグッズは、なぜか、ヒノキの香りがしました。
来年春に卒業する大学生らの就職活動が3月から本格化(就活解禁)しました。
ミニ加湿器、モバイルバッテリー、スマホスタンド......。合同企業説明会に足を運ぶと、参加企業が「手土産」をあれこれ用意して就活生たちを呼び込んでいます。
これら就活応援グッズ、実は奥深い。コロナ禍を経た「2023年の就活」で、いまの学生たちの実像から企業の戦略、さらには心づかいまで垣間見えるのです。
損保大手の東京海上日動が配ったグッズは、なぜか、ヒノキの香りがしました。
「全員に加湿器プレゼント!!! 就活準備に潤い!」
東京ビックサイト(東京都江東区)で1日から開催された合同企業説明会「マイナビ就職EXPO」の一角で、明治安田生命はこう記したポスターを自社ブース前に掲げました。
用意したのは、小型加湿器です。USB接続タイプで、スイッチを入れて蒸気を実際に出してアピール。立ち寄った学生たちが手にとっていました。
「就活解禁日」に合わせて始まったこの説明会には、3日間で企業約520社が参加しました。初日に来場した学生の数は、およそ4千人。大にぎわいでした。
主催のマイナビによると、今年は企業の採用意欲がコロナ禍から回復して、高まっているそうです。学生優位の「売り手市場」と言われ、企業側は優秀な人材にエントリーしてもらえるよう動いています。
説明会の各ブースに山積みされたグッズの数々は、学生たちとの接点を持ちたい企業による「呼び水」の役割を果たしています。
こうした土産の数々で就活生が手一杯になる姿を見越してか、トートバッグを配布する企業もありました。いまの学生たちの心とニーズをキャッチできるか。“企業のPR戦略”が試され、見え隠れします。
対面による企業説明会は、実質3年ぶりです。
2020年以降の就活はコロナ禍で、オンラインによる説明会や面接試験が主流となりました。それが今年は「対面」が復活して、「オンライン」と使い分ける「ハイブリット型」になったことが大きな特徴です。
コロナ禍は企業配布の「就活応援グッズ」にも、変化をもたらしています。
東京海上日動はコロナ前、靴磨きや鏡、くしなどが入った「身だしなみセット」を配っていました。対面での面接がスタンダードだったためです。
それが3年前から、消毒スプレーに加えて、オンライン就活に役立ててほしいとスマホスタンドを就活生に贈っているといいます。
今年の会場には、ペアで計1000セット用意しました。
こうした手土産について、「各企業とも説明会のブースに来てもらうためのツールにしている面は否めません」と、人事企画部人材開発室の大神田浩由(おおかんだ・ひろよし)さんは、打ち明けます。
一方、「すべての学生を全力で応援したいという気持ちが、私たちの会社は強いです。だから就活生に役立つアイテムを選ぶよう心がけています」とも話します。
そんな思いで持ち込んだ消毒スプレーとスマホスタンドのペアセット。グッズの匂いに工夫を施しました。
ヒノキの香りです。
これは、ここ数年続いたオンライン採用で、大神田さんら社員の目からは、向き合う学生たちの様子が変わったためだといいます。
「対面よりも、さらに緊張している学生が多い印象です。就活は短期決戦で、不安を感じる学生も多いもの。少しでも緊張がほぐれ、リラックスしてもらいたいと、ヒノキの香りを楽しめるようにしました。就活の励みになってくれたら、とても嬉しいです」
会場で人気を集めていたグッズの一つが、モバイルバッテリーです。
スマートフォンを約1回分、充電できる製品を企業ロゴの入ったパッケージで配布していたのは三菱重工。昨年に会場で配布したステンレスボトルから、入れ替えました。
「スマホは今の就活には必須なので、モバイルバッテリーはけっこう喜ばれています。実はこれ、社内の若手社員からアンケートを取って選びました」
三菱重工HR戦略部の福岡祐一さんが、舞台裏を明かしてくれました。
合同説明会を主催したマイナビの高橋誠人編集長によると、対面開催のメリットは各企業の社員の熱意や雰囲気、社風などを感じられる点だといいます。学生たちは就活グッズとの偶然の出合いから、相性をみてみるのも良いかもしれません。
(取材・撮影:比嘉太一、編集:野上英文)