【カーネギー】不朽の名著『人を動かす』で、交渉力やマネジメント力を鍛える

2021年5月19日(水)

『人を動かす』の要約

1936年に創元社から出版され、自己啓発書の原点と称される不朽の名著『人を動かす』。

著者でアメリカの教育家であるデール・カーネギーは、自分が変わることを起点とした問題解決論を記した自己啓発本『道は開ける』の著者でもあり、文庫版も出ている。

本書は全四部で構成され、「人を動かす三原則」をはじめとして、「人に好かれる三原則」「人を説得する十二原則」「人を変える四原則」という原則を元に相手にモチベーション高く動いてもらうための方法が説明される。

下の要約記事によると、人を動かすには、人が欲しがっているものを与えることが重要だとある。具体例として、アメリカで「鉄鋼王」と呼ばれた実業家のアンドリュー・カーネギーが、U・S・スチール社の設立時に社長に迎えたチャールズ・シュワッブという人物の話を取り上げている。

【名著に学ぶ】どうすれば、人を「動かせる」のか

シュワップは人扱いの名人として知られ、「他人の長所を伸ばすには、褒めることと、励ますことが何よりの方法だ。上役から叱られることほど、向上心を害するものはない。私は決して人を非難しない。人を働かせるには奨励が必要だと信じている」と述べていたそうだ。

このように、相手の立場に身を置き、その視点から自分の行動を見つめ直すことが必要となってくる。

では、本書の教えは仕事にどう生かせるのか。JobPicksのロールモデルの中で、おすすめ本として『人を動かす』を挙げている人たちのコメントから、具体例を読み解いていく(注:ロールモデルの肩書などは、全て本人が投稿した時点の情報)。

『人を動かす』をビジネスに役立てる方法とは

営業や交渉など、社内外で多くの人とのコミュニケーションが生まれる仕事・職業にとって、本書は大きく役立つものになるだろう。

商社パーソンもその一例だ。

2010年から丸紅で商社パーソンとして活躍する中村裕之さんは、複数の部署への異動を経験した。その際、商社パーソンとしてどの部署においても必要だと感じた共通の力が「人を動かす能力」だった。

人を動かす

入社してから10年間は資源系(石炭)の部署にいました。最初の3年間はプロジェクト部隊、その後炭鉱での実務研修を半年挟み、6年半はトレード部隊でした。その10年間は、本当に石炭という商材が仕事の中心にあって、とにかく石炭についてとことん詳しくなることが仕事で活躍するための鍵でした。 一方で、11年目

営業部署でもコーポレート部署でも同じように、目の前の相手に自分が望む形で動いてもらうこと、そして自分のファンになってもらうことが重要であり、『人を動かす』にもあるコミュニケーションの原則が役立つようだ。

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チームを導くリーダーにも必須の内容

人を動かす能力の重要さは、必ずしも顧客相手にだけかかわる話ではない。チームで事業をつくり上げる際のマネジメントにも必要な能力である。

人材の「企業間レンタル移籍」というユニークな事業を手掛けるローンディールのCEO(最高経営責任者)原田未来さんも、起業前に勤めていた会社でチームマネジメントに悩んだ時、『人を動かす』を読んでコミュニケーションのスタイルを学んだという。

人を動かす

新卒で入社した会社で初めてマネージメントになり、うまくチームを導くことができずに生きず待った時に読みました。今でも定期的に読み返します。事業は一人でできるものではありません。どうやってみんなで何かを作っていくか、それは組織の中の人も、外の人も、巻き込んで、仲間になってもらう必要があります。基本的なコ

原田さんのコメントに「うまくチームを導くことができずに行き詰った時に読んだ」とあるように、CEOやリーダーといった、チームをまとめる立場の人にとって、組織の中や外の人を巻き込み、仲間にするために『人を動かす』が役立つようだ。

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「人を動かす三原則」で相手との関係性を構築する

コミュニティマネージャー広報・PRの仕事にも活かせると述べているロールモデルもいた。

コミュニティマネージャーとはコミュニティを組成して、新たな価値を生み出す職業だ。相手やコミュニティ内にいる人たちそれぞれの立場を日常的に考える必要がある。

国際基督教大学教養学部アーツ・サイエンス学科を卒業した後、新卒でユニクロに入社した菅江美津穂さんは、店長とコミュニティマネージャーの経験を結び付け、どちらの経験においても自分のスタンスを確立する上で『人を動かす』が役立ったという。

「人を動かす」

元々新卒ではアパレル企業に勤めており、店舗の店長をしておりました。 その時に読んだ本でしたが、本質的な仕事としては店長とコミュニティマネージャは近いなと感じています。 この本は、四部に分かれており第一部「人を動かす三原則」第二部「人に好かれる三原則」 第三部「人を説得する十二原則」第四部「人を変える九原則」です。 コミュニティのあり方、を考える書籍もたくさんある中で、私自身は自分の行動の仕方、人との向き合い方を考えるにあたって、スタンスがすごく学べたなと思います。

菅江さんは、本書の第一部「人を動かす三原則」から第四部「人を変える九原則」を通して、人との向き合い方や自分の行動の仕方を学び、コミュニティマネージャーの仕事に役立てたそうだ。

広報・PRにも役立つとコメントしていたロールモデルは、広報として複数の企業で働くパラレルワーカーの日比谷尚武さんだ。

PRという単語はPublic Relationsの略でもあるように、「社会の人々」とコミュニケーションをしながら信頼を構築することが求められる。常に1対多数のコミュニケーションが発生する仕事だからこそ、日比谷さんは『人を動かす』を推薦している。

人を動かす

あらゆるステークホルダーと関係構築をするにあたり、まずは相手の気持ちを知り、どのように自分の主張し、合意形成をするかが求められます。その意味で、広報のテクニックよりも先に学んでいただきたい内容が詰まっております。

日比谷さんのコメントを読むと、広報の技術を学ぶ前提にあるステークホルダーとの関係構築にあたり、合意形成していく力を本書を通して学ぶことができるのだろう。

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文:平野佑樹、編集・デザイン:伊藤健吾、バナーフォーマット作成:國弘朋佳