未経験転職を成功させるポイントは?転職成功者5名の本音アドバイス
2022年5月23日(月)
コロナ禍に端を発する労働環境の劇的な変化により、転職やジョブチェンジを検討した人が少なくないと聞く。
事実、マイナビ発表の「転職動向調査2022年版」によると、2021年の正社員の転職率は過去6年間で最も高い結果となっている。
転職にネガティブなニュアンスがあった数年前とは違って、転職回数の多さが不利に働くことは少なくなった。転職によってキャリアアップを目指す人が増えているのも、こうした風潮を後押ししているのだろう。
【村上臣】望み通りのキャリアが手に入る「転職2.0」とはとはいえ、多くのビジネスパーソンにとって、キャリアアップにつながる転職は簡単なものではない。特に未経験の分野にチャレンジしようとする場合は、「実務経験がない」という障壁が必ず付きまとうため、転職活動は難航するのが現実だ。
かといって、それを理由にあきらめるのはまだ早い。これまでJobPicksで取材をしたロールモデルには、“実務未経験の壁”を自ら破り、転職を成功させ、新しい職能を発揮して活躍している人が数多くいる。
本記事では、自分なりの方法で未経験転職を成功させたロールモデルに焦点を当て、新しい職能を手に入れるための方法を探っていく。転職成功者が自ら語る「転職のポイント」に、耳を傾けてみよう。
VRベンチャーのジョリーグットでビジネスプロデューサーとして活躍する黒崎由華さんは、ジュエリーデザイナーからエンジニアに転職した過去を持つ。
専門職への転職ということもあり、実務未経験なのがネックだったが、SNSを活用することで機会を開いたという。
独学でコーディングスキルを習得し、その過程をTwitterで発信し続けたところ、「Udemyのコンテンツが参考になりますよ」「この書籍が参考になりますよ」と経験者からアドバイスをもらえるようになり、それらを活用して未経験での転職を成功させた。

SNSを活用して5職種マスター、20代で実現する変幻自在キャリア
ITについての知見もなく、当然のようにコードも書けなかった黒崎さんは、なぜ転職を成功させられたのか。理由を尋ねると、「心が躍る選択肢を選んだから」と振り返る。
「好きこそ物の上手なれ」というように、物事が成就する最大の要因は、好奇心だと思います。好奇心があったからこそ、自分で調べて、自分で学んで、自発的な発信ができていたんです。
「周囲がお勧めしているから」「トレンドの職業だから」という理由でジョブチェンジしたとしても、その先で苦労してしまうはずなので、やはり好奇心が湧かない選択をするのは望ましくないと思います。
未経験でWebデザイナーに転職したNONAME Produceの千崎杏菜さんは、“未経験ならではの戦い方”でポートフォリオを作成したことが、転職成功の鍵になったと語る。
クリエイター向けの転職サポートを仕事にしていたこともあり、「経歴よりもポートフォリオ(作品集)が重要だ」ということが分かっていた千崎さん。
また、デザイナーは「センスがモノをいうアーティスティックな職業」ではなく、むしろ「ロジックに基づく緻密さこそが価値になる職業」だということも肌感覚として理解していたため、「思考のプロセス」を明確に示せるようポートフォリオを作成した。
利用していた転職エージェントからは、「未経験にしては(履歴書の)書類通過率が非常に高い」という評価をもらっていたそうだ。

【大胆チェンジ】非・美大からデザイナーになる戦略的転職プラン
千崎さんは現在、Twitterのフォロワーが1万6000人を超える人気デザイナーとなった。ディレクターからデザイナーへと転身したキャリアを振り返り、「転職を検討する際は、目的と手段を混同しないことが大切」だと語る。
デザイナーに憧れている場合、デザイナーを名乗って、クラウドソーシングサービスで案件を獲得すれば、その時点でデザイナーにはなれると思います。
でも、「デザイナーに憧れている」の本意は、「その道で活躍すること」かもしれません。
その場合、安易に転職や独立をしてしまうと、次第に自分の身を削ることになり、きっと苦しくなってしまうはずです。
プライベートで経験を積み、それを転職に生かすというのも選択肢だ。
マンガ事業を中心としたエンタメベンチャーのエコーズでプロデューサーを務める笠松愛さんは、新卒で生命保険会社に就職し、営業職をしていた。
しかし、知人と映画をつくるプロジェクトを立ち上げたことがきっかけで、ブシロードに転職。業界・職種ともに未経験ながら、エンタメ業界のプロデューサーにジョブチェンジを果たした。

【逆転】30社お見送り、早期離職の私が、映画プロデューサーになるまで
自身のキャリアを振り返ると、「人に会って相談する」こと、「やりたいことに挑戦する」こと、「経験を自分の言葉で伝える」こと、そして「自分を棚卸しする」ことのサイクルを回していくのが大切だったと笠松さん。
転職の方法は、転職エージェントを活用する以外にもたくさんある。笠松さんのように、身近な誰かに相談したり、本業とは関係のないプロジェクトを立ち上げたりするのも、未経験の壁を突破する一手になり得るだろう。
テレビ朝日のアナウンサーからフラワーアーティストに転身し、現在は自身で会社を経営する前田有紀さんは、転職をする以前に“修業経験”を積んでいる。
「人の暮らしの中で、花と緑をもっと身近にしたい」という思いから、イギリスに留学してガーデナーのインターンを経験。帰国後に都内の花屋で修業し、経験を十分に積んだタイミングで独立した。
注目すべきは、本職がある状態で、少しずつ転職の準備をしていたこと。花について無知だったこともあり、部屋に飾る花を増やしたり、友人の開く教室へ花を習いに行ったりするなど、小さなアクションを取り続けていたのだという。
【前田有紀】元テレ朝アナが見つけた、社会軸より自分軸の生き方
前田さんは、自身の転職経験を振り返り、以下のような発言を残している。
(天職を見つけるには)自分の「好き」に、とことん向き合うことだと思います。
社会軸で見る正解と、自分軸で見る正解は違うものです。私のキャリアを振り返ると、「テレビ朝日のアナウンサーを辞めるなんて、もったいない」と思われた方もいたと思います。
でも、自分の感覚は違いました。「もし花の仕事で食べていけたら、それ以上に幸せなことはない」と思っていたんです。もちろん不安はありましたが、今では当時の夢をかなえられています。
未経験の仕事に挑戦したいと思っても、「現実的ではない」という理由から、変化をあきらめてしまう人がほとんどだ。
しかし、一足飛びでのキャリアチェンジにこだわる必要はない。前田さんのように、一度は収入を下げてでも、正しい準備をすれば、機会は自ずと開かれるはずだ。
28歳で6職種を経験し、会社員とフリーランスを行き来するなど、変幻自在なキャリアを歩むnoteの高越温子さんの経験談も参考になる。
新卒でリクルートに入社すると、法人営業、営業企画、サービス企画の3職種を経験。その後、フリーランスとして独立した。
独立後は未経験のマーケティングやPRを独自に展開するなど、会社員時代に引き続き職域を広げる挑戦をしていたそうだ。
当時から変わらない仕事のテーマは、「埋もれた原石の発掘」。雇用形態にこだわりはなく、職業観に合う仕事を続けることを大切にしてきたという。
キャリアを模索する中でたどり着いたnoteは、自身がユーザーであり、「世間が知らない価値を広げていくことができる」と確信できたことが、転職の決め手になったそうだ。

【変幻自在】28歳で6職種を経験、note事業開発が見つけた専門性の増やし方
高越さんはここでも、未経験転職を経験する。事業開発職の求人を見つけるも、自身にその経験はなかった。しかし、キャリアを遡り「近しい経験」を探し、実績をアピール。
加えて、経験不足を補うために、「一次面接に勝手に提案書を作って持っていった」そうだ。
正面突破が難しいのなら、高越さんのように工夫を凝らすことで、面接をクリアできる可能性もある。
「求人票の内容と自分の実績が合致していないからといって、必ずしも内定がもらえないわけではない」ということは覚えておきたい。
高越さんは、自分だけの力でなく、周囲にサポートを求めることも重要だと付け加える。
周りに助けを求めるのも大切です。
仕事は、一人でできることより、一人でできないことの方が多いものです。 自分ができないことは、一人でなんとかしようとせず、周囲の助けを得る。
そのスタンスを失わずに仕事をしていれば、困難も乗り越えられるはずです。
メンバーシップ型からジョブ型への雇用体系の変化、リモートワークの普及、勢いを増すDX——。
ミドル層のリスキリング(今後新たに発生する業種や職種に順応するための知識やスキルを習得すること)が話題になりつつあるが、今後は20代や30代であっても、新しいスキルを身に付ける技術が確実に求められるだろう。
労働環境が劇的に変化する現代において、過去の経験や学びをいったん手放し、新しいスキルや知識、価値観をつかみ取ることは、もはやビジネスパーソンの必須教養。
キャリアに閉塞感を抱いたのなら、小さな改善を積み重ねるだけでなく、大胆なキャリアチェンジを模索してみることを、選択肢の一つにカウントしてみてはいかがだろうか。

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