代わり映えしない毎日に退屈して、通勤中に「全く違う仕事をしている自分」の姿を空想する——。
単調な日々の繰り返しに退屈し、漫然と過ぎていく毎日を抜け出そうと、キャリアチェンジを考えた経験のある人は少なくないだろう。
しかし、現実的ではないという理由から、変化をあきらめてしまう人がほとんどだ。
ただ、大胆なキャリアチェンジは、あなたの人生をポジティブな方向へと導く可能性を秘めている。
ブシロードの笠松愛(かさまつ あい)さんは、「自分に合っていなかった」保険営業の仕事を1年で退職し、営業事務と社会人サークル発起人の“二足のわらじ”スタイルにワークスタイルを変更。
150人の仲間を集めて映画を製作し、エンタメ業界で活躍するプロデューサーへと転身した。
「アクティブに頑張れず、誇れるような特技を持たなかった」笠松さんは、いかにして自分の居場所を見つけたのか。
やりたいことを見つけ、生き生きと働くためのヒントを探る。
—— 映像編集の経験ゼロで、未経験者が映画・動画制作を楽しめるコミュニティ「ゼロからはじめる映画研究会(以下、ゼロ研)」を立ち上げたと聞きました。どのような経緯があったのですか?
アクティブに頑張れない自分が変わる転機となったのが、ゼロ研の立ち上げでした。
私はもともと、人と話すことが苦手なタイプです。
学生時代に目立つような実績を残すこともなく、何か誇れるような特技もなかったので、就職活動では苦労しました。
実際、30社ほどの会社から“お見送り”をされています。
新卒で入社した大手生命保険会社は、とにかく数を受けた結果、たまたま内定をいただいた会社です。
配属されたのは、営業職。
特にやりたい仕事だったわけではありませんが、職業のイメージから、「コミュニケーション下手な自分から変われるのではないか」という期待がありました。
しかし、環境が変わったくらいで、そう簡単に自分自身が変わることはありませんでした。
相変わらず人と話すことは苦手で、成果も伸び悩み、体力的にもしんどい日々が続きました。
—— そんな自分を変えようと、映像の世界に飛び込んだ?
いえ、実はまだ経緯があります。
まず、変化のきっかけになったのは、私が担当していたお客様の言葉です。
「人と話すことが苦手で、自分を変えたいです」と正直に伝えたところ、「もっと場数を踏んだほうがいいよ」とアドバイスをいただき、同僚や知人の飲み会に誘ってくれるようになりました。
彼女を通じて出会った人の中には、私の知らない職業の方がたくさんいました。
派遣社員の方、個人事業主の方、起業家の方……。「正社員の営業職」としてしか働いたことのない私にとって、どの方の話も新鮮でした。
「自分の知っている世界はこんなに狭いのか」と気付かされ、だんだん人と話すことが楽しくなってきました。
—— 「人と話すことが苦手な自分」から変化できたのですね。
ただ、コミュニケーションの楽しさを知ったからこそ、仕事での会話に心苦しさを感じるようにもなりました。
お客様の助けになりたいと思っても、やはり自社商品以外には提供できるソリューションがありません。
無理に自社商品を勧める気にはなれず、売り上げを上げる先輩社員や同期と自分を比較すると、私に保険営業の適性があるとは思えませんでした。
—— そのタイミングで、転職を決意した?
現在の仕事に適性がないと知ったこと、そして、自分の知らない世界を知ったことで、「本当にやりたいことを探してもいいのではないか」と考え始めたんです。
よく言われる「3年は頑張ったほうがいい」という言葉が頭をよぎりましたが、自分に合わないことを無理に続ける必要はないと考え直し、就職してから1年で退職を決意しました。