【変幻自在】28歳で6職種を経験、note事業開発が見つけた専門性の増やし方
2021年4月16日(金)
法人向けサービス「note pro」の、マーケティングを担当しています。
広告配信やイベントの開催を通じてリード(note proに興味のある方の問い合わせ)を獲得し、受注を担当するセールスチームにバトンを渡すのが仕事です。
「どれくらいの予算で」「どれくらいのリードを獲得し」「そのうち何パーセントをセールスチームにつなぐか」を計画し、業務を進めていきます。
いえ、ファーストキャリアはリクルートキャリア(現・リクルート)の法人営業です。
学生時代にブライダル関係のアルバイトをしていたのですが、そこで経験した後輩の育成や人材配置にやりがいを感じており、「もっと組織のことを深く知りたい」と、第一志望で入社しました。
最初は人材紹介の営業職として、転職希望者の紹介をしていました。
塾やデパートなど、よくお客様の現場に足を運んでサービスを観察し、「どんな人を採用するといいのか」を想像していました。
「いろんな企業や組織を学びたい」という入社動機がかなえられる仕事でしたし、やりがいもありました。
特に印象に残っているのが、自分の提案で役に立てた経験です。
「100人面接して、1人採用できるかどうか」という、営業職の採用に苦戦しているお客様を引き継いだときのこと。
過去の資料やデータを全部見直し、入社後に活躍している方の共通点を探すと、「営業経験は重要ではない」ということに気がつきました。
そこで、「学生時代の部活動など、何かをやり遂げた経験に着目し、ポテンシャルを重視して面接するのはどうか?」と提案します。
最初は受け入れてもらえませんでしたが、エビデンスを頼りに何度も提案をしたところ、最終的には「10人面接して、1人採用できる」状態になり、採用率は10倍になりました。
お客様には「高越さんに担当してもらえてよかった」と言っていただくことができ、介在価値を感じられて本当にうれしかったです。
それ以来、「事実を根拠に課題を解決する仕事」に強い興味を持ち、営業企画職にジョブチェンジ。
リクルートでは、法人営業、営業企画、サービス企画と、3つの職業を経験しました。
入社4年目の春に、父が他界したのです。
父とはずっと会っていなくて、「そろそろ会いにいかないと」と思っているうちに、本当に突然、亡くなってしまいました。
仕事の忙しさを理由に父と向き合おうとしなかったことを、心底後悔しました。
そして同時に、まだ生きている家族に対して、同じ後悔をしたくないと感じました。
私の母は東京に住んでいますが、祖父母は富山に暮らしています。
どちらとの時間も大切に過ごすために、東京と富山で2拠点生活をすることに決めました。
当時は今ほどリモートワークが主流ではなかったですし、これまで通り仕事を続けたら自分の中での優先順位は変えられないと思い、会社員を辞めてフリーランスになりました。
会社に不満があって辞めたというよりも、ライフスタイルを変えるための選択です。
怖さはありましたが、迷いはなかったです。
父が経営者だったこともあり、「いつかは私も独立するかもしれない」という気持ちがあったので、1年間収入がなくても食べていけるくらいのお金はためていました。
「1年だけなら、稼げなくても生きていける」という安心感があったので、お金よりもライフスタイルを優先する決断ができました。
独立してからは、フィンランド語でシャベルを意味する「Lapio(ラピオ)」を屋号に、「埋もれた原石の発掘」をコンセプトに掲げ、マーケティングやPRの支援をしていました。
リクルートで働いていたときに、まだ世の中に価値を知られていない企業や人、サービスの魅力を引き出し、広めていく瞬間に、心からやりがいを感じていたからです。
具体例を挙げると、「泊まれる資料館」の立ち上げや、富山の魅力を届けるイベントの企画運営などです。
ありがたいことに、リクルートの先輩や友人が「急にフリーになっても仕事ないでしょ」と仕事をくださり、初めてのフリーランスでも生活することができました。
「仕事のありがたみが分かった」のは、貴重な経験でした。
独立する以前は、「自分がなぜこれをやっているのか」、「何の役に立つのか」を理解しなくても仕事は与えられるし、目の前のことをやり続ければ、営業成績が上がりました。
しかしフリーランスは、自分で動かなければ、なにも始まりません。
やったことの対価として直接お金をいただける経験も初めてで、「こんな自分でも役に立って、お金をいただけるのだ」と実感できました。
そしてなにより、家族とたくさんの時間を過ごせました。
フリーランスとして働いた経験は、「仕事を夢中で追いかける時期も、生活を大事にする時期も、どちらもキャリアなのだ」と教えてくれました。
フリーランスになって1年が過ぎたとき、一人でやれることの限界値が見えてしまったのです。
目の前のお客様が困っていても、私の知識だけでは、十分に価値貢献できないシーンを何度も経験しました。
もしチームであれば、メンバーの知見を合わせ、もっと役立てるはず——。会社員として働いていたときの記憶がよみがえってきました。
また、一人で仕事をするのが、寂しいと感じるようにもなっていました。
所属する特定の組織はなく、やり取りする相手も日によってバラバラです。
それが面白いところでもあるのですが、私の場合はとても孤独に感じていました。
しかし、「埋もれた原石の発掘」というコンセプトに思いを込めて働いていたので、いきなりそこから大きく外れる仕事をする気持ちにはなれません。
そんな折、ふと思い出したのが「note」でした。
私は「note」のクリエイターで、フリーランスになってから、仕事にかける思いをつづっていました。
なんでも書ける真っ白な場所に、自分の思いを乗せていくのが好きだったのです。
私の書いた記事を読んだ友人が、「一緒に仕事をやろう」と誘ってくれたこともあり、救われた経験もあります。
noteは、誰でも発信することができるサービスであり、まだ世間が知らない価値を広げていくことができます。
自分が大好きなサービスであり、なおかつ大切にしたい価値観を共有できる。「転職するならnoteしかない」と、他社は選択肢に入れず転職活動をしました。
noteに入社するか、フリーランスを続けるかの2択でした。求人を検索して見つけたのが、「note」の事業開発職です。
聞き慣れない職種でしたが、よく募集要項を読むと、サービス企画で採用管理ツールを立ち上げた経験と近しい業務もありました。
全く経験がなかったのは、アライアンス(企業同士の業務提携)の仕事です。企業間の商談に出たことがなく、想像もつきませんでした。
それでも企画系のキャリアは続けていきたかったので、ダメ元でカジュアル面談に応募しました。
経験が不足している分、一次面接には勝手に提案書を作って持っていきました(笑)。
私が思う「note pro」の課題や、入社してからやりたいことを、1枚の資料にまとめて話をしたのです。
当時のビジネスチーム(事業開発)は、執行役員とリーダーの2名しかいませんでした。
「note pro」のグロース施策を考えたり、協業のお話に対応したりする人員が全く足りず、「法人サービスも伸ばしたいけれど、手をつける暇もない」という状況です。
そんな背景もあり、「note proがより法人クリエイターの方々に選ばれるために、必要なことはなんでもやる」のが私のミッションでした。
業務内容は多岐にわたり、「note pro」の活用方法を提案するセミナーやイベントを開催するほか、市場調査、データ分析、新機能の検討・顧客ヒアリング、協業先との商談、さらには問い合わせが来た際の業務フローの設計まで担当しました。
フリーランス時代の経験が、ダイレクトに生きたと思っています。
事業開発の仕事では、まだやる方向性が決まっていないものを先頭を切って進めていくことが求められます。
それが、フリーランス時代の感覚と近しかったのです。
もともと飽き性なのですが、事業開発の仕事は、毎週どころか毎日のように業務内容が変わります。
私の性格にぴったりの仕事でした。
事業開発を担当していたときから、セミナーを起点としたリード獲得の仕事が多く、今思えば当時からマーケティングにかかわっていました。
「CPA(Cost per action)」や「CPC(Cost Per Click)」といった専門用語が全く分からず、「いったいアルファベット3文字がどれくらい出てくるんだろう?」と戸惑いましたが、ひたすら調べていくうちに楽しくなってきて、マーケティングチームが発足されるタイミングで、異動することになりました。
もちろんです。
現在は法人向けのイベント企画・運営を担当していて、このイベントはクリエイターやお客様の表舞台だと思っています。
フリーランス時代の屋号に込めた「埋もれた原石を発掘したい」という気持ちを、まさに体現する仕事です。
これからもっと「note pro」の認知を広げることで、法人の魅力を最大限に引き出すステージをつくり続けたいと思っています。
自分で限界を決めずに、キャリアを選択してほしいと思っています。
どんな経験も無駄にはならないですし、一見回り道に思えることが、あとでやりたいことにつながることもあります。
「やったことはないけれど楽しそう」とか、「ちょっと挑戦してみたいな」とか、そんな気持ちを素直に大事にしてください。
あとは、周りに助けを求めるのも大切です。
仕事は、一人でできることより、一人でできないことの方が多いものです。
自分ができないことは、一人でなんとかしようとせず、周囲の助けを得る。
そのスタンスを失わずに仕事をしていれば、困難も乗り越えられるはずです。
新しい世界はとても楽しく、学ぶことばかりです。
挑戦したいことがあるなら、「やったことがないから」と諦めずに、自分の心がワクワクする方に向かって、どんどん手を挙げてチャレンジしてほしいと思います。
【深津貴之】noteは、クリエイターの「連鎖」を生み出していく
取材:佐藤留美、取材・構成:岡田菜子、編集:オバラミツフミ、撮影:高越温子(本人提供)