【読書】未経験転職者に贈る、人気職種の基本がわかる「最初の一冊」
2022年12月23日(金)
2022年も、残すところわずか——。皆さんにとって、今年はどのような1年だっただろうか。
年の瀬になると考えたくなるのが、来る年の過ごし方だ。「新しいことに挑戦してみよう」「やりたかったことを始めてみよう」。そんなふうに、未来の自分を妄想している人も少なくないはずだ。
新たな挑戦として、ジョブチェンジを視野に入れている人も多いだろう。ただ、キャリアの半ばで転職や職業変更をしたくても、どのようなアプローチを取ればいいのか分からないケースが多々ある。
そこでJobPicks編集部は、「ジョブチェンジを目指す上で最初に読むべき一冊」を、過去記事やロールモデル投稿から集めてみた。
本記事で取り上げるのは、法人営業、デザイナー、マーケター、コンサルタントの人気4職種。
ロールモデルたちの声を、新しいフィールドでの活躍するための「最初の一歩」にしてほしい。
まずは、就労人口の多い、法人営業への転職を目指す人が読むべき「最初の一冊」を紹介しよう。
LINEやメルカリで法人営業を務めてきた杉本浩一さんが推薦するのは、デール・カーネギーによる『セールス・アドバンテージ』(創元社)だ。
杉本さんは「#ザ法人営業」と題して営業職のやりがいを発信をしているが、新卒時は「営業だけはやりたくない」と考えていたそうだ。
しかし、入社1年目に配属されたのは、奇しくも営業職。わらにもすがる思いで手に取ったのが本書だった。
本書では、「信頼感なしにはどんなに商品が優れていても受注が困難である」といった営業の根本原理が営業職に求められるマインドセットが紹介されている。
杉本さんによると、このような根本原理は、営業に限らず社会人が実践すべきスキルだという。新社会人や就活生は、一度手に取ってみることをお勧めする。

LINEで大型提携を連発、「法人営業の匠」を育てた5冊
キーエンスとSansanで法人営業を経験し、現在はSALESCORE(旧社名:Buff)のSaaS事業部でRevenue責任者を務める野村幸裕さんが推薦するのは、『影響力の武器』(誠信書房)。
野村さんは、本書を『営業のバイブル』だと力説している。
営業のバイブルのような本です。 お客様の心を動かし購入頂くための原理
法人営業とはいっても、営業相手は「人」。お客様の心を動かせずして、契約を結ぶことは不可能だ。営業職を目指すのであれば、まずは人の心を動かすための原理原則を学んでみよう。
野村さんには、法人営業という仕事をくまなく解説していただいたインタビューも実施している。あわせてチェックしてみてほしい。

営業職はきつい仕事?仕事内容や将来役立つスキル、経験をプロが解説
次に紹介するのは、デザイナーを目指す人が読むべき「最初の一冊」だ。
デザイナーというと、デザインに興味があっても、「才能がないと無理」だと思っている人も多いのではないだろうか。
しかし、諦める必要はない。
出張撮影サービス「ラブグラフ」でCCO(最高クリエイティブ責任者)を務めている村田あつみさんは、「(デザインにおいて)平凡さとは、天才が絶対に持てない、最強の武器」だと語る。
彼女も一般大学に所属中、デザインを独学で習得した「天才ではない一人」なのだそう。
では、デザイナーを目指す人は最初に何をすべきなのだろうか。
村田さんは、PhotoshopやIllustratorといったツールに触れる前に、「デザインの基礎を徹底的に学ぶべきだ」と語る。
サッカーボールを蹴ったことがないのに、Jリーガーの正確なパス回しを見ても、そのすごみは理解できないですよね。
デザインも全く同じで、基礎が曖昧な状態では、良いデザインと悪いデザインの差が理解できません。つまり、デザイナーとしてステップアップするために自分自身に欠けている要素を、見極められないのです。
村田さんはデザインの基礎を学ぶための入門書として、『なるほどデザイン』(エムディエヌコーポレーション)を挙げている。
この本に書かれているのは、サッカーでいうドリブルの仕方。つまりは「基礎中の基礎」です。
初めてデザインに触れる人にとっては、「デザイン=装飾」のイメージがあるかもしれません。でも実は、服をTPOに合わせて選ぶように、デザインも目的に応じた使い分けが必須。それを体感できるのが『なるほどデザイン』です。
本に出てくる例を1つ引用し、説明してみましょう。
例えば、雑誌で料理の特集ページを作るとします。レシピを一番の見どころにしたいなら、文字組みがきれいで読みやすさ重視のデザインにするし、料理の写真で読者の感性を揺さぶりたいなら、文字よりも写真の見せ方を優先する必要があります。
つまり、主として伝えたい内容に応じて、デザインの正解は変化するのです。
「甘さを連想させるのはこんな色」「臨場感を感じさせたいならこんな写真を選ぶ」など、たくさんの事例が分かりやすい説明とともに紹介されているので、本のタイトル通り「なるほど!」と、目で楽しみながらデザインの基本を感じとることができます。
村田さんには、過去のインタビューで、さらに五冊のお勧め書籍を紹介してもらっている。デザイナーを目指す方は、ぜひ記事にも目を通してほしい。

人気デザイナー直伝「私が素人からプロを目指して学んだスゴ本」5選
続いて、人気の高いマーケターを目指す人へのお勧め本を紹介しよう。
マーケティングエージェンシー・DIGITALIFTの取締役であり、現役のマーケターでもある鹿熊亮甫さんは、『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)を推薦している。
本書では、地頭力を「仮説思考力」「フレームワーク思考力」「抽象化思考力」の三要素に分けて解説している。鹿熊さんによれば、それらの中でも「仮説思考力」がとりわけ必須の能力になるそうだ。
マーケターの役割は、新しい市場をつくることだったり、存在する市場の中で新しい売り上げをつくることだったりするのですが、いずれにせよ未知の領域で成果を上げなければいけません。
そのためには、限られた情報で仮説を構築し、スピーディーに検証を続けていく必要があります。何が正解かは誰もわからないので、“正解らしきもの”を早期に見つけ、試行錯誤しながら本当の正解にたどり着くのが鉄則です。
鹿熊さんによれば、「未知の領域で成果を上げる」というマーケターの責務を果たすには、高速で仮説検証を繰り返していく必要がある。
そのうえで、立てた仮説の「鋭さ」によって、一流のマーケターとそれ以外がふるいにかけられていくそうだ。
鋭い仮説とは、いわば「気づいている人がほとんどいない、大切な真実」にたどり着くための、オリジナルな仮説だ。
常識的なイシューを設定しても、何も新しい価値を生み出すことはできません。他人と同じことばかりしていても、ビジネスの世界で生き残ることはできないのです。
鹿熊さんには、過去のインタビューで、さらに四冊のお勧め書籍を紹介してもらっている。マーケターを目指す方は、ぜひ記事にも目を通してほしい。

「論理と直感のかけ算が重要」マーケターに翼を授ける5つの書籍
最後に、難関とされるコンサルタントを目指す人へのお勧め本を紹介しよう。
A.T. カーニーに勤務した経験を持つ杉野幹人さんは『ロジカルシンキング』(東洋経済新報社)を推薦している。
ロジカルシンキングの重要性は、ビジネスパーソンであれば誰もが知るところ。しかし、本当の意味でロジカルシンキングができている人は、そう多くない。
よく、ロジカルシンキングは、もうコモディティだ、ロジカルシンキングは誰がやっても同じで同じ答えしか出ない、と言われます。 しかし、世の中で、ロジカルシンキングができている人はどれだけいるのでしょうか。 本当に、ロジカルシンキングは、誰がやっても同じ答えなのでしょうか。 ロジカルシンキングで導かれる答えは、人によって違います。 ロジカルシンキングは、パソコンのOSのようなものです。 みんなが使えますが、同じOSを使ったところで、アウトプットとして出てくる資料は人それぞれで異なります。 資料のインプットとして使う情報は、人それぞれですから、同じプロセスをしても、出てくる資料のアウトプットは人それぞれです。 ただ、パソコンのOSが使えないと、それらの資料をつくるのに非効率で苦労したであろうことはだけはみんなに共通。 ロジカルシンキングは、プロセスの技術に過ぎません。 同じプロセスの技術を使っても、インプットが違えば、アウトプットは変わります。 なので、ロジカルシンキングは、誰がやっても同じアウトプットになるというのは、間違いです。 そして、ロジカルシンキングという効率的な技術を使わないのは、わざわざ生産性を放棄する以外のなにものでもありません。 では、ロジカルシンキングはコモディティでしょうか。 コモディティが誰もができなくてはいけないもの、を指すのであれば、そのとおりです。 誰もができなくてはいけないものなので、決して、できなくてよいものではありません。 とっととできるようになり、人と話したり、ニュースを見たり、本を読んだり、自分ならではの多様なインプットを持つことに力を注ぐべきです。 ロジカルシンキングを軽んじて、非効率に仕事をしていると、インプットに、そして、その影響を受けてアウトプットにも力を注げず、満足の成果に辿り着きません。 ロジカルシンキングは、仕事を効率的にしてくれます。 ロジカルシンキングは、それ自体では差別化をもたらしませんが、差別化に力をとっとと注ぐためにも必要です。 経営コンサルタントは、膨大なインプットと、クライアントの経営イシューの解決のために、速やかなアウトプットが必要です。 このため、ロジカルシンキングで効率的に仕事をしていくことは、不可欠です。 照屋華子さんと岡田恵子さんの『ロジカルシンキング』は、多くの外資系経営コンサルティングファームの経営コンサルタントがお世話になった、経営コンサルタントへの就職や転職を考えている方、そして、新人の経営コンサルタントにとっての必読書だと思います。
日本IBMのコンサルティング事業部でパートナーを務める大塚泰子さんは、『イシューからはじめよ』(英治出版)をコンサルタントの「基本のき」が学べる本として紹介している。
コンサルタントの基本の基という感じです。 issue shaper
発生している問題を理解して、分析し、課題を特定して打ち手を講じるのがコンサルタント。的確かつ迅速にそれを実行していくには、ロジカルでイシュードリブンな思考が絶対的に求められるようだ。
年の瀬に来る年の目標を設定したのにもかかわらず、いざ年が明けてみたら、次第にモチベーションが下がってしまう。
誰しも一度は、そのような経験をしたことがあるはずだ。
しかし、そんな悔しい一年は、今年で終わりにしよう。「来年こそは飛躍の年に」をうそで終わらせないためにも、目標を立てることはもちろん、早くから準備をしておくのが大切だ。
何より転職の成功は、準備の質に左右される。2023年のスタートダッシュに向け、紹介した書籍をぜひチェックしてみてほしい。
文:安保 亮、編集:オバラ ミツフミ、バナーフォーマット作成:國弘朋佳、バナー画像:iStock / Nuthawut Somsuk