社会人の先輩たちが、自らの仕事やキャリア形成に深く影響を与えた書籍をピックアップし、その後の考えや行動の変容を実体験とともに紹介する企画、「ロールモデルの本棚」。
DIGITALIFTの鹿熊亮甫(かくま りょうすけ)さんは、「書籍でインプットした学びを実践し、自分のキャリアをつくってきた」と語る。
鹿熊さんのキャリアに影響を与えたのは、マーケティングで成果を上げるための、いわゆる実務を解説した書籍ではない。
地頭力を鍛えるトレーニング、PDCAを正しく回すための思考法、決算を理解する力——。いわゆるビジネスパーソン全般に求められるスキルを磨く方法を身に付けた結果、マーケターとしてのキャリアを骨太なものに育てることができたそうだ。
手法が多様化し、就労人口が増えているマーケターの世界で、頭ひとつ抜け出すためにはどうしたらいいのだろうか。
20代ながら上場企業の取締役を務め、マーケターとして活躍する鹿熊さんに、マーケター力を“爆上げ”する書籍を紹介してもらった。
—— 鹿熊さんは、20代ながら、上場企業の取締役だと聞きました。現役のマーケターでもあるそうですが、どのようにしてキャリアをつくってきたのですか?
マーケターとして特別な能力を持っていたわけではなく、「売り上げをつくる」という最重要課題と真摯に向き合ってきた結果が、現在のキャリアだと思っています。
マーケティングの定義は複雑ですが、マーケティングの権威として広く知られているフィリップ・コトラーの言葉を借りれば、「ニーズに応えて利益を上げること」です。
その意味で、マーケターとは「売り上げをつくり、利益を上げる活動をする人」だと言えます。
僕が優れたマーケターであるかはさておき、少なくとも売り上げをつくることにはこだわってきました。取締役という、経営ポジションにつく以前からの話です。
—— 「売り上げをつくる」という思考を持って、そのための試行錯誤を続けていれば、必然的にマーケターとしての動きができてくると。
「マーケティング」と聞くと、“瀕死の企業やブランドをV字回復させる魔法の一手”を想像してしまう人がいるかもしれませんが、もっとシンプルだと思っています。
僕自身、これまで「優れたマーケターになろう」といった考えで仕事をしたことはありません。「ビジネスパーソンとして成果を出そう」「経営の視点に立って仕事に向き合おう」というように、すごくシンプルに考えてきました。
個人的な意見ですが、マーケターだからといって、何か特別な知識や能力が求められるわけではありません。
本日のテーマにある書籍に関しても、「マーケターの道を極めたくて読んでいた」というより、ビジネスパーソンとして成果を上げるための手引き書として読んでいたものです。
ただ、そのどれもが、マーケターとしての役割を果たすうえで参考になるものばかりでした。
書籍で学んだノウハウを日々の仕事に取り入れ、ある種の鍛錬をし続けた結果、キャリアの早い段階で大きな貯金ができました。それらは複利的に増えていて、今も僕のキャリアを支え続けてくれています。