仕事を優先すべきか、はたまた私生活を優先すべきか。
人生における結婚や出産、育児などのライフイベントは、キャリアの転換点でもある。
特に出産前後の女性は、一定期間、仕事から離れなければならず、中長期視点でキャリア設計を考えることは難しい。
もちろん、ライフイベントは女性だけに訪れるものではなく、全ての人がともに考えていくべき課題である。
昨年には、男性が育休を取得しやすくなる制度を盛り込んだ「育児・介護休業法」の改正法が衆議院本会議で可決し、成立した。
詳しくは下の記事に譲るが、企業から男性社員に育休意向を確認することの義務化や、男性版の産休とも言われる「出生時育休」の新設などが盛り込まれている。
「育休は女性が取るもの」という発想から脱却し、パートナー同士で協力しながらライフイベントに向き合える社会をつくっていくのを後押しするものだ。
一方で、現状は女性のほうがライフイベントに向き合わなければいけない空気感が根強く残っているのも事実である。
内閣府の「令和3年版 男女共同参画白書」によると、いまだ女性が男性の2倍以上の時間を家事・育児に費やしていることが分かった。
また、国立社会保障・人口問題研究所が発表した「第15回出生動向基本調査」によると、出産を機に退職した女性が全体のうち46.9%にも上っている。
リクルートワークス研究所が行う類似調査では、第一子出産後の女性の離職率は年々減少しているが(下図参照)、この数字を少ないと捉えるか、まだまだ多いと捉えるかは人によるだろう。
本来は、「望んで子育てに専念する」という人以外、働き続ける機会を得られる状態が理想だからだ。
そこで本稿では、国際女性デー2022に合わせて、出産や育児と仕事を両立しているワーキングウーマンの工夫や1日のスケジュールに関する記事を紹介し、性別に関係なく全ての人がライフイベントに向き合うヒントを探っていく。
ZOZOで働く新井淳子さんは、子育てをしながら自分なりのワークスタイルを探してきた1人だ。「ZOZOCOSME」の企画営業を担当し、フルタイムで働きながら子育てにも奮闘している。
そんな新井さんは上の記事で、「仕事と家庭を両立したい思いはありながら、両立できていないというのが実際のところです」と語っている。
「もう少し家庭の時間があったらいいな」と思うこともありますし、「もっと子どもと過ごす時間があるとうれしいな」とも思います。
そんな本音を漏らす新井さんが大事にしているのは、「同時並行しない」ということ。
現在はリモートワークをする機会が多いからこそ、仕事と家事、育児を同時に進めることができる。しかし、それではメリハリが付かず、どれも中途半端になってしまうという。
新井さんも「子どもを迎えに行く途中に、仕事のメールを返したりしたくなる瞬間もある」というが、そこを我慢して目の前のことに集中するようにしてから、ぐっと効率が上がったそうだ。
また、1日の始めに、スケジュールを決めきることも大切にしている。家庭の時間と仕事の時間を明確に分け、そこにやるべきことを割り振る。すると、頭の中が整理され、迷いなくタスクに取り組むことができ、仕事とプライベートのどちらにも良い影響があるという。
新井さんは育児と仕事のバランスに悩む人へのアドバイスとして、「複数のロールモデルの“いいとこ取り”」を薦めている。
ロールモデルにならうことは一つの手段ですが、「自分にピタリと当てはまるロールモデルはいない」ということを前提にするのが重要だと思います。
例えば、子どもを育てながら営業としてバリバリ働く先輩がいたとします。そうしたスタイルに憧れることもありますが、自分が全く同じようにできるかといえば、そんなことはありえません。
子どもの性格はきっと違うし、仕事の役割や量も違うでしょう。
たとえ同じ会社で働く人でも、前提条件が全く一緒ということはないので、真似しようとすると、かえって苦しくなってしまうと思います。
ですから、私は、「仕事はこの人」「育児はこの人」と、複数のロールモデルの“いいとこ取り”をするようにしています。
子どもがいる生活を前提にしていても、子どもがいない人のワークスタイルが参考になることは、往々にしてあるのです。