仕事を優先すべきか、はたまた私生活を優先すべきか。
“働き方改革”がうたわれるようになってから、はや数年が経過し、ワークスタイルに選択肢が生まれるようになった。
仕事だけがキャリアではない時代だが、「若い頃はがむしゃらに働いた方がいい」という声も根強くあり、就職先に迷いが生じている若い世代が少なくない。
特に出産を考えている女性であれば、ライフプランに応じてファーストキャリアを選択するケースもあるだろう。
ZOZOで働く新井淳子(あらい じゅんこ)さんは、働きながら自分なりのワークスタイルを見つけてきた一人だ。
「仕事と家庭の両立は実現していない」と語るものの、試行錯誤を繰り返し、今の自分にできるベストな働き方をつくってきた。
理想と現実に乖離が生まれやすいワークライフバランスにおいて、自分なりのスタイルを確立するには、どうしたらいいのだろうか。
新井さんのキャリアを振り返りながら、等身大の「仕事と家庭の両立」論を聞いた。
—— 新井さんは「ZOZOCOSME」の企画営業を担当しているそうですね。もともと、コスメ領域に関心があったのですか?
ファッション領域に興味があって転職したので、コスメの担当になるとは思っていませんでした。
しかし、入社してコスメ領域を担当することになり、「もっとコスメの規模を大きくしましょう」と会社に提案しました。
とにかく、「ZOZOCOSME」のローンチまでは必死でした。
通常の営業業務をしながら、コスメ業界の慣習や、アイテムの知識も身に付けなければいけません。
アパレル販売に特化したプラットフォームの中で、新たなカテゴリーを強化するにあたっての環境構築に加え、空いた時間はブランド様の商品情報などをインプットする時間にしているので、入社後しばらくはめまぐるしい毎日でしたね。
—— 企画営業の仕事をするにあたり、やはりインプットは必須なのですか?
私はそう思います。
前職もテレビ局のデジタル戦略の子会社で企画営業の仕事をしていたのですが、そこで企画営業におけるインプットの重要性を痛感しました。
当時担当していたのは、国民的な人気を誇るアニメのWebプロモーションです。
私が子どもの頃から現在に至るまで続く、人気の根強いアニメだったので、常にインプットをして作品世界に入らなければ、提案すらままなりません。
クライアントであるライセンサーとの会話の中に、アニメキャラクターの細かい情報を織り交ぜながら、早く信頼してもらえるようインプットには時間を割きました。
知識のない新人が付け焼き刃の知識で頑張ったところで、スタートラインにはなかなか立てなかったのです。
—— その壁は、インプットによって乗り越えられたと。
その通りです。
そのアニメには約2000体のキャラクターが登場するのですが、自宅に帰ってからもDVDを観たり、キャラクターの本を読み込んだりして、それら全ての名前と性格を暗記しています。
特技と胸を張れるくらいまで、数年かけてインプットしました。
私には3歳になる子どもがいて、アニメを観る、いわゆる“世代”なのですが、今でも当然私の方が詳しいくらいです。
大変なことも少なくありませんでしたが、次第に結果が出るようになったのは、日々の努力の結果だと思います。
最終的には、大人世代を巻き込んだプロモーションを手がけることもでき、愚直に努力した過去が報われました。
時間をかけて働くことが一概に素晴らしいとは言えないですし、それが効率のいい働き方だったとは思っていません。
しかし、つき抜けた能力を持たない自分が一人前の社会人として認められるようになったのは、自信を持てるまでのインプットがあったからだと思います。
そこで得た仕事の進め方は、今では自分の財産です。