キャリア人脈の流儀「新幹線に乗る時、ABCのどの席に座る?」

キャリア人脈の流儀「新幹線に乗る時、ABCのどの席に座る?」

    JobPicks編集部が12月に東京・丸の内で開いたイベント「キャリア迷子から抜け出す一歩」。

    第2部ではJobPicksの「しごと相談BAR」シリーズでお馴染みのアドバイザーたちが登場し、キャリアに悩む学生や社会人を対象にした「相談BAR出張所」を開催しました。

    参加者からは、社内の組織がコロコロ変わる苛立ち、今トレンドにもなっている副業やリスキリング、さらには「会社以外で知人や友人の輪を広げられない」など多様な相談が寄せられました。

    SNSが普及し、人脈作りが容易になるなか、登壇者でmorich代表の森本千賀子さんは人脈開拓はある乗り物でも実行しているとか…。

    今回は「相談BAR出張所」の特集記事の後編として、さらに社会人4人の相談内容を詳しく紹介します。あなたも転職や副業、人脈開拓への一歩を踏み出してみませんか?

    目次

    「会社組織がコロコロ変わってキャリア描けません」

    第1部の講演で登壇したmorich代表の森本千賀子さんとミライフ代表の佐藤雄佑さん。二人には長期的なキャリアを築く術についての質問が相次ぎました。

    しごと相談BAR出張所開催。行くなら大手?ベンチャー?→「変化が激しい環境を」

    人事業界でカスタマーサクセスの仕事をしています。会社の事業が1年でコロコロ変わって、組織体制もめちゃくちゃです。1年後の仕事に対する目標やキャリアは描けるんですが、長期的なものが描けません。こんな状況で、どのようにキャリアを設計したらいいのか教えてください。

    人事業界の男性(社会人3年目)
    森本千賀子さん

    会社の変わり方が健全なのか、思いつきなのかどっちかな?(男性:健全ではないです…)

    戦略なき組織変更だと、キャリアを作るのが正直、難しいです。カスタマーサクセスも含めて、経営戦略があっての事業があり、事業があって実際の自分のミッションが定まるので、そこが変わると前提が変わりますよね。

    健全な変更だったらいいんですが、そうでなければ転職を考えたほうがいい。私、転職を進めてる(笑)

    また、男性は経営陣から事業に関する情報が共有すらされないと相談。森本さんは男性に会社の規模を逆質問します。男性は「15人規模の会社で働いている」と返答しました。

    森本千賀子さん

    15人規模の会社でシェアしないのは社員のことを信用していないからじゃないの?もし、あなたが、今の会社の経営者が大好きで、その人の夢を実現させることに人生を懸けてもいいなら、今の会社で後悔しないと思います。そうでなければ振り回される可能性が大きいです。

    戦略なき会社からはサヨウナラ、人脈作りは「あの場所」で
    参加者の悩みを聞く森本千賀子さん=12月13日、ユーザベース本社

    「流れに身を任せてるけど、私のキャリアって大丈夫?」

    ミライフ代表の佐藤雄佑さんには「大手の金融業界でどうキャリアを歩んだらいいか」との質問がありました。佐藤さんはキャリアデザインの世界でよく使われる二つの例えを示しつつ、相談者のモヤモヤを紐解いていきました。

    しごと相談BAR出張所開催。行くなら大手?ベンチャー?→「変化が激しい環境を」

    今、金融業界で証券担当をしています。会社から「経験してこい」と言われて、現在のポジションに配属されました。

    証券の知識や取引業務など実務を積めることに満足しています。ただ、自分のキャリアを長期的に考えた時、キャリアをどう歩んでいけばいいのかモヤモヤします。

    金融業界の20代男性
    佐藤雄佑さん

    キャリアは「筏(いかだ)下り」と「山登り」とよく言われます。

    会社という筏に乗ったとして、とりあえず振り落とされないようにしがみつくのが筏下りです。

    若い時は仕事経験や実務経験も乏しいので、とにかく筏にしがみつくように頑張ってもいいと思います。30代になった時に「この筏じゃない」と思った時が転職するタイミングですね。

    佐藤さんはすぐにやりたいことが見つからなくても今の環境で頑張ることで、次のキャリアが見えてくると解説しました。

    佐藤雄佑さん

    すぐに直接やりたいこととか、できることかにつながるというよりは、今、与えられた環境で(筏を)下ってみることで力が付くのだと思います。修行の場として考えてもいいかもしれません。

    副業、何から始めたらいい?

    ここ最近、DX(デジタル・トランスフォーメーション)や人的資本経営の機運の高まりとともに、副業やリスキリングがブームになっています。

    変革を求める企業側はもちろん、個人単位で副業やリスキリングを望む20、30代のビジネスパーソンも少なくありません。

    この日の参加者の関心も高く、副業やリスキリングについて「何から始めればいいのか」という質問も相次ぎました。

    看板を掲げていない東京・銀座のBARでカウンターに立ち、ゲストのキャリアの悩みを聞いている高橋麻菜美さんは自身の経験を基にアドバイスしました。

    しごと相談BAR出張所開催。行くなら大手?ベンチャー?→「変化が激しい環境を」

    副業をやりたいと思っているものの、どのような基準で始めれば良いのかが分かりません。

    社会人5年目女性 コンサルタント
    高橋麻菜美さん

    自分の好きなことに関係した仕事を探すのはいかがでしょうか。手前味噌ですが、私自身も好きなことを副業にして、それがきっかけでキャリアが広がった一人です。

    現在は、キャリアコンサルタントとして相談を受け、複業でバーテンダーやイベントMCをしています。人と話す仕事をしている私ですが、実は根っからのゲーム好きなんです。ずっとゲームに携わる仕事をしたいと思っていました。

    私にとっての転機は、外資系・グローバル企業の転職支援に特化した会社に入った頃。海外の企業との連携も求められるため、英語力を活かせば何か副業ができるのではと思ったんです。

    高橋麻菜美さん

    そこで「ゲーム×英語」を軸にして、海外ゲームの翻訳を始めました。ロールプレイングゲームにある「勇者がモンスターを攻撃した」みたいな吹き出しを訳していく仕事です。「好きなこと」と「できること」を掛け合わせた副業は、全く苦しくなく続けることができました。

    「好きなこと」「できること」を掛け合わせて副業をしていたという高橋さん。それが高じて、とうとう本業の会社内にもゲーム好きの評判が広まりました。それから高橋さんのキャリアはさらに花開いていきます。

    高橋麻菜美さん

    「高橋はゲームに詳しい」と伝わったことがきっかけで社内でゲーム業界の担当となり、2年間で新人MVPの獲得やマネジャーとしてチームの成長に貢献するまで、仕事に没頭できたんです。

    ただでさえ本業が忙しい中、副業を始めるのは大変だと思います。だからこそ、副業として貴重な時間を割くのであれば、好きなことに関連した仕事から始めるのをおすすめします。予想しなかったキャリアにつながるかもしれません。

    戦略なき会社からはサヨウナラ、人脈作りは「あの場所」で

    率直に自分が好きだと思える副業から始めることが「最初の一歩」のようです。

    人脈を開拓するにはどうしたらいい?→“森本流”の人脈作りとは

    森本千賀子さんも副業についての質問に答えました。

    昨今の副業は自分が「できるかどうか」で選ぶのではなく、「新しいスキルを身につける場」として活用すべきだと説きます。

    その上で、森本さんは副業には「人脈作り」が大事だと強調。自身が実践している具体的な人脈作りの方法を教えてくれました。

    副業するためには人脈も大事だと聞きました。昨今の副業の状況と森本さんの人脈を広げるためにやっていることを教えてください。

    デジタル広告代理店の女性(社会人8年目)
    森本千賀子さん

    私も知人から「この仕事、手伝って」と言われたら経験してきた仕事を副業で活かしていました。

    昔は副業は「できること」を選択していた時代でしたが今、副業は「新しいスキル」を身につける仕事をやった方がいい。何度も言うけど、そのためにも人脈は本当に大事ね。

    森本さんの人脈作りの現場はまさかのあの乗り物でした。

    森本千賀子さん

    人脈の作り方もとても簡単です。新幹線に乗る時、あなたはABCのどの席に座りますか?(女性:「窓際のCもしくは通路側のAですね)。

    私はB席に座っています。AとCの両隣に座っている人とご縁ができるからです。

    話しかけて連絡先を交換する。これが人脈を作っていく方法としては本当におすすめ。新幹線で隣に座った人が私の後輩と結婚したり、仕事につながったりしています。

    グリーン車に乗りそうとか言われますけど、私は主婦で節約家なので乗りません(笑)

    戦略なき会社からはサヨウナラ、人脈作りは「あの場所」で
    参加者の相談に応じる森本千賀子さん=12月13日、ユーザベース本社

    年末年始、帰省や旅行で新幹線を利用する人も多いはず。

    これまでのアイデア出しやインプットの場としての新幹線をぜひ、人脈作りの場として活用してみてはいかがでしょうか。

    (取材:JobPicks編集部、文:比嘉太一、撮影:飛塚倫久、デザイン:高木菜々子、編集: 竹本拓也)