なぜ、若者は「働きやすい」職場を去るのか——。
ここ数年、労働法の改正や働き方改革の推進などを背景に、労働時間の短縮やハラスメント対策が一気に進んだ。
それに伴い、長時間労働や上司からの叱責がない、いわゆる「ホワイト」な職場が増えているが、実は今、こうした職場を離れる若手社員が増えているという。
一体、なぜなのか。
若者のキャリア形成や職場環境に詳しいリクルートワークス研究所の古屋星斗(ふるや・しょうと)さんに、当事者である若者とマネジメント層、それぞれに向けたアドバイスとともに聞いた。
なぜ、若者は「働きやすい」職場を去るのか——。
ここ数年、労働法の改正や働き方改革の推進などを背景に、労働時間の短縮やハラスメント対策が一気に進んだ。
それに伴い、長時間労働や上司からの叱責がない、いわゆる「ホワイト」な職場が増えているが、実は今、こうした職場を離れる若手社員が増えているという。
一体、なぜなのか。
若者のキャリア形成や職場環境に詳しいリクルートワークス研究所の古屋星斗(ふるや・しょうと)さんに、当事者である若者とマネジメント層、それぞれに向けたアドバイスとともに聞いた。
古屋 結論から申し上げると、働きやすいがゆえに、「本当にこの職場にいて大丈夫なのか」と不安を感じているからです。
残業も休日出勤もないし、上司からの厳しい叱責もない。
それ自体は望ましいことですが、一方で若者たちは「きちんとスキルが身についているのか」「社会にとって有用な人間になれているのか」と、自身のキャリアの「サステナビリティ」を、非常にシビアに考えています。
私が入社1〜3年目の若手社員を対象に実施したインタビューでも、「業務量はほどほどで、会社の人間関係も良好。居心地はよいが、このままでは成長できないと感じて焦る」と答える方が一定いました。
こうした不安の背景には、若者たちの持つ、とある複雑な感情があると考察しています。
それは、「ありのままでいたい」と「何者かになりたい」という、時に矛盾するキャリア観を、同時に抱いていることです。
「好きな場所で、好きな時間に働きたい」「自分の強みを生かして、後悔なく仕事をしたい」と、世間など関係なく、“ありのまま”の自然体で過ごしたいと思っている。
一方で、「この職種で一人前になりたい」「30歳までに自分だけの成功体験を得たい」といった、“何者”かになり、社会で認められたいという気持ちもある。
SNSなどで、「ありのままに生きる人」と「若くして何者かになった人」のストーリーが繰り返しシェアされるなかで、こうした2つのキャリア観の間で揺れ動く若者が増えているのです。
現在の職場環境は、“ありのまま”への欲求には応えられていますが、“何者かになりたい”という欲求には、あまり応えられていません。
過剰な労働がなく、自分の行動に対して否定的なリアクションが来ない、「心理的安全性」が高い職場は増えました。
ですが、働きやすさを追い求めるあまり、他の職場でも通用するスキルが身につく、その後のキャリアの選択肢が増えるといった「キャリア安全性」の低い職場も、同時に増えてしまった。
この「キャリア安全性」の低い職場のことを、私は「ゆるい職場」と呼んでいます。
残り2474文字(全文3416文字)
続きを読むには
JobPicksに登録する3つのメリット