SaaSやサブスクリプションといったビジネスモデルの台頭をきっかけに、営業という昔ながらの王道職種に新しい潮流が生まれている。その一つが、インサイドセールスだ。
インサイドセールスは、いわば顧客獲得の要。マーケティングの要素を取り込んだ、市場価値が高騰している新職種である。
しかし、いわゆる「アポインター」として認識されてしまうことも多く、それゆえ敬遠されがちな側面を持つのも事実だ。
支出管理プラットフォーム・Leaner Technologiesでインサイドセールスを統括する山下翔平(やました しょうへい)さんに話を聞くと、「架電による営業活動をすることもあるが、業務範囲はその限りではない」と言う。
本稿では、注目が高まりつつある新職種「インサイドセールス」に焦点を当て、その実態を探っていく。
—— 「インサイドセールス」という仕事を、山下さんの言葉で定義するなら、どのような表現になりますか?
インサイドセールスは「事業成長の要」です。
営業のプロセスを分解すると、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの大きく3つに分類されます。どれも重要な職種ですが、なかでもインサイドセールスは、事業成長のスピードを決める重要なポジションだと考えています。
営業活動の起点は、アポイントの獲得にあります。その役割を果たすのがインサイドセールスなので、ここが機能しなければ、売り上げを効果的に伸ばすことは難しいのです。
—— 営業活動の起点になる職種なのですね。いわゆるアポインターとは、どのような違いがあるのでしょうか。
「インサイドセールス=テレアポ」のイメージを持っている方がいるとすれば、それは誤解です。
アポイントの獲得も主たる業務のうちですが、ただ電話をかけたり、メールを送付したりすることが、仕事の全容ではありません。
そもそも、確度の低い商談を設定したところで、むだにコストがかかってしまいます。アポイントの数をむやみやたらに追ったところで、事業が停滞してしまうだけです。
例えば、まだ取引のない見込み顧客(リード)と接点を持ち、「自社のサービスに興味がある」状態まで意欲喚起するのも、インサイドセールスの役割です。
「成約に至る確度の高い顧客を生み出す仕事」と言えるかもしれません。
—— 効率的な営業活動を実施するうえで、欠かせない職種なのですね。
セールスフォース・ドットコムが提唱する営業活動の分業体制「The Model」を知っておくと、インサイドセールスの仕事を正しく理解できます。
マーケターが、Web広告やセミナー、SEOやメルマガなどで見込み顧客とコンタクトを取り、それをインサイドセールスが、より成約確度の高い顧客へと育成します。
顧客の購買意欲が高まった段階で、今度はフィールドセールスが商談を担当します。成約に向け、クロージングするのがこの段階です。
カスタマーサクセスは、サービスを利用する顧客をフォローアップし、継続的な利用を促します。
「The Model」は、集客から継続利用までの各段階で情報を可視化・数値化し、売り上げの増大を目指す考え方です。
どこにボトルネックがあるかが可視化できるので、PDCAを適切に回せるようになります。言ってしまえば、「トヨタ生産方式」と理屈は同じです。
その起点になるのがインサイドセールスだと理解していただければ、僕が「事業成長の要」と表現している理由にも納得していただけるのではないかと思います。
ただ、上記はあくまで一例です。リードの定義も会社によって異なりますし、インサイドセールスの種類や業務範囲は多岐に渡るため、一概に「これがインサイドセールスの仕事です」とは言えません。
例えば、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客情報管理システム)などのツール導入は、マーケティング部門が担当するのが一般的です。
しかし、私はインサイドセールスの立ち上げ責任者だったこともあり、CRMの構築を担当しました。また、現職ではマーケティング専任のチームがないため、セミナーやイベントの企画、コンテンツ作成やメルマガ送信もインサイドセールス主導で行っています。
また、フィールドセールスと一緒に顧客を直接訪問したり、会議システムを利用して商談に参加したりすることもあります。
—— 職種がインサイドセールスだからといって、業務が限定的になることはないのですね。
弊社が提供する「Leaner見積」は、企業の調達・購買活動を管理・適正化するためのクラウドサービスです。大手製造業の基幹系業務に関わるシステムのため、顧客の稟議フローが複雑な場合が多々あります。
そうした場合、完全な分業体制を敷くより、すでに顧客との信頼関係を構築しているインサイドセールスとフィールドセールスが密に連携するほうが、効率的なケースもあるんです。