【真理】入社3年、売上5億円。“doda歴代No.1セールス”が意識し続けた、たった一つの営業術

2021年1月29日(金)

「明日から使える営業術」は存在しない

—— 入社した2017年12月に、中途入社最速での単月MVP獲得。およそ3年後には、全社最速で通算売上5億円突破。高橋さんには、何か特別な営業術があるのでしょうか?

よく聞かれるのですが、特別なスキルを持っているわけではありません。

また、生活スタイルもみなさんとそこまで大きく変わらないと思います。毎朝4時に起きて読書をしているわけでもなければ、欠かさずランニングをしているわけでもない。しいて挙げるなら、やり抜く力「グリット」が高いというくらいでしょうか。

ファーストキャリアは三井住友銀行の営業職だったのですが、当時はいわゆる“トップ営業マン”ではなかったですし、仕事にモヤモヤしていた時期もあります。

こうして取材をしていただいていますが、「明日から使える営業ノウハウ」みたいなテクニックは、残念ながら持ち合わせていないのです。

—— それではなぜ、これまで数々の偉業を達成できたのでしょうか?

身も蓋もない話ですが、パーソルキャリア(旧・インテリジェンス)で教わった、「お客様の期待を超える成果を出す」という営業職としての当たり前に、誰よりも愚直に向き合ったからだと思っています。

特別なスキルを持っていない分、常に顧客から「信頼に足るビジネスパートナー」であり続けることを意識してきました。

まだまだ若造だった銀行員時代は、「負けたくない」とか「同期で一番成果を出したい」という気持ちが先行していました。しかし、パーソルキャリアに転職し、「顧客の成果を出す」ということにこだわり始めてから、見違えるように営業成績が向上したのです。

仕事のモヤモヤが解消されたワケ

—— 「仕事にモヤモヤしていた」という、銀行員時代のエピソードについて教えてください。

そもそも三井住友銀行に入行したのは、いわゆる就活偏差値を気にしてのこと。明確に「これがやりたい」というものがなかったので、せめても有名企業で働きたいと思っていました。

知っている企業から順にエントリーするような形で、メガバンクや大手不動産企業を中心に、「大手の内定をいくつ取れるか」といった競争をしていました。それ自体に後悔はありませんが、振り返ってみれば、不毛なプライドもあったんだと思います。

やりたいことがなかったとはいえ、入行してからしばらくは楽しく働いていました。毎日部長に怒られていましたが、業務時間きっかりで退勤できていましたし、営業成績も残せていました。同期も優秀な人たちばかりです。

しかし、入行から1年が過ぎると、少しずつ仕事にモヤモヤを抱えるようにもなりました。個人的な印象ですが、楽しそうに働く仲間が少なくなり、何より「お客様ではなく銀行のために働いている」感覚が強くなってしまったのです。

銀行には、業績評価要綱というものがあります。数ある商品の中でも、注力商品があらかじめ決められており、それを売ることが支店の評価に直結しているのです。ですから、「もしかしたら、お客様のためにならない商品だ」と感じることがあっても、自分の気持ちを無視して販売しなければいけません。

「働くからには、人のためになる仕事を一生懸命にやりたい」と思っていたこともあり、お客様に本質的な価値を提供できていない現状に、違和感を持つようになりました。そのタイミングで、仕事にやりがいを求めて転職をすることにしました。

転職先にパーソルキャリアを選んだ理由は、「楽しそうに働く仲間が少ない」という原体験があったから。「つまらなそうに働く優秀な人を、全員転職させる」と意気込んでいました。

—— パーソルキャリアに転職してから、仕事に抱えていたモヤモヤは解消されましたか?

「価値ある仕事をしている」と心の底から思えたことで、モヤモヤは解消されました。「優秀な人材を採用したい」と考えている企業様に、良質な求人を届けることが使命でしたから、自分の仕事に誇りを持つことができました。

また、売り切りでは成績を残せないということも、働くことが楽しくなった一つの要因です。

受注していただいても、採用に結びつかなければ、再び指名してもらえることはありません。つまり、成績を上げるためには、必然的にカスタマーサクセスが求められます。銀行員時代とは違い、学生時代から思い描いていた「人のためになる仕事を一生懸命にやる」ということが実現できる環境でした。

自分が望んでいた環境で働けることがうれしく、入社した2017年に、中途入社最速での単月MVPを獲得。その後、4Q連続で四半期のMVPを獲得することもできました。向上心あふれる同世代のメンバーが数多くいたことも、成績を残せた要因だったと思います。

売れる営業マンの共通点

—— カスタマーサクセスし続けるために、高橋さんはどのような点に注力していたのですか?

とにかく顧客理解に徹していました。商談やヒアリングが始まる前に、ホームページに掲載されている情報の全てに目を通すことはもちろん、担当者のインタビュー記事や、リンクトインなどのSNSもチェックします。時間は限られていますから、お客様の課題を明確に理解するためにできることは、なんでもしていましたね。

また、課題を解決するまでが僕らの役割ですから、「売って終わりではない」ということも常々意識していました。「成果が出るまでが自分の仕事だ」と認識し、マーケティングからカスタマーサクセスまですべてに責任を持つのです。

パーソルキャリア時代の例を一つ挙げると、取材への同席です。求人の出稿を決めていただいても、求人広告が優れていなければ集客できません。求人広告を書く専属のライターには、事細かにクライアントの事情を説明していましたし、お客様のことを誰よりも理解している一人として取材に同席し、ときに取材の方法にまで口を出していました。

また、その後の採用フローがおざなりでは、お客様の期待を超えられません。もしお客様が本気になっていないと感じたら、「僕が本気でも、あなたが本気でなければ、期待する成果は出ないんです」と真正面から伝えていました。

僕の経験上、売れる営業マンは、この当たり前に徹底的に向き合っています。一撃必殺のノウハウは存在せず、妥協なくお客様と向き合うからこそ、成果が出ているのです。

—— 飛び道具に頼らず、愚直にカスタマーサクセスを追い求めた結果が、偉業の達成につながっていると。

そうだと思います。とはいえ僕も、一時期「手を抜いてしまった」過去があるんです。安定的に数字を残せるようになってきたことで、「このくらいでいいや」と、及第点を目指すような働き方をしていた時期がありました。

そのとき上司に、「お客様に不誠実だ」と咎められました。「たしかに売れるかもしれないが、どうしてやれる限りを尽くさないんだ」と叱咤され、決意して転職したのにもかかわらず、銀行員時代と同じ営業スタイルになっていたことを反省しました。

それからというもの、「この人は営業ではなく信頼できるビジネスパートナーだな」と認識してもらえるよう、商談の準備にこだわりましたし、カスタマーサクセスするまで徹底的に伴走することを決めました。

全社最速でゴールデンプレイヤーズクラブ入会(通算売上5億円突破)を果たせた理由は、結局のところ、「顧客満足度の最大化」に本気で向き合ったからだと思っています。

—— スタートアップに転職し、商品が変わった現在も、同様のスタイルを継続しているのでしょうか?

もちろんです。むしろ、これまでに増して、お客様を知るための努力をしていると思います。

現在所属するLeaner Technologiesは、支出管理SaaS「Leaner」を提供しているのですが、まだまだ市場の黎明期なので、これまでとは勝手が違うのです。

サービスが実現したい世界観をイチから説明する必要がありますし、導入によってどのようなメリットが得られるのかを丁寧にお伝えし、納得してもらう必要があります。

また支出管理は、企業によって担当者がマチマチです。総務部が担当している企業があれば、経営企画部が担当している企業もある。「専任の担当者不在です」ということも少なくありません。場合によっては「専任の担当者を付けるべきです」と説明するところから始まるケースもあります。

そうした壁を乗り越えるには、支出管理の重要性を訴求するだけでなく、担当者理解が必須です。例えば「こんな大変なことがありますよね」とか「事業部との調整は苦労しますよね」など、仮説の精度が高くなければ、「彼らは僕らのパートナーだ」と認識してもらえないのです。

現在営業チームは4名で構成されているのですが、全員で担当者理解を促進するための勉強会を実施しています。例えば「経営企画はどのような仕事をしているのか」をリサーチし、業務を遂行する上での課題などを、業種によって異なることも想定した上で、徹底的に調べ上げるのです。

まさに今日も、社内勉強会に参加していました。顧客理解こそが営業の鍵であることを知っているので、今でもそのための勉強を怠ることは絶対にしません。

「はたらくを楽しむ」には?

—— 高橋さんが「営業」という仕事を一言で表現するなら、どのような定義になりますか?

「売上をつくり、利益に貢献する仕事」です。よく「課題解決が営業の仕事」と言いますが、課題解決はあくまでも手段にすぎません。価値ある商品を開発し、それをデリバリーするのが営業の役割です。

また、一口に営業といっても、様々な役割があります。架電を通じて新規顧客の開拓をする仕事があれば、現在の僕のように、体系的な営業フローを構築する仕事もあります。しかしそれぞれ、「売上をつくり、利益に貢献する仕事」という意味では同じです。

だからこそ、営業としてキャリアをつくるのであれば、会社のビジョンやミッションに共感している必要があると思います。

—— その理由について、詳しく教えてください。

例えば「旅行が好きだから旅行代理店で働きたい」という人がいるとします。しかし、旅行をするのと、旅行を販売するのは、全く別の話です。

HISは「自然の摂理にのっとり、人類の創造的発展と世界平和に寄与する。」と企業理念に掲げています。HISで働くということはつまり、その理念の実現に向けて働くということなのです。

旅行が好きでも企業理念に共感できなければ、働く意義を見失ってしまうかもしれません。しかし、旅行に興味がなくても企業理念に共感していれば、働きがいを持てるはずです。

営業職に限った話ではありませんが、「何を目的に働くのか」は強く意識した方がいいと思います。そこにフィットしている方が、成果も上げやすいはずです。

僕の話をすれば、これまで支出管理に興味を持ったことはありません。しかし、「Leaner」を世界に広めることで、世の中に新たな価値を提供していく未来には、心から共感しています。

そうした観点で働き方を選んでいけば、結果的に商品を好きになれる。おのずと成果が出ますし、やりがいを持ち続けられると思います。

—— これから社会に出る学生、仕事に悩む若い世代に向け、伝えたいことはありますか?

「その瞬間で、一番いい選択をする」ことを意識してほしいと思います。

僕が銀行に入行したときと現在では、働くことに求めるモチベーションは違います。でも、当時の選択を後悔しているわけではありません。むしろ、あのときがあったからこそ、今の自分があると思っています。でもそう思えるのは、「その瞬間で、一番いい選択をした」からです。

人生の早い段階で、自分のミッションや、やりたいことを見つける方が難しい。でも、その瞬間にできる最善の選択をしながら、目の前のことに真摯に向き合っていれば、やがて自分らしい人生にたどり着けるはずです。

そこに自分に合った職種が重なり合えば、「はたらくを楽しむ」ことができると思います。

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取材・文:小原光史、編集:栗原昇、デザイン:小鈴キリカ、撮影:遠藤素子