バックオフィスの仕事内容はこれで学べ。経験者が薦める入門書4選

2022年6月10日(金)

バックオフィスとは?特徴を知る

経理や財務、人事・労務、法務など、企業経営を裏側で支える仕事であるバックオフィス。

営業やマーケティングのような利益を生み出す仕事=フロントオフィスとの対比でバックオフィスと呼ばれるが、会計や採用、社員の労務管理といった企業活動のベースとなる部分を担う重要な仕事である。

一部の企業では「自社理解」を深めるため、フロントオフィスの業務で実績を残す経営幹部候補をバックオフィスに異動してもらい、経験を積ませる場合もある。

異動まではしないとしても、いずれ経営を担いたいビジネスパーソンにとって、最低限の業務知識は持っておくべきと言われるほどだ。

また、近年普及し始めたジョブ型採用においては、就職活動の時点で希望や適性を見て新卒からバックオフィス部門で採用されるケースもある。

【完全図解】「ジョブ型」雇用で、仕事、給料、昇進はこう変わる

しかし、下に紹介するソニーの水町夏子さん(IR担当)のように、就職前はバックオフィスの業務内容をほとんど知らないという人が多いだろう。表に出る機会が少なく、情報自体がないからだ。

【ソニー・26歳】大企業で、どうやって自分らしい仕事を見つけるか?

そこで本稿では、JobPicksに経験談を投稿してくれたバックオフィス職種のロールモデルが紹介する「未経験者へのおすすめ本」をピックアップ。

就職・転職前に、または人事異動の前に、どんなことを学んでおくといいのかを見ていこう(注:ロールモデルの所属・肩書は、全て記事掲載時の情報)。

経理になる前に読みたい推薦書

企業が生きていく上で必要な「利益」「資産」を管理する役割を担う経理は、バックオフィスの代表とも言える仕事だ。

淡々と計算作業を続けるイメージが強いが、数字面での状況把握は経営の生命線となるため、決算・業績発表の前後は経営陣や経営企画、現場の事業責任者などとのやりとりも多い。

そんな経理の仕事で、まず持っておきたいのが、簿記のような経理業務の基礎となる知識だ。

企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を担うユナイテッドで、新卒から労務や経理を担う半澤美羽さんは、資格スクールのTACが出版する『よくわかる簿記シリーズ』をおすすめしている。

「よくわかる簿記シリーズ 合格テキスト 日商簿記3級 Ver.12.0」

簿記の教科書です! 私は資格を取る時このテキストと問題集をセットで勉強していました。 学生時代に日商簿記の2級まで勉強していたので、経理部に入りたての頃、勘定科目を聞いてもなんとなく分かることに感動しました。 以前は、経理業務は難しいことをやっているように見えていて、自分には無理だろうなと思っていたので、皆が言っていることがちょっと分かるだけで希望を持つことができ、資格を取っていた学生時代の私ありがとう!と思いました(笑) 簿記を学んだか学んでないかで経理業務はスタートから全然違います。。。 経理ではない人でも、働くうえで知っていた方がいい知識もいっぱいですし、学んでおいて損はないなと思いました。勉強した単語が業務に出てくると「それ知ってるー!」と嬉しくなります!

> よく分かる簿記シリーズの最新版はこちら(Amazon)

深澤さんが投稿した「経理の苦労」を読むと、処理の抜け漏れやミスが作業の生産性に直結してしまうとのこと。

このミスを減らす意味でも、簿記の知識は必要不可欠ということだ。

ミスをした時

特に部署変更や新しい事業が始まった時に、小さなところから処理の抜け漏れやミスが発生してしまいます。 なるべくミスをする環境を減らせるよう部内でWチェック等を徹底しているのですが、想像もしていなかったところから抜け漏れが発生すると、今の処理はもちろん、今後のフローを考える必要があり、特に忙しい時にミスが起きた時には皆の作業工程を増やしてしまった~と落ち込みます。 正しい処理を取り戻すのに時間がかかってしまったり、社員や相手先にまで迷惑をかけてしまったりすることもあるので、冷や汗が止まらない時もありました。 そういう時に先輩社員から、「1回ミスしたら次は気をつけようと思えるから」とアドバイスをもらいました。 その言葉を実感できる瞬間が多々あって、一度間違えたことがある場面に再度遭遇し、正しく対処できた瞬間に、「言っていたのはこういうことか!」と思いました。 ミスは起こさないようこれからも気をつけたいですが、間違ってしまっても成長につなげられた良い経験になりました。

人事になる前に読みたい推薦書

次に紹介するのは、社員の採用のみならず、育成から働きやすい制度設計など「人」にかかわる業務全般を担う人事の勉強本だ。

就活で「最初に出会う社会人」となるため、人事は憧れ職種の一つでもある。なりたいと考える学生や若手社会人はいつの時代も一定数いる。

また、金融やエンジニアリングのように「専門職」の採用が事業拡大の中軸となる場合、元プレーヤーが採用業務を兼務するケースも増えている。

トレーダーやエンジニアが人事を担うような形ゆえ、社会人になってからもゼロから人事・採用業務を学ぶ機会があるのだ。

企業規模が大きくなると、採用業務と人事制度の設計・運用は担当者が異なるケースが多いが、ここでは「人事担当者がおすすめする勉強本」の中で最も多くのいいねが付いている投稿を紹介しよう。

リクルートキャリアなどを経て土屋鞄製造所の人事になった西島悠蔵さんのおすすめ本は、P&Gほかグローバルカンパニーの組織開発を支援してきた著名なコンサルタント、ラルフ・クリステンセンの著作『戦略人事マネジャー』(生産性出版)だ。

戦略人事マネージャー

人事としての戦略的な部分のベースの考えが載っていると思っています。 人への想い、向き合い方等はたくさんの人事の方がお持ちですが、経営や採用以外の部分にも触れている本になっていて、定期的に私も読み返しております。 実際に著書が実行されてきた手法が多く盛り込まれているので、思想や考えだけではなく、実践でも利用できるのもおすすめする理由の一つです。 人事のみならず、経営者や管理職としてマネジメントをする際にも多く読んだことが役に立っているので、この本をピックアップしました。

> 戦略人事マネージャーのAmazonページ

人事が担う役割が網羅的・実践的に分かる上、西島さんも書いている「経営者や管理職としてマネジメントをする際にも役立つ」ような理論まで1冊にまとまっている。

業務の全体像を知る際に、読んでおきたい本と言える。

> 人事の先輩が語る「未経験者へのおすすめ本」一覧はこちら

広報になる前に読みたい推薦書

プロダクトや各種キャンペーンの広報のみならず、近年はパーパス経営(自社の存在意義を基軸に社会へ与える価値を示すこと)の担い手としても注目される広報の仕事。

英語では“Public Relations(パブリック・リレーションズ)”と呼ばれ、文字通り社会との関係性をつくることを意味する重要な役割を担っている。

そんな広報の基本が学べる本として、複数のローモデルが推薦しているのが、『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)だ。

【小さな会社】 逆襲の広報PR術

中小企業やベンチャー企業にとっての広報のメリットや、実践的なノウハウが詰まった本。広報の意義、戦略の立て方などの概念が書かれた本は他にもありますが、ここまで具体的な実践例を、一気にまとめて読めるのはお得だと思います 。「突然広報担当を任せられた」という方や、「広報って具体的にどうしたらいいのか知りたい」という起業家の方にもオススメしています。これを読んで、面白い・もっと追求したい!と思った方は広報を目指すのもありかもしれません。

>【小さな会社】逆襲の広報PR術のAmazonページ

著者の野澤直人さんは、PR会社「ベンチャー広報」の創業者で、ビジネス誌の編集責任者をしていた経験を持っている。リリースを取り上げる側と作る側、両方の視点から書いた内容が好評のようだ。

一度目を通してみる価値はあるだろう。

> 広報の先輩が語る「未経験者へのおすすめ本」一覧はこちら

経営企画になる前に読みたい推薦書

最後は、経営方針やビジョン、ミッションに従って成長戦略を描き、実施計画の立案を行う経営企画の勉強本だ。

中長期で成長していくための戦略をつくるだけでなく、「戦略実行」の実現性も踏まえて采配を振る必要があるため、会計から現場の業務、業界トレンドまで幅広い知識が求められる。

ロールモデルの多くが、文字通り経営に関するビジネス書を推薦する中(一覧は後述)、最も多くのいいねが付いたのはフジテレビジョンの辻貴之さんが薦める『非営利組織の経営―原理と実践』(ダイヤモンド社)。経営の神様と称されるドラッカーの著作だ。

なぜ「非営利組織」と銘打つ本書がおすすめなのか、辻さんはこう投稿している。

非営利組織の経営

組織に求められることは成果をあげること、そのためにそこに集う個人に求められることは成果をあげることに貢献するために何がやりたい・やれる存在と記憶されたいかを考え、示し続けること…などなど、営利・非営利問わずに、複数の人と事を成す際には必読であると考えているから。 リーダーシップ・ビジョン・マネジメント・成果・人事など、経営に必要なことを学び、考えるきっかけがたくさん含まれています。 ドラッカーというとよく出てくる「何によって記憶されたいか」という一説も、この本に書かれています。最初に読んだ19歳の大学2年の夏から気づけば27年。常に側に置いています。

> 非営利組織の経営のAmazonページ

つまり、営利・非営利にかかわらず「組織を運営する基本」が学べる本というわけだ。

経営企画の業務で必要となる各種の専門知識は、ほかのロールモデルが推薦する本も参考にしながら学んでいこう。

> 経営企画の先輩が語る「未経験者へのおすすめ本」一覧はこちら

合わせて読む:【最新版】ゲイツ、ザッカーバーグ…起業家10人の愛読書136冊

文・デザイン:伊藤健吾、バナーフォーマット作成:國弘朋佳、バナー画像:iStock / Visual Generation