【ソニー・26歳】大企業で、どうやって自分らしい仕事を見つけるか?
2021年2月12日(金)
水町:興味と経験の重なるポイントがIRという仕事であり、そしてソニーでなら、自分らしいキャリアを歩めると感じたことが、入社を決めたきっかけです。
IRという職種があることを知ったのは、就職活動の一環として参加した、ソニーが開催するインターンシップです。ソニーは職種別採用での新卒採用を実施しており、このインターンシップもその採用の枠組みを意識して開催されているものです。
そのため、参加するにあたり、まずは興味のある職種を決めておく必要があります。私が選択していたのは、当時設置されていた、広報と渉外、そしてIRの3つから職種を選ぶ「リレーションズコース」です。そこではじめて「IRという職業があるのか!」と知りました。
水町:学生時代に、ラジオ局の裏方で学生スタッフとして活動していたことが関係しています。もともと人と話すことが好きでしたし、この活動を通じて、「自分から情報発信をする楽しさ」を知っていたので、なんとなく「社外とのコミュニケーションを担う職種」に興味があったのです。
その中でIRを選んだ理由は、学生時代に経済学部に所属していて、マクロ経済学を専攻していたからです。金融市場について学んでいたこともあり、「専攻する金融と、関心あるリレーションを掛け合わせたIRなら、自分にも伸び代があるかもしれない」と直感しました。
水町:もちろんソニー以外の選択肢もありました。その実、業界は特に絞らず、各業界で魅力的に思えた企業を1社ずつ受けていました。
自分にとって「魅力的か」の判断基準は、「生活の利便性向上や社会改善のみならず、人の感性に訴えることや、心を豊かにすることを大切にしているか」でした。学生時代に美術系のサークルに入っていたこともあり、そうした興味が少なからずあったのです。
また、情報発信に関心があったにもかかわらず、メディアではなく事業会社を中心に見ていたのは、「事業づくりに携わる人たちを側でサポートするような働き方をしたい」という思いがあったからです。
それぞれの軸に鑑みて、総合的に判断した結果、自分に最もしっくりくる環境がソニーでした。もちろん、IR職として入社できることも、少なからず内定承諾の後押しになっています。
水町:4月に入社してから1週間の全体研修を受けた後、すぐにIRグループに配属されました。例年4月末に決算発表があるのですが、IRオフィサーにとって、年内で最も忙しい時期なんです。つまり、入社してすぐに現場で働くことになりました。
上長にサポートしてもらいながら、ほとんどはOJTで仕事を学んでいきました。
水町:IRオフィサーとして、日々、投資家やアナリストからの取材に対応をしています。その他に、先ほどもお話しした決算発表、経営方針説明会やIR Dayなどに代表される投資家・アナリスト向けの説明会の企画・運営も行います。
決算発表の主な仕事は、各事業から上がってくる実績や年間の見通しを、どのような形で対外的に発表するかの調整です。説明会では、投資家やアナリストの関心事や期待をヒアリングし、マネジメントと共に会社のメッセージを練り上げていくところから、当日の登壇のサポートまで、会社と資本市場の対話がより充実したものになるよう努めています。
ソニーのIRグループが掲げるミッションは「投資家の方たちとの対話を通じて、会社の長期的な企業価値の向上に貢献する」です。ミッションを達成するためには、IRオフィサーとして、ソニーの全事業に関してゼロから説明できることが基本となっています。ですから、ソニーを誰よりも知ることも、私の仕事の一部です。
水町:現時点で自分の持っている解は、一つひとつ地道に勉強していくことです。各事業のビジネスモデルや、外部環境を踏まえたうえでの成長のストーリーを語れる必要があるので、決算発表のタイミングをうまく活用しながら勉強しています。
それでも、自分ひとりで学ぶのには限界があります。分からないところがあれば、各分野に強みを持つメンバーに話を聞きにいきます。今のところ効率的な勉強方法は見つけられていないので、一から十まで手と足を動かしながら学んでいるところです。
また、海外投資家と対話する機会も多くあります。つまり、英語で話すことが必須です。とはいえ私は、海外に行った経験が少なければ、留学経験もない。社内の福利厚生などを活用しながら、入社以来ずっと、四苦八苦しながら勉強を続けています。
水町:「きっと活躍できるだろう」と自信を持って入社しましたが、想像の何十倍も責任ある仕事だと痛感しています。IRは各事業部ないし経営層に代わり、投資家の方たちへメッセージを発信する立場です。投資家をミスリードしないよう、常に的確な言葉選びが求められます。
また、投資家の方々の経営に対する意見を、社内にフィードバックするのもIRの役割です。ただ単にメッセージを右から左に伝えるのではなく、「なぜそうした意見・要望があるのか」「何を伝えれば対話が進むのか」を解釈しなければいけないので、非常に高度な仕事だとも感じます。
水町:投資家の方たちと直接対話ができるという点において、IRは非常に貴重な経験ができる職種だと思います。投資に対するリターンはもちろん、弊社が社会に与えるインパクトに対しても、純粋な期待を寄せていただいていることを実感できる。これは、IRオフィサーならではのやりがいです。
具体的なエピソードを挙げると、「Sony Technology Day」というR&Dの説明会の運営が印象に残っています。
「Sony Technology Day」では、社内のエンジニアが自らデモンストレーションや技術解説などを行い、参加した投資家の方たちからも高い評価を得られました。後日、そうした参加者の声をフィードバックしたところ、エンジニアから「投資家の皆さんの期待に触れることができ、その経験がモチベーションにつながった」という声が寄せられました。
「社員と資本市場の橋渡しができた」と感じられ、やりがいを強く感じました。
水町:IRオフィサーとしてレベルアップするためには、他部署で経験を積むことも必要だと思っています。例えば、経営管理を通じて事業への理解を深めたり、PR(パブリック・リレーションズ)を通じて情報の打ち出し方を学んだ後に、もう一度IRに挑戦するのも、一つの選択肢だと思います。
まだ明確な道筋は立てられていませんが、今は、IRと同じく社外とのコミュニケーションに携わることができるPRにも興味を持っていて、これまでとは異なるターゲットに向けて情報を届けることにも挑戦したいと考えています。
水町:現時点で「一番自信が持てるもの」を軸に定め、それをぶらさずに就活することです。
学生時代に感じることや、そのとき勉強していることは、あなたにとって最も“旬な武器”になります。
私の場合、ラジオ局やサークルの活動で積み重ねてきた、「人の価値観を理解しながら対話する経験」が武器になっていました。現在のキャリアは、それを最大限に生かそうと模索した結果です。
また、働く場所を選ぶうえで重要なのが、「企業の掲げるビジョンが、自分の価値観に合うか」という視点です。
就職して以来、私が楽しく働き続けられているのは、弊社が掲げるPurpose(=存在意義)である、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」が、私が抱く「心を豊かにすることや、人の感性を動かすことを大切にする」という価値観と重なっているからだと考えています。
投資家の方とお話ししていても感じることですが、「ソニーがどのように社会へ貢献し、成長していくのか」と、より長期的な目線で会社の将来を考えることが、重要視されてきています。
企業分析を進めていくうちに、企業の業績や業界の将来性など、直近の情報や細かいデータが気になってしまうこともあるでしょう。もちろんそれらもないがしろにしてはいけませんが、コロナ禍でも浮き彫りになったように、未来は大きく変化する可能性をはらんでいます。
そうであるならば、会社のビジョンを深く理解し、心から共感できると思えた企業に入社するのも最善の選択肢になると私は思います。「どのような変化があっても、私と会社とで、実現したい世界は同じだ」と感じられる選択をすれば、おのずと納得のいくキャリアになるのではないでしょうか。
取材:佐藤留美・小原由子、文:小原由子、編集:小原光史、デザイン:堤香菜、写真:水町夏子(本人提供)