職種別「まずこの1冊」新人育成で若手に薦めたい必読本

2022年4月6日(水)

研修後、OJTの前に読んでほしい入門書を解説

「この仕事を始める前に読んでおくべき本はありますか?」

4月は多くの企業で新年度が始まる時期。新入社員やチームに異動してきた若手から、こんな質問をされる機会もあるかもしれない。

上司や教育担当者なら、下の記事にあるような社会人としての基礎や読み書き(資料作成やExcelの使い方など)を指導する研修の時間が用意されているが、歳の近い先輩の立場だと、OJT以外で育成にかかわるシーンはそう多くない。

#6 新社会人が身につけたい「スキル8選」

時間も限られる中で後進の成長をサポートするには、「これがおすすめ」と言い切れるビジネス書を1冊、紹介してあげるのも効果的な方法だ。

そこで本稿では、JobPicksのロールモデルが投稿した「未経験者へのおすすめ本」に注目。5つの職業別に、複数のロールモデルがピックアップしている書籍、または最も多くの「いいね」が付いている投稿を紹介していく。

同業者が最もおすすめする本は何なのか、参考にしてみてほしい(注:ロールモデルの所属・肩書は、全て本人が投稿した時点の情報)。

「法人営業」の推薦書で最も多くいいねが付いた1冊

■『営業の魔法』(ビーコミュニケーションズ)

法人営業を経験したロールモデルがおすすめする本の中で、最も多くのいいねを獲得した書籍がこれ。「小笠原くん」という売れない新人営業パーソンが、トップ営業パーソンの先輩から12の営業の極意を学んでいくビジネス小説だ。

営業とは、商品を売るのではなく顧客の課題解決をする行為だという基本的な心構えから、そのための具体的な対話法までを説明しており、まさに新人営業パーソンのバイブルとなるような内容になっている。

BtoBマーケティング支援のFORCASで執行役員CEOを務める田口槙吾さんは、本書を「セールスに最も必要なマインドが学べる」と推薦している。

営業の魔法

ストーリー形式で話が書かれていて、読書が苦手な人でもサラッと読めてしまうというのが最大の良いところ。 また中身についても、よくあるスキルが書かれたHOWTOではなく、セールスのマインドや概念のような切り口で書いてあるのもすごく良いです。 スキルは顧客にとって良いことはないが、マインドは顧客にとって良いしかない。 セールスで成果が出ずに悩んでいたり、セールスという職業そのものに不信感を持ってるようであれば、ぜひ一度読んでみるといいと思います。

> 法人営業のロールモデルが投稿した「未経験者へのおすすめ本」一覧

最も多くの「カスタマーサクセス」が推薦する1冊

■『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(翔泳社)

SaaS関連のプロダクトを提供する企業が増えたことで、最近は新入社員をインサイドセールスやカスタマーサクセスの部門に配属するところも多くなった。

これらの部門では、自社の事業と顧客の声を直接的に知ることができるからだ。

そんなカスタマーサクセスのイロハが学べる本として、たくさんのロールモデルが推薦していたのが『THE MODEL』。

ミーミルの山中祐輝さんや、SNSベンチャーのYOUTRUSTでカスタマーサクセス第一号社員となったNao Horiuchiさんは、マーケティングやセールス部門との連携を前提にカスタマーサクセスの役割を分かりやすく解説していると述べている。

The Model

カスタマーサクセスについて書かれた書籍はいくつかありますが、比較的一般的なことが書かれていたり、リアリティを感じない教科書的な説明に終始していることが多いです。 一方で、『The Model』は教科書的な理路整然とした分かりやすさがありながらも、SaaSのセールスモデルの本質を感じられるリアリティがあり、入門書としては本当にわかりやすいです。 SaaSのCSを理解するにあたっては、SaaSのセールスモデル全体の理解や、CSより前のプロセス(Marketing、Inside Sales、Field Sales)との役割の違いなどを理解する必要がありますが、本書ではその全体の流れが非常に網羅的に理解できます。 重要なのは、Marketing、Inside Sales、Field Sales、Customer Successの一連のプロセスが淀みなく流れていること。何か問題が起きたときや事業フェーズが変わったときに、チームごとの役割やKPIを柔軟に変えていけること。そして、CSから顧客のリアルをFiedl Sales、Inside Sales、Marketingに還元していくことで、全体のモデルやターゲティングをよりブラッシュアップしていくこと。これらCSに求められる役割が、非常にわかりやすく書かれているので、CSを務める方にはぜひ読んでいただきたいです。

THE MODEL

もうすでに多くの皆さんがオススメされていますが、改めて読んでも良書だ

他のロールモデルの推薦本を見ると、同業者の間で「青本」と呼ばれる『カスタマーサクセス——サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』を薦める人も多かった。

現状は、この2冊が定番と考えていいだろう。

> カスタマーサクセスのロールモデルが投稿した「未経験者へのおすすめ本」一覧

最も多くの「Webマーケター」が推薦する1冊

■『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』(KADOKAWA/角川書店)

Webマーケティングのノウハウはネット上にも数多く出回っているが、未経験者へのおすすめ本として最も多くのロールモデルがピックアップしていたのがこちら。

著者の森岡毅さんが、赤字経営だったUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)を立て直した「数学的」に導かれた緻密なマーケティング戦略を紹介している。

DMM.comの武井慎吾さんは、マーケティング本の多くが「型的なノウハウ」を紹介する中、本書では森岡さんの思考プロセスそのものが学べると推薦している。

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方

目指す人・浅い人ということであれば、 例えば森岡さんの「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」が良いかと思います。 理由としては、比較的「マーケティングの本=型的なもの」が多いですが、 こちらは「マーケティング思考および基礎」について、簡潔に体系立てて纏められているので異職種の方でも理解がし易く、かつご自身の仕事にも活かして頂けると思います。 その他書籍では無いですが、「カタン」などの戦略ボードゲームは マーケティングの要素が強く活かされていますので、こういったゲームが 好きな方は、マーケターに向いているかもしれません。 後、自身の考え方として、成長していく為には書籍などの「インプット」だけでなく、同時に「アウトプット」の場が必要です。 アウトプットの場を用意することは難しいと思うかもしれませんが、 普段皆さんがやられているSNSも十分アウトプットの場にすることができます。 もし上記の書籍などでこのお仕事に興味を持った方は、ぜひ試してみて下さい。

レバレジーズの綱島章人さんも、本書を次のように推薦している。マーケティングの仕事を、組織のイチ機能ではなく「事業戦略そのものを左右するもの」と捉える意味でも、新人時代に読んでほしい本だという。

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方

マーケティングに絡んだ人なら誰でも知っている森岡さん ちなみに自分

> Webマーケター・デジタルマーケターのロールモデルが投稿した「未経験者へのおすすめ本」一覧

最も多くの「ソフトウェアエンジニア」が推薦する1冊

■『リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック』(オライリージャパン)

Webマーケターと同じく、ソフトウェアエンジニア向けに仕事のtipsを紹介するWeb記事はたくさんある。日進月歩で進化を続けるテクノロジー動向を解説するには、ネットの媒体が適しているからだ。

ただ、基本中の基本はきちんと体系化された知識が詰まっている書籍で学ぶというエンジニアは多く、『リーダブルコード』もいくつかある名著の一つとして知られている。

「他のエンジニアが読んでも美しいコード」とはどんなものかを、マイクロソフトやグーグルに勤めていた共著者が記した本書は、開発はチームで行うものという原理原則も教えてくれる。

インターンシップや新卒採用の求人サイト「InfrA」を運営するTraimmuの佐野貴之さんや、キャディの山田圭一さんは、異口同音にこの「チーム開発の基本」が学べると投稿している。

この点でも、新人時代に読んでほしい本だ。

リーダブルコード

ほとんどの開発が複数人でコードを書きながら進めていくことになるので、

リーダブルコード

コードを書いている時に、誰が書いたか分からないと思っていたら、実は数

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最も多くの「経営コンサルタント」が推薦する1冊

■『イシューからはじめよ——知的生産の「シンプルな本質」』(英治出版)

経営コンサルタントのロールモデルが、最も多く推薦していた入門書が『イシューから始めよ』。

タイトルにある「イシュー」とは、何に答えを出すべきなのか?という目的からブレることなくアウトプットを出すための仮説だ。

複雑に絡み合う問題を効率的に解決するには、まずイシューを見極め、論理的に課題解決のストーリーラインを構成する。これが、イシュードリブンで効果的に成果を出すための基本と述べている。

日本IBM 戦略コンサルティングのパートナー大塚泰子さん(※投稿時の所属はPwCコンサルティング)も、このイシューを特定することこそがコンサルティングのはじめの一歩だと投稿している。

イシューからはじめよ

コンサルタントの基本の基という感じです。 issue shaper

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ちなみに、本書は経営コンサルのみならず、事業企画やマーケター、デザイナーなどの職業に就く人たちにも愛読されている。課題解決にまつわるあらゆる仕事に必要な思考が身に付く本とも言えるだろう。

なぜ推薦者が多いのか?については、以下の記事を参考にしてみてほしい。

【証言6選】『イシューからはじめよ』で生産性が劇的に上がるワケ

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