就活シーズンの本格化を控え、就職先選びに頭を抱える若者が増えている。
「やりたいことが見つからない」という、“Will(ウィル)迷子”になっている人も少なくないだろう。
Z Venture Capitalでベンチャー・キャピタリストとして働く黄 未来(こう みく)さんは、これまで三井物産、ByteDanceと華々しいキャリアを歩んできた。
しかし、社会人になる以前から今日まで「やりたいことゼロ」だという。
明確なやりたいことを持たずして、それでもキャリアに迷わず、自分らしく働けている秘訣は何なのか。
自身のことを“やりたいことない族”と表現する黄さんに、やりたいこと「ゼロ」でもうまくいく、消去法キャリアについて話を聞いた。
—— 三井物産からByteDance、そしてZ Venture Capital。黄さんはどのようにして、やりたいことを仕事にしてきたのですか?
今の仕事は楽しく充実していますが、やりたいことかと聞かれると、少し違和感があります。
そもそも、私は「やりたいこと」がないタイプです。社会に出る前から、ずっとそうでした。
「仕事を始めてみたら、やりたいことが見つかるかもしれない」と思っていた時期もありましたが、都合よく天啓にうたれるなんてことはなく……。
むしろ、やりたくないことや苦手なことをやらないために努力した結果、現在の仕事にたどり着いたというのが本音です。
—— 黄さんにとって、「やりたくないことや苦手なこと」とはなんですか?
例えば、私は睡眠時間が足りないと、すぐに体調に響きます。だから、寝られなくなるほどの残業や飲み会はやりたくない。睡眠時間が削られることは、仕事であっても遠ざけたいと常々思っています。
「業務の一環だ」と言われてしまえばそれまでですが、それを我慢しなければいけないくらいなら、体調を崩しかねないので、たとえ給料が高くても会社を辞めます。
ほかにも、「事務作業はどちらかといえば苦手だからやりたくない」「雑な性格だから、きめ細かさを要求される仕事はなるべくしたくない」といったように、やりたくないことに時間と労力を奪われないよう全力を尽くしてきました。
私のキャリアは、やりたくないことを全力で遠ざけてきた結果なんです。
—— やりたいことがないなら、それを探すよりも、やりたくないことを探したほうが得策だと。
運動神経がそれほど良くなく、スポーツ観戦にも興味のない人が、いきなりテニスに熱中するとは考えにくいですよね。自宅で読書をしているほうが、よっぽど幸せだと思います。
「野球をやってみたら?」とか、「サッカーならできるかもよ?」とか、いろんな提案をしたところで、スポーツが大好きになるようには思えません。
周囲の人も「スポーツに興味がなさそうだから、強要するのはやめなよ」と言うはずです。
でも、キャリアに関しては、こうした強制が当たり前のようにあります。
大人は平気で「やりたいこと探しを手伝うよ」なんて声をかけますが、やりたいことがない人にそれをやるのは拷問です。はなから存在しないものを、無理やり見つけようとしているのですから。
私なら、「やりたくないことを探し、それを全力で遠ざけよう。そうすれば、やりたいことがなくても幸せなキャリアになるよ」と声をかけます。
私は、やりたいことがなくても、自分が理想とするキャリアをある程度は築くことができました。
自分のことを、やりたいことがない人のパイオニアだと思っています。
でも、だからこそ、やりたいことがない人の気持ちが分かるんです。