就職サービスのワンキャリアが2021年6月に公開した「東大京大23卒就活人気ランキング」では、TOP30社のうち13社がコンサルティング会社に──。
近年、コンサルタントは就職で人気職種の一つになっている。NewsPicksがdodaキャンパスの協力で調べた「東大・早稲田・慶應の大学生が就職で希望する職種」でも、TOP5にコンサルの名が挙がっていた。
この人気は、やりたいことが定まらない学生の「幅広い業界のビジネスを見てみたい」「将来つぶしが利きそう」といった考えに支えられている側面もあるだろう。果たして実態はどうなのか。
人事労務領域のSaaSで急成長するSmartHRでCOO(最高執行責任者)を務める倉橋隆文(くらはし たかふみ)さんは、新卒でコンサル大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーに就職した経験から次のように語る。
「コンサルの仕事は確かに刺激的で、将来の選択肢を広げる一助にもなりました。でも、いち早く『ビジネスを動かす人』になりたいなら、別の就職先を探すでしょう」
倉橋さんがこう話す理由とは? キャリアを追いながら、コンサル就職のリアルを学ぼう。
私は就職する前、大学院に通っていました。いま22歳だったらというテーマでお話するなら、まずは当時の自分に「大学院に行かず就職しなさい」と伝えたいです(笑)。
大学院に進学したのは、高校の時から大好きだった物理の世界で、研究者になろうと思っていたから。物理学の発展に人生を捧げようと研究室に入ったのですが、1日中実験室にこもって、孤独にデータを集める生活がどうにも合わなかったんですね。
そこから方針転換してマッキンゼーに就職したのは、ほとんど偶然です。
就活をしたことがなく何も分からない中で、同級生に「倉橋は論理的だから、コンサルが合うんじゃないか」と言われまして。それを真に受けて、コンサル業界で就活を始めました。
結果、新卒で入社したマッキンゼーの仕事は、とにかく刺激的で楽しかったですね。
一般的に、若手コンサルタントは「早めに専門領域を決めなさい」とアドバイスされます。だから、配属されるプロジェクトも、業界やジャンルが似通ってくる。
でも、私はビジネスアナリストとして、幅広い業界の案件にかかわらせてもらえました。おかげで知的好奇心をくすぐられる機会が多かったのです。
研究とは違ってチームプレーなのも性に合っていたし、担当案件が変わるたび最短で知識を得なければならないので、基礎的な学習スキルが身に付きました。
これはビジネスパーソンとして、とても汎用的なスキルです。当時の私なら、コンサルに就職したいと考える学生に、無条件でお勧めしていたと思います。
ただし、もしキャリアの目標が「ビジネスを動かす人になる」ことなら、コンサルより、実力主義で年功序列ではない事業会社に就職したほうが近道になる。
今の私がこう言えるのは、MBA留学と楽天での経験を通じて、経営のリアルを叩き込まれたからです。