社会人の先輩たちが、自らの仕事やキャリア形成に深く影響を与えた書籍をピックアップし、その後の考えや行動の変容を実体験とともに紹介する企画、「ロールモデルの本棚」。
飯泉早希(いいずみ・さき)さんは、「規模は小さくても若手のうちから意思決定する経験を積みたい」と新卒でITベンチャーのDeNAに入社。プロダクトマネジメントを中心にキャリアを築き、現在はオーディオブック(書籍の朗読を録音した音声コンテンツ)配信サービス「audiobook.jp」を展開するオトバンク取締役を務める。
入社1年目からチームリーダーを担い、4年目にはマネージャー職に就くなど、責任ある立場に挑んできたが、チームメンバーへのフィードバックに悩んだり、自分の強みを見失ったりした時もあったという。
それらの壁をどう乗り越え、プロダクトや事業をリードしてきたのか。
「今オーディオブックに携わるのは、『本に人生を変えてもらった実感』があるから」と語る飯泉さんに、キャリアの転機を支えた5冊を教えてもらった。
—— 飯泉さんはDeNA、メルペイとITベンチャー2社でプロダクトマネージャーを経験した後、オトバンクで取締役をしています。転職の理由は何だったのですか?
前職のメルペイでは同僚にも恵まれ、素晴らしい環境でした。
一方で、DeNA時代の上司に「事業責任を背負って初めて見える景色がある」と言われたことが、長い間心に引っかかっていました。事業のPL(損益計算)責任がない状態であれこれ思うことは、楽な立場から考える安易な理想に過ぎないのではないか、という後ろめたさがあったのです。
あらゆるトレードオフを勘案して意思決定をし、決めたことを正解にすることにコミットしないと、怠け者の自分は考え抜く深さも精度も上がらないと焦ってもいました。
そんな折に、もともと知り合いだったオトバンク代表の久保田(裕也さん)から声をかけてもらい、オーディオブックの配信プラットフォーム「audiobook.jp」の事業責任者として働くことになったのです。
—— オーディオブック事業に携わっていますが、飯泉さん自身はよく本を読みますか?
小学生の時から、図書館で週に10冊くらい本を借りて夢中で貪り読んでいたほど、自分にとって本は大きな存在です。

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社会人となった今は、年に30〜50冊ほどに減ってはいるものの、本がキャリアの支えとなったことも何度かあります。
特にDeNA時代はキャリアに迷走していた時期で、手に取った本からヒントをもらうこともしばしばありました。
そもそもDeNAをファーストキャリアに選んだのは、規模は小さくてもいいので、若手のうちから裁量権を持って物事を動かす経験を積みたかったから。
特にIT業界は市場の変化もプロダクトの開発スピードも速く、年齢に関係なく意思決定と実行が期待されているので、ITベンチャーのDeNAは自分の性に合っていると考えたのです。
しかし、入社したものの、チームを率いる難しさに頭を抱えたり、自分のキャリアに自信が持てなくなったりと、何度も壁にぶつかりました。