学びたい人こそ「社内」に目を向けろ!意義ある読書会のすすめ

学びたい人こそ「社内」に目を向けろ!意義ある読書会のすすめ

    忙しい毎日で、会社と家の往復ばかり。もう少しインプットしたいけど、スマホを見るとついSNSやゲームでダラダラ時間を溶かしてしまう……。

    ビジネスパーソンのみなさんが「定時までに帰れること」をサポートすべく、業務効率化やキャリアアップに役立つ新刊ビジネス書の著者をお招きして、今日からお仕事にちょっと役立つノウハウやTipsをインタビュー。

    ポッドキャスト番組「定時までに帰れるラジオ」(#テイジラジオ)の一部をダイジェスト版でお送りします(2月23日配信)。

    目次

    このままじゃ食えない、学び直すしかなかった

    野上:今回は小林さん自身のキャリアも深掘りしながら、「どうやったら個人がリスキリングをしていけるのか」という話を聞いていこうと思います。現在、小林さんはパーソル総合研究所で上席主任研究員として勤務しつつ、執筆や講演活動も精力的にされています。これまでどんなキャリアを歩んで来られたのでしょうか?

    パーソル総合研究所上席主任研究員 小林祐児さんプロフィール

    小林:私はもともと、新卒でどこにも入社してないんですよね。NHKの放送文化研究所で働いてはいたんですが、契約スタッフで、いわゆる下働きでした。世論調査のために個人宅のピンポンを押して回って、「アンケートお願いします」なんてやったり。でもそれだと、やっぱり食えないっていうことがわかりまして……(笑)

    大学院を出ていたので、アカデミックキャリア、つまり大学の研究職を目指すキャリアもあったのですが、そちらも食えない。本当に差し迫ってリスキリングする“しかなかった”んです。

    「とにかくきちんと働こう」ということで、次にマーケティングリサーチを選びました。同じ調査とはいえ、世論調査とは異なる部分も多く、ある種のアンラーニング(これまで培った知識ややり方を手放すこと)はせざるを得なかったです。

    そこではお茶やふりかけ、シャンプーにポン酢まで、ありとあらゆる商材を調査したのですが、「よく考えたら、どのお茶が売れてもあまり自分に関係ないな」と思い直しまして(笑)。より社会性の強い、従業員調査や労働系の調査ができる今の研究所に移ってきました。

    興味と感心はあったのですが、人事や会社経営に関する知識はほとんどなかったので、改めて学び直した、というキャリアですね。

    学びたい人こそ「社内」に目を向けろ!意義ある読書会のすすめ
    Hispanolistic / Getty Images

    野上:少し話が逸れるんですけども、小林さんのように、業界を超えて転職するのも意外と難しいんじゃないかな?と思うんです。そのあたりはどうやって接続されたんですか?

    小林:振り返って自分がよかったなと思うのは、アンラーニングと言ってもすべてを入れ替えるわけではなかったことです。やはり一定の統計的な基礎知識、調査の基礎知識は、土台になります。土台となる部分を生かしながら、対象と周辺知識を変えていく――そんなキャリアでしたね。

    学び合う他者を「社内」で探そう

    野上:ラーニングブリッジング、それから、ソーシャルラーニングというキーワードも前回のお話にありましたが、その中で「自分1人で独学でやるんじゃなくて、周りを巻き込んで勉強会や読書会をやったらどう?」という話がありました。小林さんもご自身で読書会をされていると著書にも書かれていますよね。

    小林:これまでやってきたのは、自分が所属する組織、もしくは他部門を含めた、会社内での読書会が多かったですね。その方が声がかけやすいですからね。今はZoomなど遠隔会議のシステムが当たり前になって、やりやすくなったと思います。

    野上:ソーシャルラーニングは、決して社外に目を向けるという意味ではなく、社内でもいいんですね?

    小林:はい、むしろ社内でつながるのはとてもおすすめです。ある程度の規模の会社に勤めている人であれば、他部署の人で喋ったことがない人、あまり絡んだことがない人ってたくさんいると思うんですよ。それもある種、ソーシャルラーニングのためのリソースですよね。

    特に若い方で、社外の勉強会や交流会に出ることは好きだけど、社内の人には見向きもしない人ってたまにいるんですが、結構もったいないことをしてるなぁと思います。同じ会社という共通点はありつつも、自分とは違う目的意識や知識、スペシャルなものを持っている人ってたくさんいるはずですなんですよね。そうした方とつながるためのツールとして、読書会や勉強会はいいきっかけだなと思います。

    野上:小林さんの調査研究で、「日本人はシャイで、初めての人とつながるのが苦手な国民性だ」とありましたけど、今のもそれと結びつく話でしょうか?

    小林:まさにそうですね。例えば、電車の中で隣に座った人に話しかけるって、日本人はまずやらないですよね。

    アメリカでもそこそこ、北欧だとまず話しかけるそうなんです。常識や環境からして違うので、初対面の人、見ず知らずの人に話しかけるハードルが、日本人は異常に上がっちゃっている。その中で「じゃあ話しかけやすい人って誰かな、つながりやすい人って誰かな」って考えた時に、社内のあまりまだ知らない人って、何かしら共通の話題があって話しやすいですよね。

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    ljubaphoto / Getty Images

    続けなきゃ! と思わなくていい

    野上:いざ他部署の人と読書会や勉強会をやってみたいと思った時、具体的にどういうことからすれば?

    小林:まずは呼びかけてみたら、数人は集まると思いますよ。わかりやすいのが、ChatGPTが出てきた時。あの時に、ChatGPTをみんなで学ぶ場が自然発生的に起こった組織と、起こらない組織ってはっきり分かれたんですよ。「どんな職業でも使えそうだな」と一瞬思わせてくれるツールじゃないですか。実際に使えるかはわからないけれど、判断するためにもちょっと学ばなきゃいけないですよね。興味がある人がたくさんいる話題に対し、みんなで集まって学ぶというのは、きっかけとして、実はすごくスムーズなんです。

    そういう社会的なトレンドや、業務に近い領域をきっかけに声かけてみると、そこそこの人が「いいね」って言ってくれると思いますよ。最初から続けよう、続けなきゃと思わなくていいんです。

    野上:どうしても、「第6回までありますよ」とか「何時から何時まで」とかきっちりしたものを見ているので、自らやろうとすると「続かなかったらどうしよう」「しっかりやらなきゃ」と思っちゃいますよね。小林さんは長く継続されてますけど、就業時間後や土日など、どれぐらいの時間帯がおすすめですか?

    小林:一般的には夜の方が集まりやすいのはあると思います。こういう会はだいたい朝か夜のパターンが多いんですが、朝は誰かが必ず起きられない問題が発生します(笑)。夜は夜で、育児を抱えている方だと難しい場合もありますね。

    ただ、みんなのことを常に考え続ける、きっちり全員参加でやるとハードルを上げすぎない方が気楽にできていいと思います。最初から続けることを目的にしなくていい。何人か集まった中から、「あ、この人とは仲良くなれそうだな」とか、「今後仕事を一緒にしたいかも」という人が数人でも現れてくれれば御の字なので。それでまた、新しいテーマで新しいコミュニティを作っていけばいいと思います。

    (続く)

    このあとは、こんな話をしています。

    • 小林さん自身が今、リスキリングしてること

    • アンラーニングを繰り返したら熟練しないのでは?

    • 今注目しているテーマは「管理職の罰ゲーム化」



    フルバージョンは以下のポッドキャストからお聞きください!



    (文:鍬崎拓海、デザイン:高木菜々子、編集:山崎春奈)