韓国の就活生「休学してTOEICの勉強しないと…」

韓国の就活生「休学してTOEICの勉強しないと…」

    就職活動中のJobPicks編集部インターン生が、リアルな体験や思いをつづる「就活生日記」。今回は、韓国で留学生活を送る中で「休学している人が多い」と感じたことをきっかけに、韓国人の友人と語り合った互いの国の就活事情から。

    日本以上に就職が厳しい韓国では在学中の成績以外の「スペック」が求められているようです。就活でマストとされるスペックとは一体どのようなものなのでしょうか。

    目次

    韓国の就活生「休学してTOEICの勉強しないと…」

    「スペックがないと就活が...」6割が「勉強」理由に休学

    日韓の交流サークルに入り、他の学生の自己紹介を聞いていると一つ気になることがありました。

    「大学2年生の21歳です」「24歳で、現在4年生です」

    初めは浪人生が多いのかな、という印象を持っていました。

    でも、実際に話を聞いてみると日本の学生に比べて休学する人が多いことが分かりました。経営学部の友人は「全学部生の半数くらいが休学している」と教えてくれました。

    統計を調べてみると、韓国の大学休学率は約55.9%(2020年)となっているのに対し、日本は約2.1%(2021年)でした。休学している人が多いという印象を受けるのも納得がいきます。

    男性には兵役が課されているため、それが理由で休学する人も多いですが、女性だけの数字を見ても36.8%と日本の17倍以上でした。

    韓国の就活生「休学してTOEICの勉強しないと…」
    Jae Young Ju / GettyImages

    今回インタビューした友人の中にも、休学して日本に1年間留学をした人やTOEICの塾に通うために休学を選んだ人がいました。

    「スペックがないと就職が難しいから、塾で資格や語学の勉強をするんだよ」と、皆口を揃えて話します。

    少なくとも私の周りで「勉強のために」休学するという人を見聞きしたことがなかった(そもそも休学自体が珍しい)ため、就活事情の差に驚きました。

    韓国では、TOEICで800点程度ないと大企業に就職するのは難しいといいます。日本に留学していた友人は帰国し、復学するまでTOEICの塾に通っています。「日本の大学生はTOEICを受けたことがない人がいて驚いた」と話していました。

    TOEICに限らず、スペックのために本気で勉強する人がいるのが当たり前というのは大きな違いだと感じました。

    就職率は60%に停滞、海外志向に

    高いスペックがないと就職できないという韓国の実態はどうなっているでしょうか。調べたところ、過去5年間の就職率は60%にとどまっていました。また、大企業と中小企業の給料には2倍以上の開きがあり、大企業志向が高いことも就職率の低さの一因になっているようです。

    「大企業に入るには英語などの語学や資格の勉強は不可欠」と、現在まさに就活に励んでいる友人は疲れた顔で話します。

    こうした韓国国内での就職難から、海外での就職を希望する学生も増えています。特に日本は、日本語と韓国語の文法が似ているため人気が高く、韓国の学生が日本の企業とマッチングできる就職サイトも登場しています。

    私が所属するサークルは、経営学部や理学部など語学系ではない学部にいても、日本語を流暢に話せる学生がほとんど。海外就職のニーズが増えていることが関係しているように感じました。

    深夜2時ごろ、私が留学生活を送っている寮の中を歩いていると、テスト期間ではなくても勉強している大学生がたくさんいます。最近は日本でも長期のインターンシップや課外活動を書くよう求める企業が増えています。一生懸命勉強している同年代の姿を見て、私ももっと頑張らなければと気を引き締めました。

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    yanguolin / GettyImages

    新卒重視の日本で休学は無理?

    今回の友人へのインタビューを通じて一番感じたのは、日本ももっと休学しやすい雰囲気になればいいのに、ということでした。

    休学率が高い背景には、大企業を志望する学生間の競争が激化し専攻以外の勉強やインターンシップ経験が必要なこと、男性には兵役が課されていることなど必然的に休学率が高くなっている現状があることがわかりました。

    もちろん、日本でも資格取得のために勉強をしたい人や留学を希望する人もいます。しかし、新卒ブランドが重視されるなかでなかなかそれを実行できず、自分のやりたいことと折り合いをつけながら授業を受けている人が多いです。

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    Prostock-Studio / GettyImages

    私自身も長期インターンシップへの参加や語学学習をもっとしたいと思って休学を意識したこともあります。でも、日本の新卒に対する価値の高さを考えると勇気を出せず諦めました。

    韓国のように、自分のやりたい勉強や社会経験を積むために休学をするという雰囲気があるのは素直に羨ましいと感じました。

    (文:中井舞乃、デザイン:高木菜々子、編集:竹本拓也)