平山 尚

平山 尚

株式会社カヤック・ 正社員
  • ゲームクリエイター
  • 組込みエンジニア

経歴



  • 現在
    ゲームクリエイター株式会社カヤック正社員


  • 組込みエンジニア株式会社セガ正社員


  • 京都大学 工学研究科合成生物化学専攻・修士課程修了


  • 京都大学 理学部・卒業

職業の経験談

  • 仕事の中で、最も楽しいと感じる瞬間はどんな時ですか?

    家族に遊んでもらえた時

    以前スマホ向けのゲームの開発に参加した時のこと。


    発売してみると、妻と当時7歳の娘も遊んでくれていた。

    過去に家庭用ゲーム機向けの製品を出した時には、

    身内で遊んでくれた人はいなかったので、

    まず身内が遊んでくれるということが新鮮だった。

    「基本無料のスマホ向けゲーム」

    というものがいかに間口の広いものなのかを、

    その時に初めて実感した気がする。


    そして、家族からは「ここがこうだったらいいのに」

    といった改善要求が次から次へと出てく...

    る。 夕方に一時帰宅した時に言われたことを、 夜に会社に戻って改善し、 次のアプリ更新に反映させたこともある。 「良くなった!」と喜ばれたりすると、もうたまらない。 こんな体験はそうそうできない。 今携わっているゲームも無料のスマホ向けゲームで、 しかもより手軽にできる内容なので、 当時4歳の息子も遊んでくれていた。 「4歳でもできる内容になっているな」 と確認もできるし、単純にうれしい。 遊ぶ様子を見ていると、どこで引っかかるか、 どこがわかりにくいかなどもわかるから製品作りにも役立つし、 逆に、「うちの子こういうのがわかりにくいんだな」 と子供の特徴がわかったりする。 これもたまらなく面白い。



  • この仕事をやっていて、眠れないほどしんどい瞬間はどんな時ですか?

    不具合を入れた時

    「眠れないほどしんどい」が「眠る時間を取れない」

    という意味なのか「精神的にキツくて眠れない」の意味かは

    わからないが、とりあえず前者はそれほど多くない。


    開発は長期戦なので、「物理的に眠れない」、

    つまり労働時間が長い状況を続けることはできないからだ。

    労働時間の面でも、家庭と健康を破壊しない程度に

    抑えざるを得ないので、労働時間の面で

    「眠れないほどしんどい」ことは少ない。

    しかし、精神的にキツいことはそれなりにある。


    私はプロ...

    グラマなので、失敗と言えばバグなのだが、 発売するまでのバグは大して問題ではない。 発売前にはそれなりに検査をするので、致命傷になる バグを入れたまま売ることはあまりないからだ。 しかし、スマホ向けゲームの場合、発売後も更新が続く。 すでにお客さんがついていて収益がある状況で、 不具合を入れると経済的にダメージがある上に、 お客さんの支持を失ってしまう。 もちろん検査はした上でアプリ更新をするのだが、 検査で全てが見つかるわけではない。 私がコードをいじったことでどんな影響が及び得るか、 は私が一番知っている。 逆に言えば、私以外にはわからないのであって、 私が影響範囲を見誤れば、 下流の検査をすり抜けることはいくらでも起こる。 アプリ更新後にお客さんから不具合の報告を頂いた時はかなり慌てる。 絵がちょっとおかしい、という程度ならいいが、 遊びを妨げるような不具合だと夜中であっても慌てて 修正を始めることになる。 今の時代、ノートPC一つあれば仕事ができるので、 会社に行く必要もない。布団の中で作業開始だ。 twitterその他でお客さんの反応を見ているので、 夜中に発覚することも多いのである。 そしてどうにか修正しても、 検査や公開作業など諸々あってすぐにお客さんに 届けられるわけではなく、ドキドキは続く。 本当にその修正で直っているのか100%の確信が持てないケースもあり 気が気ではない。 また、広告収入が重要なタイプのゲーム製品の場合、 広告周りで不具合を入れると 想像を越える損失につながるケースもあり、こちらも心臓に悪い。 広告収入がメインになるのは、手軽に遊べるタイプのゲームが多く、 開発メンバーは少人数だ。 実質1人というケースも多く、 自分の検査で漏れた不具合はそのまま世に出てしまう。 本当に心臓に悪い。



  • 同業の先輩や同僚にアドバイスされたことで、最も仕事上の教訓になったことは何ですか?

    「そういうんじゃねえんだよなあ」

    これはもう20年も前のことになる。

    前の会社に新卒で採用試験を受けた時のことだ。


    私は自分にゲームを考える能力があるとは全く思えなかったので、

    技術面で貢献する仕事ができればいいと考えていた。

    なので「プログラマとして技術力を高めて、共通化できる部分を共通化したり、

    開発ツールを整備したりして、良いものを効率良く作ることに

    貢献したい」みたいなことを言ったと思う。


    それに対して、面接官だった後の先輩が、

    「そういうんじゃねえんだよな...

    あ」と言った。 私が同じ立場ならそう言うかはわからないが、同じように思うだろう。 どういうことか。つまり、我々は遊びを作っているということだ。 工業製品ではないし、必需品ではない。 ソフトウェア工学の知見を活かして 製品の効率と品質を上げなければまともに発売できない、 という現実はともかくとして、 我々は遊びを作っているのである。 効率がどうとかは、ゲームが面白いとなってからの話であり、 面白くなければただのゴミなのだ。 結局、参加しているメンバーが面白いと思っていないゲームは つまらないのだし、 面白くないものをいくら効率良く不具合少なく作っても 売れないしお客さんにも愛されないのである。 「いやそれは企画職の仕事だろ」と思う時は正直あるが、 仮にそうであったとしても、ゲームが売れなければ自分も 不幸になるのであって、その境界線を守ることに大した意味はない。 その後何年か経って会社も別になった後、 その先輩と会う機会があった。 「おまえ、本当遊びをわかってねえな」 と言われた。 たぶん今会ってても同じことを言われると思う。 結局私はプログラマの領分をあまり出ず、 言われたものを上手に作ることに集中してしまいがちだ。 ある程度大きな規模の開発なら、 むしろそうすべきだったりもするのだが、 そういう現実があるからこそ、「そういうんじゃねえんだよなあ」 という言葉が思い出されることには大変な意味があった。 そして今、ほとんど一人で製品の改善作業をやる状況になって、 それが骨身に染みている。 技術的な側面はいろいろあるが、「そういうんじゃねえ」。 これは遊びなのだから。



  • 転職や就活で、この職業を目指す未経験の方におすすめの書籍は何ですか?理由と合わせて教えてください。

    『トレードオフ―上質をとるか、手軽をとるか』ケビン・メイニー

    自分が作ろうとしているものが、誰に何の満足を与えるものなのか?

    という問いはゲームに限らず必要なものだろうと思う。


    大抵のゲームは、核になる小さな遊びから出発して

    開発することと思うが、

    なにせそれだけでは不安だし、

    それを面白がってくれる人以外にも売りたいという欲が出てくるので、

    どうしても要素をごてごてと加えたくなる。

    その結果、何が大事だったのかを見失いがちだ。


    そういう時には、とりあえず「上質か手軽か」

    と問うてみると、出発...

    点として便利だと思う。 ゲームで言えば、選ばれたコアゲーマーに最高の体験を届けたいのか、 もっと幅広い人達に気軽な楽しみを届けたいのかを、 まず決めろ、ということだ。 この本には「中途半端にいい所取りをしようとすると失敗する」 という例がたくさん出てきて、参考になる。 「一人のお客さんからいくら頂く製品なのか」 ということによって作る物も作り方も変わってくるわけで、 大変便利な視点だと感じる。



  • この職業について未経験の人に説明するとしたら、どんなキャッチコピーをつけますか?

    遊びでお金をもらう仕事


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