好奇心をくすぐられるような出会いがつづく
水産業をカッコよくーーそんな目標を掲げて活動するフィッシャーマン・ジャパンという団体でアートディレクターをしています。
水産業、と一口に言っても、漁師さん、水産加工会社さん、仲買人さん、魚市場で働く人々、そして運送する人にそれらを支える行政の人たち、、
それぞれの立場で、みなさん誇りをもって仕事をしていらっしゃいます。
そんな彼らとプロジェクトを進めるには、まず「学ぶ」ことから始まります。
その地域でどんな魚がとれているの?それって...
どういう漁師さんがどんなふうにとってくるの?それを売るにはどの市場にもっていくの?さらにそこにたずさわる人はどんな人なのーー? 一人一人を話をしていくと、だんだんその街の水産業だけでなく、その町の文化やユニークさが見えてきます。例えば私が拠点を置いている宮城県石巻では、東洋一大きな魚市場があり、さらにその近くには水産加工会社がずらりとならんでいます。大型の船が多数入船し水揚げを行う超ビッグな産業なのです。 一方で現在コミットしている静岡県西伊豆町では、実は定期的に水揚げをして街に魚を降ろしているのは小型の定置網1隻のみ。さらに水産加工会社は1社だけで、魚市場は存在しません。 どちらが良い、というわけではなくて、そういった産業の規模やシステムが違えば、流通の仕組みも哲学もちょっと違う。そんな差異がその街のユニークネスになっているのです。 どの街に行っても、その現場で働く方々のお話は苦労も感じられますが同時に希望に満ちていることもしばしば。さらに水産業は閉鎖的な産業と言われていますが、いざ話を伺うとオープンに一緒に新しい取り組みに前向きになってくださる方も多く、チームができていく過程はまるでRPGゲームをプレイしているかのようにワクワクします。 「いつか昔操縦してたでかい船、もう一回動かしてぇんだ」 「もっとフレキシブルな職場にして、もっといろんな人が働ける環境をつくりたいんだ」 「子供たちによりよい状態で継がせてあげたいんだ」 海の現場には、夢を語る人たちがいます。彼らから今も水産業の仕事だけでなく、地域という目線で未来を考えること、チームで同じ方向へ向かうこと、短期的な予測ではなく、次世代、さらにその先の世代へとバトンをつなぐことを学びます。 グラフィックデザイン、マーケティング、PRなど、自分が生業にしていることを本質的に「未来をつくること」へつなげるには、そういった産業の現場にあるスピリットを自分の中でも育てて行くことが大切なのではないかと考えています。 そんな学びと驚きの多い水産業の世界を回遊できるのが、この仕事で一番楽しいことです。