大前提として会社と従業員の両方に対する愛情を持ちながら、1人1人の力をかけあわせた会社のパフォーマンスを人の面から最大化すること。
会社と社員を望む場所に送り届けるコーチ
ヒトの成長とビジネスの成長を同時に実現するドライバー
CHROとは、Chief Human Resources Officerの略で、最高人事責任者と呼ばれる。人事・採用全体を統括しつつ、社員の最適配置やキャリア支援の方針決めなど、「会社と社員の成長」双方に貢献する。従来の人事部長とは異なり、CHROは経営戦略を実現するための組織・人事施策を計画、主導する。
仕事の中で、最も楽しいと感じる瞬間はどんな時ですか?
マネジメントが取り組む経営課題は山ほどありますが、どんな経営課題もその解法が言語化できると、良くも悪くも課題解決が再現性を持ちます。
再現性を持つということは、同じやり方をすれば真似ができるようになり、つまりはコモディティ化して価値を失うことを意味します。
世に言うベストプラクティスと呼ばれるものや定石と呼ばれるものは、言い換えるとマクロでそこに収斂していくものであり、模倣可能なコモディティ。知らなければ負けますが、知っても勝てるも...
のではありません。 そんな企業活動の中で最も掴みどころがなく言語化しづらいのが、人の営みである企業文化であり組織だと感じます。つまり最もコモディティ化しにくい。 定石化できないことで、最後に残る企業の競争優位の源泉とは、人と組織に収斂していくものなのかもしれません。 その意味で、常にゼロベースで課題解決に取り組める人と組織の領域は、思考の自由度は無限。タフですがチャレンジングでとてもやりがいのある仕事です。
この仕事をやっていて、眠れないほどしんどい瞬間はどんな時ですか?
人事制度というのは、概ね正解がないことが多く、会社のカルチャーや大事にしていることを軸に意思決定していく必要があり、かつ、メンバーの生活にも直結する、非常に難しいものだと思っています。つまり、いろいろ検討するけれども、最後は意思に基づいた「決め」の話であることが多く、考え方や生活環境、プライベートの状況などは人それぞれなので、全員が絶対的に満足する・納得する制度を作ることは不可能に近いと思っています。全員が満足するものではなく、その会社...
が大事にする軸をしっかり人事制度に反映する必要があると思っています。 また、何をもってフェアとするのかというのも非常に難しいです。例えば、最近議論したのは、通勤交通費の廃止についてです。ユーザベースでは「働く場所は自由」となっているので、必ずしもオフィスでなくても働けます。オフィスに来ると通勤交通費がかかる、家で働くとWifi代がかかる、電気代が高くなる、など人それぞれのニーズがあります。住む場所や働く場所は自分で選べる前提でいうと、全員に一律の手当を支給し(何に使うかは個人の自由)、通勤交通費は廃止するということを決めました。そもそも遠くに住んでいる人にたくさん交通費を払うのはフェアなのか?今まで当たり前のように慣習的に払っていましたが、これも突き詰めると難しい問題です。 また、どこまでのアンフェアを許容するのかというのも難しい問題です。認可保育園に入れなかった人向けに「保育料補助制度」というものがあります。これは特定の従業員にだけ特定の手当を出すもので、子供のいない人からしたらアンフェアな制度です。でも一方で、こういった補助がないと働き続けられない日本の現状もあります。 これらは一例ですが、このように正解のないことを決めていくとき、そしてそれが全メンバーの生活に大きく関わるとき、すごく悩むし、いろんなご意見を頂くと正直しんどいときもありますし、一方で、みんなで新しい制度を作り上げるワクワク感もあります。
転職や就活で、この職業を目指す未経験の方におすすめの書籍は何ですか?理由と合わせて教えてください。
「いい会社」の定義をアカデミックな観点と実際の企業を用いて本質的な解説をしてくれている書籍です。例えば「ビジョナリー・カンパニー」の中では財務的業績がいい企業を「いい会社」としており、株式会社である上では事業を成長させ、利益を上げるということは絶対的な正義ですが、財務的に大きな飛躍はないが長く事業を継続している企業もあります。また昨今ではメンバーの「働きがい」について語られることも多く、著書の中では、以下の点が「いい会社」の条件とし...
ています。 1.時代の変化に適応するために自らを変革させている 2.人を尊重し、人の能力を十分に生かすような経営を行なっている 3.長期的な視点のもと、経営が行なわれている 4.社会の中での存在意義を意識し、社会への貢献を行なっている 「いい会社」の要素を歴史的背景をもとに本質的に理解をすることができる一冊です。
同業の先輩や同僚にアドバイスされたことで、最も仕事上の教訓になったことは何ですか?
人事という仕事は、一般的に事業を裏方として支える、支援するというイメージがあると思います。CEOや事業責任者が決めた事業戦略に沿って、それを実現可能にするための人事戦略を考えるというもの。しかし、不確実性が高く、テクノロジーの変容によって競争環境が激変する時代には、人や組織が戦略を規定してしまうということも少なくない。
世に言う戦略人事という言葉には、この課題に対して戦略的、主体的に手段を講じるという意味合いがあるのかもしれません。そ...
の意味では似ているのかもしれませんが、私が頂いたこのアドバイスには似て非なる2つの意味があります。 1つは、実態として事業推進の最前線にいながら人事をやるからこそ、人事が何をすれば良いか?が見えてくる、人を動かすことができる、ということです。珍しく話かもしれませんが、実際に私は人事責任者でありながらビジネス推進の責任者も担っています。 もう1つは、ビジネス推進と同じように多様な手段を講じることができるというメンタリティが人事には大切だということです。事業やビジネスを推進する手段としては人、モノ、金、テクノロジーなど様々な観点で手段を検討し、変化させることが常ですが、人事は変化を嫌がられる、嫌がる傾向があるためどうしても保守的、前例主義になりがちです。しかし、人、モノ、金、テクノロジー、時間、場所などの様々な観点で、多様化する働き方をうまく取り入れた人事施策の打ち手は、事業推進の打ち手以上に成果に繋がるものが出てくるかもしれません。 私は人事の専門家ではありません。ですが、事業推進の主体者でありながら人事・組織を動かすことによって、経営のドライブに寄与したいと日々考えています。
この職業について未経験の人に説明するとしたら、どんなキャッチコピーをつけますか?
ヒトの成長とビジネスの成長を同時に実現するドライバー
人事・採用戦略のトップとして、現時点の経営課題の解消から、中長期計画の実現に向けた組織・人事戦略の策定までを行うため、これまでは人事や採用業務の経験豊富な人が就くケースが多かったようです。
しかし、近年はジョブ型雇用へのシフトを進める企業が増えつつあり、社員教育の施策を打つ際も「現場の業務理解」が欠かせなくなりつつあります。それゆえ、事業部出身の社員をCHROに抜擢する企業が出始めており、今後、その流れは加速していくと見られています。
人事・採用戦略は事業成長に直結するものゆえ、このポジションでは専門知識に加えて、各種業務のリアルを知る動きも求められるようになっています。