事業としての結果を出して、メンバーに還元されるとき
COOの役割は掲げたゴールをしっかり実現することに尽きると思っていますが、その過程では色々な苦悩があります。それをやり遂げた結果、ついてきてくれたメンバーに報いることができる瞬間(報酬でも経験でも)が一番楽しい、というよりホッとできる瞬間です。
全てを差し置いて、事業の結果にコミットする職業
Vision&Valueを実現する影の立役者
The man in the arena | アリーナに立つ人
COOはChief Operating Officerの略で、自社が行う実質的な業務執行を統括する。経営戦略の実行に向けた指揮官のような役割を担い、経営側と現場の架け橋となって事業運営を主導する。
CEO(最高経営責任者)が描いた中長期の経営方針を元に、COOは現場が目標達成できるように日々の業務をサポートする。具体的には、OKR(目標と主要な結果)のような目標管理手法を用いて設定したゴールをクリアするための支援や、そのための人員計画の作成などを行う。
役職上、CFO、CTO、CSOなどの他のCxO(経営陣)とは異なり、特定の担当領域を持たないことが多い。そのため業務内容を明確に定義することは難しく、「何でもこなせるジェネラリストが向いている」との声もある。
さまざまな事業部と連携するケースも多くあり、経営上重要な意思決定の場合、管理職を含めた現場とのやりとりでやむをえずメンバーに不合理を強いることもある。それゆえ「時には現場に苦労を強いる決断をしなければならない意思の強さも求められる」と話すCOOもいる。
企業の所有と経営(執行)を切り分けて考える米国型企業統治体制が日本でも普及するとともに、COOのポジションは増えつつある。今後より一層経営が複雑化・加速化する中で、執行役一人一人の負担を減らすという流れがあるようだ。
日本の法律ではCOOについての規定はなく、企業経営でどこまでの権限を持つのかは明確に決められていない。また、社長や副社長と同じく設置が義務付けられているわけでもない。一方で、取締役や代表取締役は会社法によって業務執行の責任を負う。
現在では大企業だけでなく中小企業でもCOOを任命する企業が増えており、大企業の事業責任者から中小企業のCOOへ転職するというキャリアパスも見られる。
その際、経営や事業の数字を背負ってリーダーシップを発揮した経験が評価されるという。
COO経験者によると、「特定の事業部にいた頃よりも数字に対する責任が増す」という。OKRを回す中で、常に数字を達成するための方法を考える習慣がつく。
加えて、「一つの部署の成果の最大化」と「会社全体の成果の最大化」は必ずしも一致しないという。COOでの経験により、会社全体にとって最適な選択を考えることが可能になる。
業務をこなす中では、必ずと言っていいほど問題が発生する。大抵のトラブルは「ヒト」に起因するものであるという。そのため、トラブルに対処する中で相手の立場を理解して粘り強く対処する力が身につくようだ。
COO(最高執行責任者)の経験談の中から、一部を抜粋して紹介しています。
仕事の中で、最も楽しいと感じる瞬間はどんな時ですか?
COOの役割は掲げたゴールをしっかり実現することに尽きると思っていますが、その過程では色々な苦悩があります。それをやり遂げた結果、ついてきてくれたメンバーに報いることができる瞬間(報酬でも経験でも)が一番楽しい、というよりホッとできる瞬間です。
この仕事をやっていて、眠れないほどしんどい瞬間はどんな時ですか?
多くのCOOを見ていて感じるのは、CEOのEdgeが強ければ強いほど、献身的な人が多い。CEOをサポートしてあげたいという思いから、できる限りのタスクを拾って実行していく。これが行き過ぎると業務領域が非常に広がる中で実務には入り切れずに、意思決定はCEOに委ねてしまうので、意思のない何でも屋になりやすくなってしまう。これによってCOOが自分のEdgeが分からなくなって迷子になっているケースもあります。人をサポートしたかったり、他の人の意...
思決定を尊重すると、こうなりやすいが、COOであっても自分の意思・自分のEdgeを基にやるべきことを組み立てることが大切であり、チーム経営の形を作って、足りない部分は他の役員を作ることでカバーしてもらうことが必要だと思う。
同業の先輩や同僚にアドバイスされたことで、最も仕事上の教訓になったことは何ですか?
COOは名前の通り、CFOやCHRO、CROなどと異なり、特定の管掌領域を持たない曖昧な経営ポジションだと思っています。
そうであるが故、経営チームのバランサー的な役割を求められたり、実際にそのように広い守備範囲の中でコミットしているケースが多いと思います。
一方で、役割が多岐に渡ったり曖昧になりがちだからこそ、COOは明確にコミットメント領域を決めて、それを内外に打ち出していくこと、その領域を「自分から」選んでいくことが非常に重要で...
す。経営チームの中で落ちていくボールを拾っていくことも必要な役割ですが、COOとして何を成すかを自身のWILLを軸に決めていかないと、特定領域で120%コミットしている他のCxOに比べて経営者としての自身のエッジを磨いていけないし、何よりも会社や事業の成長に自分の意思を込めることができません。 自分の意思を会社や事業に込めることができない経営者は、経営者としては失格です。COOという、守備範囲が広く色んな役割を任されるポジションだからこそ、自身の色(エッジ)を意識して、「何をしたいか」をベースにコミットメント領域を決めていく、「経営者としてのアイデンティティを持つ」ことが求められると思います。 逆に言えば、色んなことに巻き込まれることが多い分、色んな領域に接しながら種を見つけることができます。自身のWILLに自覚的であればあるほど、面白いチャレンジを見つけやすい、チャンスに恵まれた職種だと思います。
転職や就活で、この職業を目指す未経験の方におすすめの書籍は何ですか?理由と合わせて教えてください。
独立しようか迷っている時に読んだ本。将来のことを考えると、半年・1年・3年と中長期的なことを考えがちだが、この本は直近の「3か月」の使い方を意識する本なので、毎日毎日の行動の質が変わってくる。いまでも3か月に一度、この本を読み直して、3か月の目標を決めるようにしている。
この仕事に向いている人、向いていない人の資質とは何だと思いますか?
会社のビジネスが成長するかはCOOの力量次第。
成長を阻む難題を見極め、その解決に戦略構築から組織設計、オペレーションまで広い範囲で取り組むことができるか、さらにそれ自体を楽しめないと、普通はプレッシャーで潰されてしまうと思います。
普通の会社員からベンチャーに転職しCOOに就任しましたが、会社は既存事業の売上が毎年減少しており、新しい成長事業を早期に立ち上げることに取り組む必要がありました。
一つ目の事業は失敗し追い詰められた時...
、社内の過去のプロジェクトで使われていたAI技術に着目し事業化に取り組んだところ、AIブームが図らずも到来した流れにのり、すごいスピードで事業を成長させることができました。 苦しいことも当然数え切れないほどありましたが、会社の仲間と難題に取り組むこと自体を楽しめる性格が幸いし、プレッシャーにも負けず難題を克服することができました
この仕事を目指した理由や目的は何でしたか?
上場企業で働いているときは経営者になりたいという考えは微塵もなかったです。
ただ、ビジネスで世の中に対してインパクトがあることをしたいと学生時代から考えていたため、事業開発の仕事に携われる会社を選び、それなりに成果を出して満足している自分がいました。
そんな時に連続起業家に出会い、事業開発のキャリアの先に経営者があることに気付かされました。経営者として事業を作る立場に関われれば、もっと世の中に大きなインパクトを与えられるビジネスをで...
きる可能性があると考え、かつ今までの自分のスキルや経験も活かせる余地も十分あると判断し、一念発起してベンチャーのCOOに転職をしました。 経営の立場で、会社のリソースをどのように配分するかという重要なところから考え、事業開発をできるという点ではCOOは最適な職業だと思います