今はほとんどの企業がデータ利活用の重要性を理解している。それに伴い、データサイエンティストという職種が注目を集めてきた。
しかし、データ分析のスキルだけでは差別化を図ることが難しくなってきている。
データサイエンスに関する教材はあふれ返っており、誰もがアクセスして学ぶことができる。「データ分析ができる」という能力だけで評価される時代は終わりつつあるのかもしれない。
では、ビジネスの現場でデータサイエンティストが価値を発揮していくためにはどうすればいいのだろうか。
ボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)のデジタル組織でデータサイエンティストとして活躍する廣野允威(ひろの まさたけ)さんに、ビジネスの現場で成果を出すためのデータ分析について話を聞いた。
—— BCGは言わずと知れた戦略コンサルティングファームです。コンサルタントではなく、データサイエンティストとしてBCGで働くことになった経緯について教えてください。
高校の時から数学が好きで、楽しみながら受験数学に取り組んでいました。しかし、当時は「どのように数学が社会に影響を与えているか」が見えていませんでした。
そんな中、大学で経済学や統計学を学び、「数学ってこんなふうに応用できるのか」と知ったのが、データサイエンスに興味を持ったきっかけです。
また、さまざまな授業や課外活動に取り組む中で、教育に興味を抱くようになり、大学院ではデータサイエンスと教育の融合として教育経済学を専攻し、新卒では教育分野の事業会社に就職しました。
しかし、自身のデータサイエンスの知識が限定的だったことに加え、データサイエンスの力で組織を変えていくという経験に乏しかったことも相まって、高等教育の現場でデータの利活用を実際に行うまでのハードルの高さを痛感することになります。
このままでは、自分の目指すデータ利活用は実現しないだろうと感じるようになりました。
そこで、総合コンサルティングファームに転職し、教育分野以外のデータ活用の経験を積むことにしました。
データの利活用を通じて組織全体を変革していくプロジェクトに数多く携われたのは、現在のキャリアにもつながる良い経験でした。加えて、何より有意義だったのは、プロフェッショナルファームならではのプロ意識に触れられたことです。
例えば、コミュニケーション一つとっても明確な意図が求められます。
「どのタイミングで、どのようなコミュニケーションを取るのか」といった部分に至るまで、細かく気を使う習慣が身に付きました。
一方、「システム導入のみを担当するのではなく、より一気通貫で顧客の課題解決をしたい」と思うようになりました。
そんな思いから、仮説構築から実装まで一貫して担えるBCGに転職して今に至ります。
—— 「データサイエンティストの仕事はデータ分析だけではない」という声をよく耳にします。BCGのデータサイエンティストは、どのような役割を担うのでしょうか?
確かに、かつてはデータサイエンティストの役割として、分析アルゴリズムを実装できるだけで価値になる時期もあったかと思います
しかし今では、YouTubeをはじめ、さまざまなオンライン教材があります。誰でもデータサイエンスの知識にアクセスして学ぶことができるようになりました。そのため、データサイエンスの知識があるだけでは不十分です。
私たちはデータサイエンティストですが、マインドはコンサルタントと同じです。単にデータを分析するだけではなく、データの背後にあるビジネス課題を常に意識しています。
クライアントの課題に対して、どのような仮説を立て、どのような対策を考えるのか。このようなフレームワークはBCG社内に浸透しており、データサイエンティストも例外ではありません。