「企画が通らない」の悩みを解消する、提案内容より大切なこと
2022年9月21日(水)
事業企画やマーケター、各種クリエイターのような仕事のみならず、コンサルや営業職としてクライアントを動かす時にも必要な「企画」と「提案」の力。
社内外の人たちをアッと言わせるような仕事を生み出すためには、筋の良い企画を練り、誰もが納得するような企画書を作らなければならない。
……と考えがちだが、企画力やプレゼン力があれば「企画が通る」のかと問われたら、多くの人がノーと答えるだろう。
どんな企画も、チームメンバーやクライアントが納得して動いてくれなければ実現しないからだ。
渾身の提案資料を作り、上司や社長に提出しても、「実現の可能性が低いから」と一蹴されてしまうケースだってある。
中にはこの意思決定の不確実性をなるべく排除して、組織全体で意思決定のスピードを上げている企業もある。例えばEC大手のアマゾンでは、下に紹介するような“会議の仕組み”が知られている。
【教訓】アマゾンを1兆ドル企業にした「ベゾスの哲学」(創業者で元CEOのジェフ・)ベゾスは、意思決定を2種類に分けた。
1型は、重大かつ後戻りのできない大きな決定。2型は、変えることも取りやめることもできる、うまくいかなくてもこの世の終わりにはならないような決定だ。
アマゾンは、2型にあたる決定の場合なら、社員の誰でもすぐに決定し行動してもいいという企業文化を作った。職種や役職にかかわらず、全員が「リーダー」の役割を期待されているのだ。
またアマゾンには、「スピードを上げるために減速する」という考え方もある。
例えば、何かを決定する会議の前に必ず6ページのメモを作ることが求められている。メモを作成し、共有する間、状況はむしろ減速している。
だがこの減速によって、むしろ決断のスピードが上がるのだ。
6ページメモは、新しいアイデアをまとめたものだ。このメモを共有することで、他のメンバーはその決定に関する十分な情報を得た上で実証段階への移行やリソース投入の承認ができ、慌てて決定し失敗するリスクを減らせる。
もしうまくいかなければ、元のメモに戻って反省することもできる。6ページメモは、事前説明と事後報告を兼ねているというわけだ。
しかし、こうした組織内の決め事がない状態で、企画・提案を通すにはどんな工夫が必要なのか。何より、相手が社外のクライアントの場合はどうすればいいか。
本稿では、そんな悩みを持つ若手ビジネスパーソンに向けて、営業や事業企画など「企画を通すプロ」として実績を持つロールモデルの経験談を紹介していこう(注:ロールモデルの所属・肩書は、全て本人が投稿した時点の情報)。
場合によっては、提案する企画内容以上に重要なのが「提案する相手との関係性」だ。
クライアントの社長プレゼンのような1対1の場面でも、社内でチームに呼びかける場合でも、「あなたが言うなら任せてみよう」と思ってもらうことが鍵を握る。
この見えない信頼をどう作るか?について、営業力の高さで有名なキーエンス出身のBuff・野村幸裕さんは、古典的名著の『影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか』(誠信書房)を引用して説明している。
いわく、「返報性」と「社会的証明」を意識するのが大切だという。
営業のバイブルのような本です。 お客様の心を動かし購入頂くための原理
野村さんが書いている「返報性」を、より一般的に言うとギブ&テイクになるだろう。
オムロンで事業企画を経験した後、AIソリューション企業のLaboro.AIに転じた高塚皓正さんは、まさにこの考えが提案を通りやすくするヒントだと書いている。
give & give & take。入社4年目くらいに初めて事業
「特に若いうちは実績もないため、誰かの協力を仰ぐためには、give & takeでは足りず、もう一つgiveを足すくらいでちょうど良いと教わりました」
この経験談は、若手時代にこそ役立つ実践的なアドバイスになる。
別の視点で「企画を通すコツ」を因数分解するなら、次に紹介する営業支援企業セレブリックスの今井晶也さんが話す内容も参考になる。
今井さんは営業のプロとして『セールス・イズ 科学的に「成果をコントロールする」営業術』(扶桑社)という書籍を出版しており、下の記事ではそのエッセンスを取材してまとめている。

【今井晶也】セールスのプロが教える「売れる営業」の5ステップ
この中で、「問題を課題に転換する」ことで提案が通りやすくなるというくだりがあるので、引用して紹介しよう。
営業職がやるべきは、つまるところ「お客様の抱えている問題を課題に転換すること」です。
課題が特定でき、その解決に自社の商品が効果を発揮するのであれば、理論上でいえば商談は成功します。
つまり、お客様の課題を抽出するファクトファインディングは、営業職が最も力を発揮すべきプロセスだといえます。
ファクトファインディングの際に覚えておくべきは、「問題と課題は違う」ということです。
例えば、1年後に月1000万円を売り上げることを目標にしていたお客様がいたとします。しかし、現状は毎月の売り上げが700万円です。目標と現状の間にギャップがありますよね。月の売り上げが300万円足りない、これが「問題」です。
この問題を解決するには、問題を引き起こしている原因を特定しなければいけません。原因が特定できると、それを解決するための方法や取り組みが見えてきます。
その取り組みを「今やることが重要だ」という示唆を与えることができれば、お客様の「課題」が設定できるという考え方です。
具体的には、次のようなやりとりを通じてクライアントの「納得と要望」を引き出すという。
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このノウハウを実践するには、常日頃から提案相手の状況や問題をキャッチアップしておく視点も必要になる。
実際、DMM.comで営業企画・営業推進をしている小西美香さんは次のように投稿している。
視野を広く持つというのは、まず自分の周りの全体像を掴み、異なる視点か
これ以外に、こまめな情報(意思)発信が企画を通りやすくするという経験談もいくつか見られた。
パナソニックでスマートシティ関連の新規事業を企画・推進する岩井凌太さんは、「最初に立ち上げたプロジェクトで上司に企画内容をインプットするタイミングを誤った」と失敗談を語っている。
そこで得た教訓が、企画を固めきる前に自分の意思を発信し、フランクに上司へ相談しに行くこと。結果は、下の投稿にあるように効果てきめんだったそうだ。
配属当初、今でも会社で最も尊敬する方の一人である先輩メンターに言われ
インプットとアウトプットを繰り返す相手は、何も上司やクライアントだけにとどまらない。
ユニークなメガネ型デバイスの企画・開発で知られるJINSで事業企画を担当し、現在は課題解決型のデジタル・クリエイティブスタジオSun Asteriskに勤める井上一鷹さんは、事業企画職に必要な事柄を下のようにまとめている。
中でも注目したいのは、「④遠い人に仕事について話す」「⑤各企業の仕掛け役の集まりを巡る」だ。
①健全な不安感 ②再定義し続ける意識 ③振り切る勇気 ④遠い人に仕事
アイデアは異質なもの同士の掛け合わせで磨かれるとはよく言うが、井上さんの投稿からは、この定説が企画・提案の質を高めるとも読み取れる。
ここまでノウハウ的なアドバイスを中心に紹介してきたが、最終的に自らの企画を通す上で最も重要になのは「自分ごと化」だろう。
リスクを取ってでもやりたい、やるべきと考えているなら、その覚悟を示すのが人の心を動かす最大の武器になる。
リクルートキャリアで「サンカク」という新規事業を立ち上げた古賀敏幹さんは、エンジニアから事業企画にジョブチェンジした頃、次のようなアドバイスをもらったそうだ。
正確には前職でエンジニアから事業開発の仕事に異動になる際の言葉ですが、リクルートの方からもらった言葉&事業開発という仕事における言葉なのでこちらに記載します。 「自身で事業をやるなら、絶対に逃げないと思うテーマを選べ」という言葉をもらいました。それまでは、「何かを成し遂げたい」「ワンオブゼムで終わりたくない」と、視点が自分にしか向いていないし、社会起点も当事者意識もない状態でしたが、その言葉のおかげで自分起点ではなく、完全に社会起点に立つことができましたし、今のテーマに出会うこと&覚悟を持つことができました。
また、新卒入社した日本マクドナルドで同社史上最年少マーケティングマネジャーになった経験を持つAlmoha LLCの唐澤俊輔さんは、当時CMO(最高マーケティング責任者)だったサラ・カサノバ現会長からもらった言葉を今でも教訓にしているという。
日本マクドナルドに新卒で入社して一年くらい経った頃に、当時CMOだっ
「CMOの部屋に一人で乗り込んできて提案するのは、とても勇気のいること。それをしたあなたは正しい。自分が正しいと信じることがあるなら、こうした提案は続けなさい。私の部屋のドアはいつでも空いてるわよ」
このエピソードの裏側には、覚悟がある人にしか責任ある仕事は与えられないという現実が隠されている。
GMOペパボのCTO(最高技術責任者)である栗林健太郎さんも、似たような経験から学んだそうだ。
「CTOとは、エンジニアの代表ではなく自らのビジョンに基づいて意志決定する役割である」ということです(同業の先輩からの教えではありませんが)。 わたくしがCTOになってしばらくした後、経営メンバーに対して提案を行う機会がありました。エンジニアたちの声を集め意見を取りまとめた上で、ある施策の提案を行ったのです。その内容を聴いて社長がひとこといいました。「そのことについてのあなたのビジョンはなんなのですか?」と。 つまり、CTOというのは社員の意見を代表してものをいう立場ではなく、自らのビジョンをもって語るべきだと諭されたわけです。 CTOに限らず、CXOと称される人々の最も重要な役割は、ビジョンを描き意志決定をすることにあります。しかし一方では、それらの仕事には「こうやれば確実」という方法があるわけはありません。つまり、どうしても不確実性が残る中でことを行う必要があります。 そうすると、ついつい何か確実なことにすがりたい気持ちが出てきます。たとえば社員がこういっていたからとか、他社がこうしているからとか。もちろん、ひとの意見を聴くことは大事ですが、そのことに自分の意志決定の責任を転嫁することがあってはなりません。そんな教訓を得たエピソードでした。
企画術、プレゼン術に関しては、数多くの書籍やノウハウ記事が出ているが、「企画を通る」最後のひと押しはこうした覚悟になるのは間違いない。
【参加型】安宅和人氏らと描く「3年後の自分を変える」シナリオ文・デザイン:伊藤健吾、バナーフォーマット作成:國弘朋佳、バナー写真:VectorInspiration