転職でジョブチェンジ、10人の志望動機に学ぶ「受かる接点」のつくり方
2022年9月7日(水)
初めての転職では「スキルマッチが大前提」だと考えがちだが、異業種への転身やジョブチェンジを成功させる人は常に一定数いる。
転職サイトの「doda」が今年8月に出した調査結果によると、コロナ禍の2020年に企業の異業種人材の受け入れは一時落ち込んだものの、2021年以降は回復傾向にあるそうだ(参照元)。
中でも「コンサル」や「インターネット・広告・メディア」「メーカー」などの業界では、異業種人材の受け入れ率が2000年に比べて30〜40%も増えている。
その背景として、下の記事にもあるように
デジタル化で新たな仕事が生まれていること
逆に、営業職のように「ITに代替される業務」も増えたこと
職種の垣根がなくなり、異業種に移りやすくなるケースがあること
などが挙げられる。
【仕事の未来】今、あなたの仕事を取り囲む「5つの大変化」こうした世の流れを受けて、業種だけでなく職種も変える転職者が増えつつあるのだ。
とはいえ、ポテンシャル採用される新卒・第二新卒でない限り、スキル・経験との「接点」がなければ異職種・異業界への転職が難しいというのも事実である。
そこで今回は、10名のJobPicksロールモデルが異職種転職をした際の「志望動機」に注目(注:ロールモデルの所属・肩書は、全て本人が投稿した時点の情報)。新しい仕事にチャレンジする際、どんな「接点」の見つけ方をしたのかを分析してみた。
これから転職を検討している人は参考にしてみてほしい。
転職をする時にまず考えるのは、ファーストキャリアで培った「スキルや経験」との接点を探ることではないだろうか。
異なる職種を希望する時も、現職で培った見識をどう生かすかを考えるのがコツになる。
例えば新卒で産業用機械メーカーに就職したSaito Atsushさんは、「営業」のスキルを生かして海外向け専門商社のジェイエスエムに転職。商社パーソンへジョブチェンジをした理由をこう投稿している。
前職ではメーカー工場勤務でアメリカ事務所とのやり取りがメインだったが、コミュニケーション相手はほとんど日本人スタッフであった。 当時総合職で海外案件担当と聞いていたが、実際は直接顧客と対峙する場面も限定的で業務スキルの向上が乏しくなると思っていた。また、工場勤務ということもあり、(メーカーではありがちかもしれないが)工場“ムラ”のようなコミュニテイー形成になっており、加えて土地勘馴染みないままに勤務したため、内向き志向の方が多く会話していても面白みが正直感じられなかった。 海外顧客との接点や外向的な志向になれる環境があることを考えた末、「商社」・「都心部」をキーワードに転職先を見つけ無事に入社出来て今に至る。
よく「営業経験は他の職種でも生かせる」というが、これは対人コミュニケーションや調整力、目標達成へのプロセス管理という汎用的な能力が身に付くからだ。
オムロンで法人営業を経験したのち、広報に転身したLAPRASの大西栄樹さんも、「法人営業と広報は相性が良い」と語る。
大手企業に入り最初は法人営業を5年ほど経験した頃。 その後、営業のま
他方、介護福祉士の経験を生かして人事に社内転職した過去を持つ伊藤大樹さんは、「現場感覚」を強みに現在の仕事に取り組んでいる。
これも、ジョブチェンジを希望する際の接点のつくり方の一つだ。
これからの日本で必ず需要が高まると考えていた介護業界で、人材不足やH
「今の仕事で好きなところ」を因数分解することで、他の職種で生かせる自分だけのスキルが見つかる。
プロジェクトマネージャーからプロダクトマネージャーに転身した新井正輝さんは、「商品を広めること」に注力したいと考え、キャリアの舵を切った。
もともとは開発(ディレクター)とネット代理店(マーケティング)の領域を行ったり来たりのキャリアの中で当時事業会社の中でWEBもアプリも両方あるアパレル系サービスPjM(プロジェクトマネージャー)をしていました。 次のキャリアを考える中で純粋なPM(プロジェクトマネージャー)と比較すると開発よりの経験や知見が足りない。一方でマーケティングのバックグラウンドはあるのでプロダクトを作るよりかはプロダクトを広めるほうが得意でした。 プロダクトに関わる仕事をずっとしたい気持ちは変わりませんが、よくいう「Will,Can,Must」の中でWillであったものをつくることではなく、Canであったものを広めることを伸ばしていきたいと考えました。 そこでPMのプロダクトマネジメントトライアングルの中でビジネス側の領域に集中するというPMMのポジションに偶然出会いました。 とうじPMMというものを知りませんでしたが深く知っていったり、業務のことを知っていく中で次に自分が進むべき道はこれだと思い決めました
持っている専門性を「アドバイザリー業務」から「企業の中」で生かすという転職もよくあるケースだ。
弁護士の草原敦夫さんは法律事務所での経験から、企業での「法対応の遅れ」を解決したいと考えるようになったそうだ。結果、スタートアップの法務に転職を決めた。
もともと法律事務所で弁護士として企業法務の仕事をする中で、法務は企業価値の向上に貢献できるのではないかと感じたことが、スタートアップに参画することのきっかけとなったように思います。 特に規制領域で事業に取り組む場合は、既存の法令がイノベーションを阻害する「法の遅れ」にどう解決するかが問題となります。 また、サービスが急速に拡大する中で、サービスのガバナンス(安心・安全)をどのように確保し、リスクマネジメントを実践するかも問題となります。 新しいサービスであれば、企業活動と倫理・インテグリティの関係についても考える必要があるかもしれません。 実践の途上ですが、法務のバックグラウンドを持ちながら経営チームの一員として事業に取り組むことで事業、組織の健全かつ持続的な成長に貢献できればと思っています。
仕事を通じて得た問題意識を解決する方法はないか、という目線で新しい職種にチャレンジした草原さん。以下のインタビューで深掘りしているので、ぜひ読んでいただきたい。

【解説】「法務は保守的」は時代遅れ。現役CLOに聞く戦略法務
エンジニアやデザイナーなど、専門スキルが重視される職に転職を望む際には、先にポートフォリオ(自身が手掛けた作品集)を作って接点を持つのがコツになる。
未経験ゆえポートフォリオの品質が低かったとしても、「学ぶ姿勢」を示すことができるからだ。
元消防士の川俣涼さんは、ソフトウェアエンジニアに転職する時、自作したホームページや業務改善ツールを示して「学ぶ姿勢」をアピールしたという。

消防士からエンジニアへ、究極の「未経験転職」3つのポイント
私の前職は消防士でした。業務内容的にも社会的意義があり、やりがいのある仕事ではありましたが、精神的・体力的に辛い現場も多く、仕事をあまり楽しめてはいませんでした。 そんな時に、妻の鍼灸院の開業の手伝いとしてホームページ作る機会がありました。 そこでプログラミングにハマりし、日頃の疲れを忘れるほど熱中しました。消防署で、独自にソフトウェアを開発し、業務効率化に貢献することも出来ました。 自分の作ったホームページをきっかけにお客さんが来たり、感謝されたことは、とても嬉しかったです。また、同僚や妻からフィードバックを受けて、ソフトウェアを改善していく過程は何より楽しかったです。 そのような経験を経て、時間を忘れて楽しめることを仕事にしたいと思い、エンジニアへの転職を決意しました。その選択は今でも間違ってなかったと思います。
人材系企業の企画職だった千崎杏菜さんも、「学んだ知識を丁寧に再現できる」ことをポートフォリオで示すことで、UIデザイナーに転身を果たした。

【大胆チェンジ】非・美大からデザイナーになる戦略的転職プラン
前職は新卒で人材系の会社に入社していたこともあり、「働く」ということについて大学生の時から考えていました。 人生の大半が働くことで占められるのは事実なので、つまらない仕事はやっていられないのです。人生をかけて取り組んでいきたいものを仕事にするべきだという考え方です。(別の考えを否定するものではなく、私の中での最適解です) そう考えた時に、自分がの今までの経験で、他のことをそっちのけで没頭できたことはすべて表現にまつわることでした。(演劇/ダンス/書道/ライティングetc) それならば、表現に関連する仕事をしたいと思うようになったのがきっかけです。 デザイナーは表現の中でも、「他の人が表現したいことを具現化する」といったタイプの表現で、自分のなかに表現したいものがないタイプのわたしには合っているかなと判断し、デザイナーという職種を志望しました。 その中でもwebを選んだのにはそこまで深い理由はないのですが、前職で様々な経歴のwebデザイナーを見ることができたので「これは自分でもなれそうだ」と感じたのが大きかったです。 グラフィックでもよかったかなと思う時もありましたが、他の職種(ディレクター/エンジニア)と密なコミュニケーションでものづくりをするのはwebならではの面白いところだと思います。 もともとの根源である、楽しく働くということに忠実にこれからも常に考えていきたいと思っています。
「学ぶ適性」があることを資料で残すことが、新しい仕事に挑戦するための第一歩になるのだ。
未経験職種への転職理由として、「強く課題に共感したこと」を挙げる人もいる。
看護師からマーケターにジョブチェンジした佐藤南帆さん。彼女はボランティアを通じて「新興国の貧困問題」に向き合うようになったと語る。
新興国の社会問題に向き合い、アクションを起こし、ビジネスを通じて持続可能な関係性づくりを実現できると思ったからです。 私の夢は「ストリートチルドレンの自立をサポートに関わりたい」ということです。 その目標のために、アフリカ・ケニアの児童養護施設でボランティアをしていました。しかし、ボランティア経験を通じて、寄付で成り立つ社会貢献活動の限界を感じました。また、施設を卒業した子どもたちが、定職につけず、一人で生活することができなかったり、犯罪に手を染めってしまったりすることもありました。 「支援する・支援される」という一方的な関わりではなく、ビジネスを通じて、自立に向かって共に歩むという対等な関係を作り出していきたいと思い、アフリカ・ケニアでビジネスをしているアパレルブランドで働くことにしました。
佐藤さんは自分の中で強くなっていく課題意識を解決するために、ケニアのアパレルブランドマーケターになることを決めたのだ。
彼女のマインドセットは、以下のインタビュー記事で詳しくまとめている。

【大変身】看護師からマーケターへ、ゼロから築く異業種キャリア
小池優利さんはサイバーエージェントで法人営業・商品企画・人事を経験し、キャリアを順調に積み上げてきた。
しかし大学時代の経験から、「人の悩みを解決できる事業を創りたい」という夢を持つようになり、事業企画への異職種転職を決意したという。
大学時代に部屋から出れなくなるほどの肌荒れを経験。 大変なコンプレ
続いて紹介するのは、冒頭で挙げた「デジタル化」が進んだことで生まれた新職種への挑戦例だ。
生まれて間もない職業は、シンプルに「なり手」が少ないため、持っているスキルセットを「新ジャンル」にずらしながら生かすチャンスが多いと言える。
黒崎由華さんは、4℃のジュエリーデザイナーから、VR企業ジョリーグッドのエンジニアへ転身。
そこでUXストラジストやビジネスプロデューサーも経験し、現在はサイバーエージェントでCXコンサルタントを担当している(※下の記事はジョリーグッド在籍時のインタビュー)。

SNSを活用して5職種マスター、20代で実現する変幻自在キャリア
世の中で求められている新しい仕事を次々と渡り歩いてきた彼女の軸は、「ユーザーファースト」であることだった。
小さい頃から絵を描いて友達や両親に喜んでもらうことが好きでした。 例えば絵を描くにしても、「描くのは楽しいけど、あの人(たち)が喜んでくれたらもっと嬉しいな」という考え方が根底にあり、描いて終わることは少なく誰かに見せたり反応をもらうことがモチベーションとなっていました。 芸術大学への道を志したのはその原体験がきっかけとなっていて、デザイン学部にいきたいと思ったのは「自分が生み出すクリエイティブの先には常に人がいてほしい」という思いがあったためです。 その後、UCD(ユーザー中心設計)やHCD(人間中心設計)という概念を学んだとき「まさしくそれだ!」と思ったことは今でも印象に残っています。 設計者がユーザーにデザインを押し付けたり、逆にユーザーの意見を一方的にプロダクトに反映させたりする関係性ではなく、私たちは常にユーザーと協力関係にあることが望ましいと考えます。 そういった考え方を大切にしながら、今後もお仕事に臨んでいきたいです。
國光俊樹さんは、グラフィックデザイナーとUIデザイナーの経験を持つ。
彼がグッドパッチに転職し、UXデザイナーになった背景には「自分が商品を使いたいか」を自問自答した経験があるという。
前職まではどちらかというと広告系の単発で終わるような企画に対するアウトプットが多く、消費されるデザインを作っていました。 そんな中で消費されるデザインに自分の人生を使い続けたいか?と自問自答したタイミングがあり、それまでの仕事は実際にそのデザインを見た人の反応などが希薄だったことから、しっかり届ける人を見たデザインがしたいと思うようになりました。 そして広くそれに当てはまる仕事を探していたところ、当時まだ珍しかったUXデザイナーという職を見つけて身を投じました。 今の会社はユーザーともクライアントとも距離が近く、より本質的な価値提供に向き合える環境があったため、それが決め手となり転職を決めました。
今までを振り返ることで、「自分の制作したデザインが、消費者にどう使われているか見届けるまで仕事がしたい」という夢に気付いた國光さん。
彼がUXデザイナーの仕事内容について詳しく説明している以下の記事も、ぜひ目を通していただきたい。

UXデザイナーとは“体験”をデザインする仕事。ポイントを徹底解説
ビズリーチ、メルカリ、スマートニュースなどの優良ベンチャー企業を渡り歩いてきた森山大朗さんは以下のように語っている。
「テクノロジーによる変化をいかにチャンスにできるか」が、キャリアを考える上での鉄則。
テクノロジーによる変化をキャッチアップし、いずれそうなる世界に向けて早くから準備をしておくのがいい。

【森山大朗】ユニコーン3社の転職で知った「伸びる人の行動原則」
これから技術はますます発展し、新たな職種・産業が生まれ続ける。そのため未経験でも踏み出すことで、森山さんのように先行者利益を享受できることがあるだろう。
キャリアは幅広い視野を持って、自分でつくり上げていくしかないのだ。
【ピンカー来日】「世界の理性」と希望ある未来を創りませんか?文:藤原環生、編集・デザイン:伊藤健吾、バナーフォーマット作成:國弘朋佳、バナー写真:iStock / Nuthawut Somsuk