三井物産、ベネッセ…有名企業で「抜擢」される若手社員の行動学

2022年8月31日(水)

2022年8月の人気記事ランキング

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毎月、上位には当月に掲載した記事がランクインするが、今月は3位に過去記事(昨年1月掲載)となる齋藤牧里さんのインタビュー記事が入った。

ルイ・ヴィトンやグッチなど、海外ラグジュアリー・ブランドのPRで第一人者として知られた齋藤さんが、今月26日に肝臓癌で逝去したという報道があったため、検索で多くのアクセスがあった(報道記事)。

ロールモデルとして、弊誌読者に貴重な経験談を遺してくださったことに改めて感謝しつつ、ご冥福を心よりお祈り申し上げたい。

1位:三井物産「異例の新卒5年目社長」を育てた、結果を出す人の行動学(2022/8/5)

2位:Z世代発、熱狂のNFT「ベリロン」誕生秘話(2022/8/15)

3位:【秘伝】ルイ・ヴィトンの「伝統と革新」を支えたプロが語る、PRの本質(2021/1/26)

4位:「給料が上がらない」日本で、20代が市場価値を高める3つのヒント(2022/8/12)

5位:増える「プロジェクト型の仕事」若手が成果を出すには何が大切?(2022/8/22)

さて、今月1位になった三井物産・陣内寛大さんのインタビューでは、タイトルにもあるように新卒入社5年目で子会社「GEOTRA(ジオトラ)」の社長に抜擢されるまでの経緯を紹介。

一見「エリート」と思わせる経歴ながら、実は泥臭く事業開発を繰り返し、10以上の失敗プロジェクトを経験してきたという成長秘話に多くの反響があった。

> 陣内さん記事へのコメントはこちら

そこで本稿では、さまざまな企業で要職に「抜擢人事」を受けた若手ビジネスパーソンが、どんな経験を重ねてステップアップしてきたのかを過去記事からピックアップする。

DMM石垣雅人さんの先読み力

DMM.comに新卒入社し、わずか6年でプラットフォーム事業本部の部長に就任した石垣雅人さんは、下の記事のタイトルにもあるように入社直前まで「エンジニアリング未経験」だったという。

未経験エンジニアが20代部長に。DMM石垣雅人の成長支えた5つの掟

中高時代からコードを書いていたような仲間たちの中で、ゼロからスタートした石垣さんは何を意識して働いてきたのか?

この問いに対する答えの一つに、いつも「2つ上の役割」を意識して動いてきたという行動習慣がある。

よく今のチームメンバーにも話すのですが、「常に自分のポジションより1つ、2つ上の視座で現状を見渡す」というのを心掛けていました。

例えば開発メンバーの立場だと、担当する事業のPL(Profit and Loss statementの略で、損益計算書のこと)はあまり見ませんよね?

でも、本来は自分たちが作っている機能がどういう事業数字に結び付いているのか分かっていないと、次は何に注力すればいいのかが見えてきません。

こういう視点で、新卒の頃から「僕が上司だったら」と考えながら情報を取りに行って、やるべき仕事を考えるようにしていました。

その結果、社歴が浅くても「プロジェクトの状況やチームのことを一番分かっている人」になり、周囲に頼られるようになっていったという。

自身は「仕事で一番苦手なのは根回し」と語っているが、まずは半径5メートルの事柄をリードすることで信頼を得ていったのだろう。

元マック唐澤俊輔さんの学習力

人事向けサービスを提供するAlmoha LLCの共同創業者で、デジタル庁の組織開発にも携わる唐澤俊輔さんは、ファーストキャリアに選んだ日本マクドナルドで史上最年少のマーケティング部長(当時)になっている。

【秘伝】マックの元・最年少マーケティング部長に聞く「仕事の幅の広げ方」

20代〜30代の「ヤングアダルト」と呼ばれる年代向けの商品を担当する小規模なチームで成果を出し、入社3年目には中核を担うように。ただ、そこから社運をかけた新商品企画で手痛い失敗を経験したという。

戦略的な新商品を開発する、非常に大きなプロジェクトのメンバーに選んでいただいた時のこと。私には、新商品のプライシング(価格決め)という役割が与えられました。

プロジェクトのオーナーである経営戦略担当の役員を前に、自信満々で価格提案のプレゼンをしたところ、「君は思考が浅すぎる。君と話しているとこちらまで思考が浅くなるから、もう話しかけないでくれ」と一蹴されてしまったんです。

本当にこの通りのまま言われたのを、今でも鮮明に覚えています。

その方はコンサルティング会社出身のキレ者で、当時の原田社長(原田泳幸氏)の懐刀と言われており、社内でも一目置かれている存在でした。危うくプロジェクトからも外されそうになった私は「もう一度チャンスをください」と申し出て、改めて自分に何が足りなかったのかを考え直しました。

その結果、マーケティングに必要な3C(市場・顧客、競合、自社)などの基本的な観点から分析する過程をすっ飛ばし、他の自社商品の原価や売価、利益率との比較だけをして検討していたことに気付きました。

文章にすると、当たり前だと感じる人もいるかもしれない。しかし、こういう原理原則を「骨身に染みて」学ぶようになるタイミングは、大きな失敗をした時だというのも事実だ。

実際に、唐澤さんはこうした失敗を経験しながら自身の戦略思考の浅さを痛感し、その後働きながらグロービスに通うなどして知識習得に励んだそうだ。

その結果、より経営の上流から考えて施策を打てるようになっていった。

「失敗に学ぶ」とは、具体的にこういうことだと思わされる経験談を参考にしてほしい。

DeNA藤掛直人さんの失敗克服力

失敗に学ぶという点で唐澤さんと共通しているのは、DeNAが事業承継したプロバスケットボールクラブ「川崎ブレイブサンダース」で事業戦略マーケティング部長を務める藤掛直人さんだ。

下の記事でも紹介しているように、川崎ブレイブサンダーズはDeNAが運営を引き継いで以降、平均来場者数でBリーグNo.1に、チーム関連売り上げは2年で約2倍に急伸している。

DeNA「若手部長の失敗学」バスケ事業、2年で売上倍増の裏側

そのけん引役を担った藤掛さんは、「やってきた施策は、ほとんどが失敗から学んだもの」だと語っている。

藤掛さんの「失敗学」のベースとなっているのは、新卒1年目に経験した失敗プロジェクトだという。

人を巻き込む大切さは、DeNA入社1年目にやらかした大失態を通じて学びました。

初めて担当した新規アプリゲームの開発プロジェクトがうまく行かず、数千万円レベルの損失を出してしまい......。社会人になって最初の挫折でした。

—— どんなプロジェクトだったのですか?

外部の開発会社さんと組んで、新しいゲームタイトルを生むプロジェクトでした。

クリエイティブな分野に強い会社との共同開発で、これまでにないスマホゲームを作るのが狙いだったんです。

でも、試行錯誤を重ねた末、どうしてもこの企画では収益化が難しいと判断され、開発中止となりました。それまでにかけた開発費を無駄にしてしまったんですね。

この件では後から、「もっと社内外のプロに頼ればよかった」と猛省しました。

例えばゲームの特徴を際立たせるために、音楽業界のトッププレーヤーを巻き込むとか。長く遊んでもらうための制作体制に不安があったら、それを補えるような第三者との新たな座組みを考えるとか。

「やれることはもっとたくさんあったのに」という後悔があったし、それ以上に会社やプロジェクトメンバー、何より開発会社の方々に対する申し訳なさがありました。

その時以来、同じ失敗は二度と繰り返さないと心に誓ったんです。

失敗を恐れるより、失敗をどれだけ素早くリカバリーできるか。

この考え方を念頭に置きながら仕事をしてきたからこそ、未経験の「プロスポーツクラブの運営」を任された時も、スピーディに成果を出すことができたという。

この点は、多くの若手リーダーに共通する働き方とも言えるだろう。

ベネッセ永田祐太郎さんの突破力

最後に紹介するのは、ベネッセでAIを用いたスマホ学習アプリ「AI StLike(AIストライク)」の開発などをリードしている新規事業開発室長の永田祐太郎さんだ。

鹿児島で生まれ育ち、そこで目の当たりにした「親の収入によって教育格差が生まれる」という現実を変えたいとベネッセに就職した永田さんは、入社9年目で要職を任されるようになった。

【OB訪問】ベネッセの事業開発に聞く、社風や配属、伸びる人材

いわゆる大企業で新規事業をリードする際に求められるマインドとして、次のようなコメントを残している。

新規事業では、今までと違うことをするので、全員が賛成するケースは基本的にないんです。むしろ反対意見が少し多いくらいが、企画としては良い。

ですから、ある程度の割り切りも必要なんです。まず、そうしたメンタリティを持つことを心掛けています。

その上で大切なのは、さまざまな方々の気持ちに寄り添うことです。

新しいことをしようとすると、やっぱりいろんな意見が出てきて、自分がやりたい方向性と違った方向に進んでしまうこともあります。

しかし、そうした思いや気持ちをくみ取ることができると、自然と落としどころが見えてくるんです。

例えば、本当は100まで行きたかったサービスも、いったん30でもリリースし、形にしていくことで、結果的には100、120につながることもあります。

こうした割り切りは、ある程度必要です。決してネガティブな意味ではなく、そこで生み出せるポジティブが圧倒的に大きいからです。

こういった全体感を持ちながら事業を推進するには、やはり覚悟のような精神面も大切ということだろう。上記の記事では、このような発言もしている。

—— 大企業で自身のWillを生かすために必要なことやアドバイスを教えてください。

僕にはWillを生かすという発想自体がありません。

僕にとってWillとは、スナップショットで切り取ったその時々の感情ではなく、やり切る覚悟です。その原理で考えると、数カ月や半年スパンのWillなんて、基本的に存在しないはずなんです。

なぜなら、始めたら最後までやり切らないといけないから。ビジネスとはお客様ありきで成立しているので、サービスを届け始めたら、無責任にやめられません。

Willを語るのであれば、それくらいの覚悟が必要です。逆に、しっかり考えて覚悟をしていれば、いろんな荒波が来ても打ち勝てます。

厳しい言い方をしてしまいますが、「会社にWillを殺されてしまった」という人は、その“瞬間”の不条理に負けてしまっただけなのではないでしょうか。

永田さんの言う「折れないWill」をどう持つのか。ここから考えることが、大きな仕事を任される最初の一歩になるのだろう。

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