U30若手ホープは、仕事の「失敗」から何を学んだのか
2022年8月29日(月)
楠 ラクスルは「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンのもと、伝統的な産業にテクノロジーを持ち込み、産業構造を変え、世の中に大きなインパクトを与えたいと考えているベンチャー企業です。
僕は、広告領域事業の「ノバセル」というグループ会社で事業開発を担当しています。
「事業開発とは何か」を端的に説明するのは難しいですが、僕は「事業の成長ドライバーを見つけ、それを伸ばすためにリソースの配分を考えたり、仕組みを作ったりする仕事」だと捉えています。
プロダクトマネージャーやセールス、マーケターなど、さまざまな職種の人とコミュニケーションを取りながら、事業戦略について考えていることが多いですね。
石黒 グッドパッチでUIデザイナーをしています、石黒です。
UIとは「ユーザー・インターフェース」の略で、直訳すると「顧客接点」。
皆さんが日々触れているスマートフォンのアプリやWebページ、ポスターといった「接点」を最適なかたちにデザインし、ユーザーにとって心地よい体験につなげていくのが、私たちUIデザイナーの仕事です。
直近では、サントリー食品インターナショナルさんが提供する企業の「健康経営」を支援するサービス「SUNTORY+」の立ち上げに、UIデザイナーとしてゼロから携わらせていただきました。
アプリ内のデザインはもちろん、「『SUNTORY+』らしさ」の言語化から、実際のユーザー体験の設計まで。「どうすればユーザーがこのサービスを使い続けたくなるか」を念頭に、ご提案をさせていただきました。
横山 ボストン コンサルティング グループ(BCG)でデータサイエンティストとして働いています、横山です。
2018年に入社し、1年間戦略コンサルタントとして働いたのち、デジタル領域を担う専門組織DigitalBCG Japanに異動し、今に至ります。
私の仕事は、戦略コンサルタントのチームと協力しながら、クライアント企業の課題に対して、データアナリティクスを活用した戦略を考え、提案・分析していくことです。
内容は、ビジネス的な分析から技術寄りのプロジェクトまでさまざま。
具体的な業務は、データの分析からダッシュボード化、数理最適化・機械学習・自然言語処理などのモデル構築から分析の示唆を出すプロジェクトなど、多岐にわたります。
楠 以前、JobPicksさんのインタビューでもお話ししたのですが、最初にぶつかったのは、「自分で意思決定できない」という壁でした。ちょうど、入社1年目の冬ぐらいです。
ラクスル最年少マネージャーが見つけた、最速で結果を出す3つの視点
当時、僕はお客様のテレビCMの戦略を考える部署にいたのですが、事業部にいるのは、業界歴15~20年の先輩ばかり。
入社間もない自分にできることは何もない、と考えて、お客様からいただいた相談を横流しして「どうしたらいいですかね?」と聞いたり、商談でも議事録係に徹して、あまり喋らないようにしたりしていたんです。
するとある日、上司の田部(ラクスル取締役CMO・田部正樹さん)から、商談中に「しゃべらないなら、ここにいる意味ないですよ」とメッセージが送られてきて......。
その時は慌てて何かを喋ろうとして、しどろもどろになる、という具合でした。
で、後で振り返ってみると、「新卒1年目だし」とか「業界歴ないからわかんなくて仕方ない」という、甘えの気持ちがどこかにあったな、と気づいて。
そこからは、「お客様との商談は基本自分1人で出向き、上司を呼ぶのは最低限にする」「意思決定のときも、まずは自分で考え、後で上司に報告をする」スタイルに変えました。
もちろん「お客様ファースト」なので、自分勝手に何かを決めればいい、という意味ではないですが、「自分で決める」というスタンスで仕事をすることで、視座が一段階上がった気がします。
横山 「壁」という表現が正確かわかりませんが、私も入社間もないころは右も左もわからず、失敗をしたことが何度もあります。
特に多かったのが、「与えられた仕事に対して違うアウトプットを提出してしまい、手戻りが発生して全体プランに支障を出してしまう」というもの。
仕事を振られた時はわかったつもりでいたのですが、実はきちんと内容を理解できていなかったんですね。 それに対して、先輩方から「タスクをもらった時に、自分が何をやらなくてはいけないのかをその場で自分の言葉で確認する癖をつけるといいよ」と助言いただいて。
そこからは、タスクを口頭で確認したり、わからないことがあったらその場で聞くようになりました。
シンプルな打ち手に思われるかもしれませんが、一回口に出してみるだけで、本当に自分が理解できているか、理解できてないとしたら、何がわからないのかを、確認できるんですよね。
石黒 とても実践的ですね。私も「壁」というほどではないですが、とにかくいろいろな失敗をしてきました。
ありがたいことに、グッドパッチは若手社員にもいろいろな挑戦をさせてくれる会社なので、挑戦の数だけ失敗もあるな、という感じです。
経験がまだ浅いうちにアサインされた案件で、いただいたフィードバックを悪い受け取り方をして落ち込んだり。
追い込まれていたのに、自分で抱え込んでしまった結果、夢にまでマネージャーが出てきたり……(苦笑)。
今となっては、あの時の経験があるからこそ、自分のデザインに自信が持てているとも言えるのですが、振り返ると当時はかなり大変でしたね。
石黒 やっぱり、自分がかかわったサービスに対して、クライアントやユーザーからポジティブな反応があって、ちゃんとお力になれているんだな、と実感した時は嬉しいですね。
それから、大切な人にプレゼントをあげるような感覚で、「こんなことしたら喜んでくれるんじゃないか」とか、「こんな機能があったらユーザーさんにとっていい体験になるかも」とあれこれ考えながらデザインをするのは、とても楽しいです。
ただ、全面的に「これを見て!」という感じで押し出すと、押し付けがましくなる可能性もあるので、さりげなくワンポイント入れるように意識しています。
楠 事業開発は「事業の成長を考え、実現させること」が仕事なので、「ここからこれだけ事業が伸ばせるんじゃないか」と思えるような成長ドライバーが見えた瞬間はワクワクしますね。
最近気づいたのですが、そういうドライバーって、頭のなかで数学の問題を解くみたいに考えている時より、実際にサービスを使ってくださるお客様と話している時にひらめくことが多い気がしていて。
本当に、商談中のある一言がきっかけで、「自分たちがうまく言語化できてなかったのはこういうことだったんだ!」と一気に視界が開ける、みたいな時が多いんです。
そういう意味で、社内への向き合いと同じくらい、お客様とお話しする機会を積極的に設けるようにしています。
横山 それでいうと、私もデータを分析してクライアント自身でも気づいていなかったような新しい内容が発見できて、それを有意義に感じてもらえた時は、嬉しいですね。
様々な業界の代表的な企業が抱えるチャレンジングな課題を優秀で多様性の
あとは、チームで連携が取れて、きちんと結果が出せた時もテンションが上がります。
普段の案件では、私が所属するデータサイエンティストチームとコンサルティングチーム、ときにはデザインを担うチームも入って、協力しながら戦略を練ることが多いのですが、この連携がうまくいってクライアントに価値が提供できた時は、格別の喜びがあります。
横山 今の仕事がとても好きなのでBCGでしばらく働きたいと思っていますが、向こう5年くらいのキャリアで考えると、「海外のオフィスで働き、グローバルに活躍できる人材になりたい」という目標があります。
ただ、心の中で海外に行きたいと思っていても実現はしないので、「私、海外行きたいです!」とスピークアップするようにしています。
BCGはキャリアアドバイザーやメンターが、一人ひとりについているので、私の担当の方に思いを伝えてみたり、人事部門の方にさりげなく相談してみたりと、かなり意識的にやっています。
石黒 たしかに!周りに伝えることで、「あ、こういうことやりたいんだ」と思ってもらえるから、チャンスが来やすくなりますよね。
私の場合は、目標から逆算してステップを踏んでいく「山登り型」より、その時々で必要な判断をしながらキャリアを作っていく「川下り型」のキャリアを歩んできました。
ただデザイナーとして「ユーザーの心を強く揺さぶるようなプロダクトを作りたい」という目標はあります。社内用語で「ハトユサ」って呼んでいるんですけど(笑)。
はい。「ハートを揺さぶる」の略です。それに触れた瞬間に、「あ、すごいいいな!」とか「素敵だな!」と本当に直感的に思うもの、というイメージでしょうか。
私自身も、先日「Immersive Museum」という印象派の画家の絵を、テクノロジーを使って通常の美術館よりもさらに没入できるかたちに演出した展示に行ったのですが、心を揺さぶられました。
そんな「ハトユサ」を提供できるデザインができればな、と思っています。
楠 「ハトユサ」すごくいいですね。僕も意識してみたいなと思いました。
僕の目標は、ラクスルに入った時から実はそんなに変わっていないんですが、この先の人生で、「50年、100年残るインフラになるような事業を作れたら幸せだな」と常々考えていまして。
で、そうした事業を作っていくためにも、まずは「20代のうちに何をトラックレコードとして残せるか」を意識しています。
事業開発って少しふわっとした仕事なので「要は何ができる人なのか」をファクトベースで語れるくらいの実績を残したい。そして、そのトラックレコードをもとに、次のチャレンジへとつなげていければな、と。
まだまだ未熟な身ですが、最近はそんなことを考えながら、事業に向き合っています。
【新規事業】僕が社内の「壁」を突破できた理由文:高橋智香、編集:伊藤健吾、デザイン: 松嶋 こよみ、撮影:竹井俊晴