ビジネスにおける「企画力」とは「現状の課題を見抜き、それを解決するアイデアを導く力」を指す。
これは、企画職のみならず、営業やマーケター、事業開発など、あらゆる職業に通底する必須のスキルと言えるだろう。
だが、常に目新しいアイデアを出すのは難しいものだ。自分の発想に自信を持てずにいる、という人も少なくない。
そんな中、ユニークな発想を生かし、ヒット商品を次々と世に送り出す2人組がいる。
雑貨や衣類などを扱う大手通販会社のフェリシモから独立し、「企画デザイン2時」を起業した、楢﨑友里さんと田中桃子さんだ。
Twitterで約7万リツイート、28万いいね(2022年8月時点)を集めた「判決を取ってきてくれる犬用のおもちゃ」などを筆頭に、ユニークかつ斬新な商品を生み出すプランナーとして知られる。
なぜ、2人はユニークな企画を生み出し続けられるのか。常識にとらわれず、ユニークなアイデアを思いつくための秘訣とは。
話を聞くと、誰でも明日から実践できる「発想のヒント」が見えてきた。
——「判決を取ってきてくれる犬用おもちゃ」など、お二人はSNSで話題になるユニークな商品を多数手がけています。なぜ、こうした商品を生み出せるのですか?
楢﨑友里(以下、楢﨑) そうですね……理由を端的に説明するのは難しいのですが、「ななめ上の発想で企画をする」ということはいつも意識しています。
「ななめ上」とは、既にこの世にある商品とはちょっと違う角度、ちょっと違う視点からアイデアを考える、という意味です。
なので、「他の誰かがやっているだろうな」と思うコンセプトには、あまり手を出さないようにしています。
それよりも、大勢の人には響かないかもしれないけど、心から欲しいと思ってくれる人も必ずいる——。そんな商品を作るのが、結構好きですね。
—— なぜ、「ななめ上」の発想を意識するようになったのですか?
楢崎 私と田中さんが前職で勤めていた、フェリシモでの経験が大きいです。
フェリシモは、子供服から雑貨までさまざまなジャンルの商品を扱う通販会社です。そこで私たちは商品プランナーとして、たくさんの商品を企画・販売してきました。
いろいろな商品を作るうちに、「モチーフの人気自体は不明だけど、エッジがあって、ユニークなものが支持されやすい」ということに気づいて。
これは私の憶測ですが、昔はマスメディアが強かったので、より多くの人に受け入れられるモチーフの商品が求められていたように感じます。
ですが、今はSNSの発達もあって多様なコンテンツがあふれていますし、ユーザーの興味もどんどん細分化している。
だからこそ、「小さいけれども、熱量の高い『興味がある』とか『好き』」というユーザーの気持ちに応えられると、エネルギーが強い、尖った企画が生まれると気づいたんです。
田中桃子(以下、田中) たとえば、私たち企画デザイン2時が企画した商品に『タカアシガニ脱皮ぬいぐるみ』というものがあります。
タカアシガニ……って、みなさんご存じですか?
日本の深海に生息している世界最大のカニなんですが、水族館の飼育員さんに「脱皮のシーンが感動的」とうかがって。
で、モチーフ的には売れるかわからなかったけど、いままでのカニのグッズに無かった切り口なので、タカアシガニの脱皮を再現したぬいぐるみを作ってみよう!と企画して、実際に作りました。
すると、これが予想外の反響でして。
「待ってました」的な感じでタカアシガニのファンの方がとても喜んでくださったんです。通販サイトでも、「5点満点です!」みたいなレビューをたくさんいただきました。
「そこまで人数は多くないかもしれないけど、好きな人には刺さる」商品を作る面白さを、肌で感じることができましたね。