面接の場で接点を持つ機会が多いことから、「採用担当」として認識されがちな人事職だが、実はその役割は多岐にわたる。
メンバーの育成から組織制度の設計まで幅広い役割を担う仕事であり、組織の要として機能する重要なポジションだ。
近年はCHRO(最高人事責任者)のポジションを導入する企業も増えており、ますますその重要性が増している。人事という職業の役割は、今後どのように変化していくのだろうか?
Great Place to Work® Institute Japanが発表する「働きがいのある会社」ランキングにおいて、7年連続で「ベストカンパニー」に選出されたLIFULLの人事責任者・羽田幸広(はだ ゆきひろ)さんに、人事という仕事の魅力と未来を教えてもらおう。
—— 羽田さんはもともと、人事ではなかったと聞いています。どのような経緯で、人事へのジョブチェンジを考えたのですか?
新卒で入社した会社に勤めているときに、「同じ目標に向かって一致団結する組織づくり」に興味を持ったことがきっかけです。
新卒入社した会社は、数字重視の会社で、社員を軽視していると感じる機会が少なからずありました。
理不尽な人事異動により、一生懸命働いていた社員が、涙を流して退職していく姿を目の当たりにしたこともあります。
企業で働く人は多くの時間を仕事に費やします。せっかく働くのであれば、その時間は幸せなものであったほうがいいですよね。
そうした考えから、まるで甲子園を目指す高校球児のように、仲間と熱くなって働く組織をつくってみたくなったのです。
当時は営業や営業企画として働いていたので、人事の仕事内容について理解していたわけではありません。それでも、思いを抑えきれず、組織づくりに挑戦するために人事へのジョブチェンジを決意しました。
とはいえ、当時は「組織をつくるなら人事だろう」くらいにしか考えていませんでした。完全にイメージ先行でしたね(笑)。
ただ、今になって振り返れば、最良の意思決定をしたと思っています。
—— 転職先にLIFULLを選んだ理由について、教えてください。
組織の立ち上げに関わりたかったので、ベンチャー企業を中心に転職先を探していました。
ただ、当時のベンチャー企業の多くはミッションや社会的意義よりも企業の成長を重要視していた印象があります。
そうしたなか、偶然にもLIFULLの創業エピソードを耳にすることになります。
LIFULLが運営する不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」は、「不動産物件を選ぶときの、拭いきれない不透明さや不安感を解消したい」という、代表の井上高志の思いから生まれました。
彼がまだマンションデベロッパーで営業として働いていた当時は、不動産業界は今よりも情報の不透明さが深刻な時代で、理想とする物件を見つけるのが大変だったと聞いています。
そのせいで、彼のとある顧客は、なかなか自分たちが望む物件を見つけられずにいたそうです。
そこで井上は、顧客の幸せを願って、あろうことか他社が取り扱うマンションを紹介しました。
もちろん、上司から大目玉を食らうことになります。
ただ、顧客に幸せを届けられたという感情に満たされ、不思議と幸せな気持ちになったそうです。
この経験から、誰もがあらゆる物件の中から自分にぴったりの物件を見つけられるようにと、「LIFULL HOME'S」を立ち上げたのだといいます。
最初にこの話を聞いたときは、数字重視の会社で働いていたこともあり、にわかに信じられませんでした。「まるで漫画の話じゃないか」と思うくらいに、きれいすぎると思ったんです。
そこで、創業エピソードの真偽を確かめるために、井上に直接会って話を聞いてみることにしました。
—— 対面してみて、いかがでしたか?
本当に、びっくりしました。
これまでは年収がどうこうとか、数字がどうこうとか、そういう話ばかりを耳にしていたのに、井上はひとり「不動産業界の“不”を解決したい」「社員にとって日本一の会社をつくりたい」と熱量高く語っていたからです。
井上の話を聞いているうちに、人事に挑戦してみたいという私の気持ちは確固たるものになりました。
また、「社員のため」を本気で考えるこの会社なら、自分のやりたいことが実現できるかもしれないと、転職を決意しました。