キャリアを広げたい、スキルを高めたい。
その手段として、勤め先とは異なる企業や団体で実際に働きながら、新しい仕事経験を積む「社会人インターン」がにわかに注目を集めている。
リクルートの社会人インターンシップ参加サービス『サンカク』は、2014年からこの分野で事業展開をしてきた老舗の一つだ。コロナ禍による働き方の変化もあって、同サービスの利用者は急激に伸びている。
2020年5月時点で、会員数は約5万2000人。サンカクで社会人インターンを募集する企業・団体数は280以上におよぶ。
「サンカクを通じて、社内では経験できない仕事や人と出会うことで、将来に対するモヤモヤ感を解消したり、転職や副業での自分の能力の新しい生かし方が分かる。そんな理由で、ご利用いただく社会人が増えています」
そう語るのは、サンカクの事業開発を担当しているリクルートキャリアの古賀敏幹さんだ。東京工業大学の大学院を修了してソニーの技術者になったという理系職から、事業開発職に転じたという異色の経歴を持つ。
そんな古賀さんの典型的な1日に迫りながら、リクルートでの事業開発で重視していることを紐解いていく。
古賀さんは2008年に新卒入社したソニーで、ブルーレイのディスクレコーダー向けのコンテンツ管理データベースやファイルシステムなどを開発していた。
「ソフトウェアの力で社会を変えるような仕事をしたい」。そう考えて就職したが、当時はテレビ録画のマーケットがすでに縮小傾向にあった。
そのため、次第に「事業のコンセプト設計から行うような仕事がしたい」と思い始め、社内の新規事業コンテストに挑戦するようになる。
その後、2014年に新規事業開発の部署に正式に異動した後、知人だったリクルートの社員から、こんなアドバイスをもらった。
「新事業をやるなら命をかけること、自分が絶対に逃げないことをやるべき——。そうアドバイスされ、衝撃を受けました。それまでの自分は、ビジネスを作りたいと言っても、命をかけるほどの覚悟はなかった。甘かったのかもしれない。ここから、自分は何者になって、何をやるのかを真剣に考え始めたんです」
この「命をかけたい仕事」を模索する過程で、副業を経験してみたのが、現在の仕事につながる。
気軽に社外の仕事を経験できれば、仕事人生を変えるきっかけになると実感した古賀さんは、2014年にリクルートがサンカクをリリースしたのを知り、すぐに転職を希望。ビジネスプロデューサーとして入社を果たす。
だが、初期のサンカクは、まだまだ発展途上だった。
副業として参加する人たちにはある程度の評価を得たものの、受け入れる企業側から「負担が大きい」「フィットしない人が来た時は成果も出ない」などとクレームが来ることもあったという。
そこで古賀さんは、コンセプトに「中途採用候補との接点ができる」というポイントを加え、社会人のインターンシップ参加サービスとして軌道修正。それが奏功し、利用者増につながった。
若い頃から抱いてきた「社会を変える仕事をする」という目標に向けて、現在も新たな企画を生み出し続けているが、どんな1日のスケジュールを送っているのだろうか。