生活用品メーカー、アイリスオーヤマが好調だ。
国内の家電メーカーに押し寄せる不況の波もどこ吹く風、2023年をめどに「グループ売上高1兆円」を掲げ、右肩上がりの成長を続けている。
同社の成長を後押ししている要因の一つが、他社とは一味違った家電製品だ。
温風温度を自動で調整するドライヤー、まるでインテリアのような布団乾燥機など、生活者の購買意欲をくすぐる製品が堅調に売れている。
いったい、どのようにアイデアを発想しているのだろうか。
商品企画としてこれらの製品を手がけた筒泉佳菜子(つつみ かなこ)さんに背景を尋ねると、「一生懸命に生活することで、アイデアを生み出してきた」と語る。
今日は、アイリスオーヤマの成長要因となった、ユーザーの「欲しい」に応える企画術を教えてもらおう。
—— シリーズ累計の販売台数が500万台を超える「ふとん乾燥機カラリエ」シリーズの中でも、若い世代に人気がある「ふとん乾燥機カラリエデザインタイプ FK-D1」。本商品を手がけたのが、筒泉さんだと聞いています。
ふとん乾燥機は、アイリスオーヤマのヒット商品のひとつでした。大胆なアレンジを加えずとも、引き続き売り上げは好調だったと思います。
ただ、より便利に、より多くの人に愛される商品にしていくには、新しい切り口での商品開発が必要でした。
そこで、開発担当者の中では数少ない女性で、なおかつ若かった私がアサインされたのです。
—— どのようにして、大ヒット商品「ふとん乾燥機カラリエデザインタイプ」を生み出したのですか?
まずは、ふとん乾燥機を使ってみることから始めました。当時のモデルを自宅に置き、生活者の視点で商品を見つめることにしたのです。
すると、会議室で議論をしているだけでは浮かんでこなかった、さまざまな改善点が見えてきました。
当時のカラリエは、いわゆる「ふとん乾燥機」です。「ふとんを乾燥させる」というニーズに対しては申し分ない機能性があり、ファミリー層を中心に多くの方に利用していただいています。
とはいえ「オシャレなアイテム」とは言い難く、私のような一人暮らしの女性からすると、デザインやサイズには少しだけ不満があったんです。
知人を自宅に招いたとき、部屋にそのまま置いておける「インテリア」ではなかったし、かといって、都会のワンルームマンションに住む私のクローゼットはすでにパンパンで、収納する余地はありませんでした。
また、冷え性な私は、ふとんを乾燥させるというよりは、布団を温めるために使うことのほうが多かったんです。
そこで、かわいらしいデザインかつ、温活を訴求点にした商品に変えてみては?と思いつきました。
—— 生活者としてカラリエを使ってみて、筒泉さんが感じた不満を改善した結果、「ふとん乾燥機カラリエデザインタイプ」が生まれたのですね。
もちろん、リニューアルを検討するにあたって、市場のニーズがあるかどうかは調査しましたよ。仮にニーズがあったとしても、ボリュームが小さければ、商品化には至りませんから。
とはいえ、商品開発の起点は、やはり生活者の視点です。
このとき忘れてはいけないのが、「私だけのニーズ」なのか、あるいは「私のような人のニーズ」なのかを正確に判断することです。
例えば「かわいらしいデザイン」の商品を企画したとしても、それを「かわいらしい」と感じているのは、「私だけ」の可能性もあります。それでは、ヒット商品はつくれません。
「ふとん乾燥機カラリエデザインタイプFK-D1」は、私(一人暮らしで、冷え性であり、デザインにもこだわりがある女性)が欲しいと思える商品として企画をしました。
「生活者代表」として企画し、商品化に踏み切ったのです。