—— まずは起業を決めた背景について教えてください。
第1志望の企業に内定をいただいた翌日に、起業しました。
就活が終わって、社会に出るまで残り1年。教育学部の家庭科専攻だったこともあり、ビジネスとは何かを理解しないまま1年目を迎えることに不安があって、それなら起業しようと考えたのです。
当時は「起業すれば、人事や法務、会計から経理まで全部学べる。一番手っ取り早いじゃん」くらいの気持ちでした。
—— 実際に起業してからのことを詳しく教えてください。
まず、起業してからの半年間はほとんど売り上げが立たず、とにかくつらい思いをしました。
ビジネスパーソンとしての経験がなかったので、人脈もなければ、スキルもないし、お金もない。経営資源と言われるヒト・モノ・カネ全てが足りない状況だったので、いきなりうまくはいかなかったのです。
立ち上げたのは、コンサルティング事業です。内定先が教育系のコンサルティング会社だったこともあり、就職後の活躍に直結するのではないかと考えていました。
具体的には、当時興味があった「お花屋さん」に対して、「コンサルティングさせてください」と営業していました。自分に実績がないことは重々理解していたので、「成果報酬型でゼロ円でやります」と。
「無料ならやらせてもらえるだろう」と考えていたのですが、考えが甘かった。これが全くダメで、門前払いでした。
無料ほど怖いものはない、という考え方もそうですが、そもそも実績のない学生から「コンサルティングします」と言われても、時間の無駄だと考えるのが一般的な発想ですよね。
当時を振り返ると、自分とのやりとりによって発生するオペレーションであったり、相手側のコストを考えられていませんでした。
—— 失敗を経験して、どのように行動を変えていったのですか?
当時の僕は、お花屋さんへのコンサルティング営業の失敗から学びを得ても、実績のない学生であることに変わりありませんでした。
そこで、どうすれば対価をもらえるようになるのか、自分は何に対してなら価値を発揮できるのかを必死に考えました。「実績のない学生」が持つ強みを探したんです。
僕が出した結論は、「大量に時間を使うこと」でした。
コンサルティングを提供しようとした場合、コンサルティングのノウハウを持つ社会人のほうが、僕よりも優位性があります。
でも、「何かに対して大量に時間を使うこと」この1点だけは、実績のない学生に優位性があると思ったんです。
それに気付いてからは、大量に時間を使ってできることに注力しました。
まず、人に会ってつながりをつくること。
興味のある方にお声掛けして、成功している事業の裏側を教えてもらったり、自分の考えている事業の壁打ちをお願いしたり。
僕の場合、対話の中でアイデアを出したり思考を深めることが好きなので、他者と話すことそれ自体が楽しく、価値があったんです。
あとは単純に仲良くなることが多かったです。
現在“Z世代の企画屋”としていくつもお仕事をいただいていますが、僕の企画の根幹には「友達」がいるので、時間に余裕がある時にたくさんの方と仲良く対話を深めることができたのは非常に有意義でした。
—— 「企画の根幹に友達がいる」とはどういうことですか?
マーケティングの施策を考える上で重要なのは「顧客がどうすれば喜ぶか」です。はじめは顧客が具体的に想像できず難しかったのですが、「友達が喜ぶにはどうすればいいか」を考えるようになってからは、次々にヒットを当てることができました。
「友達マーケティング」と呼んでいるんですが、例えば、友達にプレゼントをあげるならダンボールでは渡さない。きれいにラッピングして、メッセージを添えて渡したいですよね。
それに、商品のことを伝えるときは、「発売したよ!」と伝えるのではなく、「君のためにつくったんだ」と正面から伝えられたほうがいい。
たくさんの方と対話を重ねた結果、少しターゲットの異なるクライアントさんのご依頼にも、「彼ならこうしたら喜ぶぞ」「彼女ならこれをしたら喜んでくれそうだ」と想像ができるようになったんです。
また、お会いした方々に自分の名前を知ってもらったことで、仕事にもつながりました。