時は来た、それだけだ。
ブロックチェーン技術を基盤としたソリューションの総称である「Web3」が、世界的な一大トレンドになっている。
分散型をキーワードに、メタバースやNFT、ゲームとの連携など新世代のプロダクトが次々と登場。ITの聖地シリコンバレーでは、過熱する新産業の波にグーグル、アマゾン、アップルといった大企業からWeb3スタートアップへの転職者も絶えないという(参照記事)。
今年1月にLinkedInが出した調査結果を見ても、米国では2020年から2021年にかけてWeb3関連の求人情報が395%も急増。新たなキャリアパスが生まれつつあるのだ。
ただ、その内情はまだまだ謎に包まれている。どうすればWeb3の情報を効果的に集めることができるのか。仕事としてこの領域に携わるには、何から始めるのがいいのか。
今回は、元ベンチャーキャピタリスト(以下、VC)で、現在は国内外で注目を集めるゲーム用ブロックチェーン開発プロジェクト「Oasys」のHead of BizDevを務める「やす」さんにインタビューを実施。
一般的な就職・転職とは違う「Web3プロジェクトへの参加方法」や、この業界の将来展望を聞いた。
—— やすさんは、なぜWeb3業界に興味を持つようになったのでしょうか?
Web3にハマったのは2020年の年末、「DEX」と呼ばれる分散型取引所(仕組みは後述)が盛り上がっていた頃です。
友人から話を聞いて、実際にマーケット全体の数字が急激に伸びているところも含めて興味を持ったんです。
従来の金融商品は、銀行などの金融機関が管理・運営を行います。それがDEX=Decentralized Exchangeの場合、特定組織の意向に依存しない「非中央集権」的なシステムをベースにした金融取引を可能にしたんです。
これは、旧来の金融システムでは考えられないような仕組みでした。
ブロックチェーンの技術を使えば、暗号資産取引所まで分散化できてしまうのかと。ビジネスとしてもそうですが、単純に仕組みとして面白いと感じました。
これをきっかけに、Web3のさまざまなプロジェクトを調べていくと、すでにゲームやP2Pレンディング(個人間融資)などの領域でも既存のやり方を仕組みごと変えてしまうサービスがたくさん生まれていました。
それで、これからもっと多くのサービスがWeb3化していくだろうと気付いたんです。
変化の根底には、メタ(旧フェイスブック)のような巨大テック企業を中心とした、一部の企業・組織に権力が集中するWeb2.0へのカウンターカルチャーがあると言われています。
世界的にたくさんのユーザーが、「Decentralized(非中央集権)」という新しい価値観に熱狂している状態です。
また、Web3関連のサービスを運営するスタートアップの中から、多くのユニコーン企業が生まれているという観点からも、大きなポテンシャルを秘める新産業の勃興を見ているように思いました。
そこに純粋な興味と可能性を感じました。
—— VCから転向するのは大きな意思決定です。なぜWeb3業界で働くことを選んだのですか?
理由は3つあります。
1つ目は短期的な市場の伸び。VCをやっていた時はBtoCの領域にコミットしていましたが、2020年ごろの消費者向けビジネスには目新しい投資テーマが少ないと言われていました。
資金調達ニュースを見ても、ここ数年は法人向けのSaaS企業が中心だったように思います。
そんな中、Web3領域はグローバルで爆発的に伸びていました。
例えば今話題の「STEPN」は、設立から8カ月足らずで希薄化後(新株発行や増資などで1株あたりの権利が小さくなること)の時価総額が2兆円規模になりました。これは驚異的な伸び率です。
2つ目は、中長期で見ても市場全体が伸びていくことと、そのアップサイドの大きさに引かれたためです。
Web3が将来的にWeb1.0やWeb2.0ほどの社会的なインパクトを持つのであれば、現在のWeb3のフェーズは、Web1.0で言うインターネット黎明期に該当します。Web2.0で言えばスマホやSNSの出始めです。
これからWeb3が同様の成長をすると思うとワクワクしました。
国内外の主要VCも続々とWeb3特化ファンドを立ち上げており、実際に個人投資家・VCを問わず大量の資金がWeb3スタートアップに回り始めています。