「プログラミングを学んでエンジニアになりたい」
将来性の高さや「手に職」感から、就職・転職の前にこう考える人が増えている。
ただ、小さな頃からコードを書いてきた人たちに比べたら、当然ながら内定獲得のハードルは高くなる。仮にエンジニアとして採用されても、未経験者ならではの苦労は当面続くだろう。
そんな一般常識を、良い意味で覆しながらキャリアを築いてきた人がいる。DMM.comの石垣雅人(いしがき まさと)さんだ。
学生時代のプログラミング経験はほぼゼロ。就職前に1カ月くらい、独学で学んだ程度だったという。
にもかかわらず、DMMにエンジニアとして新卒入社した後、わずか6年でプラットフォーム事業本部の部長を任されるまでになった。
今年30歳を迎えたが、エンジニア出身&20代で事業部長になったのは同社でも異例とのこと。このスピード昇進の裏側には、「新人時代から意識してきた」という仕事のやり方があった。
「どれも、年齢や経験年数に関係なくできることだと思うんです」
石垣さん自身がこう語る仕事の進め方とは、実際どんなものか。
就職から現在までのキャリアストーリーをひも解きながら、素早く成長する人のマイルールを覗いてみよう。
—— DMMに新卒入社するまで、本格的なプログラミング経験がなかったそうですね。なのになぜ、エンジニアになろうと?
大学で学んでいたのは情報社会学で、いわゆる文系学部だったので、おっしゃる通りプログラミングを学ぶ機会はありませんでした。
でも、就活の時期を迎えて将来を考えた時に、「サービスとか事業を作る仕事が楽しそうだな」と思ったんですね。
加えて、何かしらの事業を作るなら、自分で手を動かしながら作らないと意味がないなと。事業づくりの土台を支える部分から携わりたかったんです。
それで、未経験ながらエンジニアを目指すことにしました。
—— どうやってDMMから内定を得たのですか?
エンジニアは、就職や転職の時にポートフォリオ(過去に手掛けたプロダクト集)をアピール材料にすると聞きまして。
そこで就活前にPHP(プログラミング言語の中でも初心者向きと言われる言語)の勉強本を読み、1カ月くらいかけて「ECサイトもどき」を作ってみたんです。
まずはGitHubでアカウントを作り、商品を選んで購入するまでの流れをざっと自作して。就活の面接では、これを見せながら開発コンセプトなどを伝えました。
技術力よりも、課題解決力みたいな部分をアピールした形です。
—— とはいえ未経験ということで、入社後は苦労したのでは?
確かに最初の数カ月は残業続きでしたね。
今も所属しているプラットフォーム事業本部は、DMMが展開するサービス全般の会員基盤を担う部門です。トラフィックの規模面でも、認証技術のようなテクノロジー面でも難易度が高かったので、与えられた開発のタスクをこなすだけでも精いっぱいでした。
でも、本気で勉強すれば何とかなると思っていましたし、実際、1つ1つのタスクをこなすのにかかる時間はどんどん短くなっていきました。
最初は8時間くらいかかっていたタスクが、6時間で終わるようになる。それで、余った2時間で「チーム全体の成果はどうなっているのか?」や「他のエンジニアが困っていることは何か?」を探って、解決するようにしたんです。
こうやってチーム全体の課題を拾いに行く動きが認められたのか、入社2年目から会員基盤のバックエンド領域のプロジェクトマネジメントも任されるようになりました。
—— 一般的に、若いエンジニアはマネジメント職への昇進やジョブチェンジを嫌がると聞きます。石垣さんは、気持ちの面で抵抗はなかったのですか?
事業づくりがやりたくて就職したので、なかったですね。
プログラミングは楽しいし、仕事に不可欠なスキルでもありますが、僕はキャリアを始めた頃から「プログラミングスキルで勝負する」という考えを捨てていたというか。
事業部長になった今も、必要なら自分でコードを書きますが、プログラミングは事業づくりの手段だという考えに変わりありません。
僕が1人で何人分もの役割をこなせる凄腕エンジニアだったら、話は違ったかもしれません。でも、DMMの中だけ見ても、僕よりコードを書けるエンジニアはたくさんいます。
であれば、チームが気持ちよく開発できる体制を作るのをリードするほうがいいと思っていました。これなら、エンジニア歴や社歴が短くてもできますし。
DMMに入社した時から「裁量と権限が欲しい」と言い続けていたので、むしろ自分に合っているとすら思っていました。